⑬『初めての騎馬は、匹夫之勇?⑬』
【前回までのあらすじ】
新宿歌舞伎町のネットカフェからシミュレーションゲームの世界へと転生されてしまった藤堂、酒田、竜馬の三人。OK牧場の地下に眠る「銀の鉱脈」を巡り、藤堂が率いる遊撃隊VSパラケスが指揮を執る疫病調査団の戦闘もいよいよ大詰め。土壁魔法によって戦闘フィールドを分断し、戦力で勝る疫病調査団に対して何とか各個撃破に持ち込んだ藤堂だった。
だが、戦力差はいかんともし難い。壁の向こうに取り残されたロビン、竜馬、タニアの三人は、丸太小屋のコーナーにじりじりと追い詰められて殲滅の危機に陥った。反撃できないアーチャーに密着した白装束の男達の直接攻撃が、ロビンのHPを否応なしにそぎ落としていく。タニアの回復呪文だけでは追い付かない。絶体絶命のピンチだ。
とその時!
――お待ちなさい!――
凛とした声がOK牧場にこだました。突如、侵入不可だった丸太小屋の扉が開け放たれ、一頭の巨大な馬が戦闘フィールドに姿を現した。
「私はOK牧場の一人娘ミディア。我が家の敷地内で狼藉を働く不届き者ども、よく聞け。今から藤堂王子の遊撃隊に助太刀いたす。この細身の槍の錆にしてくれる、覚悟しろ!」
まさに危機一髪。OK牧場の小さなじゃじゃ馬娘と牧童達が、まさかの騎兵隊となって登場したのだ。
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■■■■■■ 『牧童』『牧童』■■■■■■
■■■■■■ 『牧童』『牧童』■■■■■■
■■■■■■ 『マックス』■■■■■■
■■■■■■ 『ミディア』■■■■■■
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■■■■■■ 【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■【調査団】 【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■『ロビン』【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■『タニア』『竜 馬』【調査団】 ■■■■■■
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「ロビン様を助けるんだ。ハイヨー、ポニーちゃん!」
「ミディアお嬢さんに続け! 遊撃隊を取り囲んでいる白装束ども残らず引きはがせ」
可愛い名前とは裏腹に巨大な馬が、漆黒の鬣をなびかせながら戦闘フィールドを駆ける。その後ろを遅れまいとするカウボーイ達の馬が追走する。
多勢に無勢の戦力差を一気にひっくり返され、さっきまで余裕ブチかましだった白装束の男達が途端に浮足立つ。
「お、おい……。どうするよ? き、騎馬兵が六体だぜ?」
「ビビるんじゃねえよ! よく見ろ! 騎馬兵っても武器を持ってるのは先頭の小娘だけだ。後の牧童達はロープしか使えねえ筈だ。あんな素人ども、馬もろとも切り刻んでやれ」
「ヒャッハー、アーチャーと同じだな。よっしゃ、ぶっ殺してやるぜ」
「ヌヒヒヒ。おう、その意気だ。それに尻尾巻いて逃げ出してみろ。パラケス団長の槍で突き殺されるのがオチだぞ」
遊撃隊を取り囲むスペースがなく、仲間から1マス分離れて待機していた二人の疫病調査団の男達が、鈍い輝きを放つ鉄製武器を構えて動き出す。
「退いた、退いた! ポニーちゃんに跳ね飛ばされたい奴だけ掛かって来い」
「しゃらくせぇ! 小娘が粋がるんじゃ……グハッ?」
ドドドッツと土煙を上げた巨馬が白装束の目の前で棹立ちした次の瞬間、馬上から振り下ろされた細身の槍が疫病調査団員の腹に突き刺さっていた。
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■■■■■■ 『ミディア』【調査団】■■■■■■
■■■■■■ 【調査団】 ■■■■■■
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■■■■■■『ロビン』【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■『タニア』『竜 馬』【調査団】 ■■■■■■
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「ば、馬鹿な……」
自らのHPゲージが虚しく半分近く白に変わっていくのを見つめながら、白装束の男が呆然と立ち尽くす。一瞬遅れてきた激痛にようやく怒りが込み上げてきた。
「ふっざけんな! クソガキ! ぶっ殺す。死ねや、オラァー」
闇雲に振りかぶったショートソード。だが、賢い巨馬はすぐさま一歩後退し、敵の反撃に空を切らせた。頭に血が上った男は怪我も忘れて地団太を踏む。
「畜生!」
「ヒャッハー。だらしがねえな。しかも馬だけに『畜生』ってか? 笑える。お前はそこで傷薬でも塗ってろ。俺様が代わりに殺ってやんよ。ドリャサー」
もう一人の白装束が、手にした鈍器をじゃじゃ馬娘目がけて大きく振りかぶった。
「おっと、それ以上うちのミディアお嬢さんに手出しはさせないぜ!」
どこからともなく輪になったロープがヒュンッと投げ込まれ、疫病調査団の男が振り上げた右腕にロープの輪が見事引っ掛かる。
「いただき! そりゃ!」
ミディアに追いついた牧童頭マックスが魅せた投げ縄の腕の冴え。馬上からロープをグイッと引き絞ると輪になったロープが瞬時にすぼまった。荒くれ男の腕が引っ張られる。
「うぜえぇ、何だ、こんなロープぐらい……」
「そいつはどうかな? ちょっとやそっとじゃ外れないぜ。どんな暴れ牛だって逃がした事はないんだ。カウボーイをなめんじゃねえ!」
巧みな操馬とロープワークで白装束が武器を持つ右手を封じる。
「済まない、マックス」
「いいんですよ。お嬢さんのおかげで俺達ようやく目が覚めました。ココは任せて下さい」
「よし、頼んだよ。ロビン様、今すぐ参ります。ポニーちゃん、イケェェェ!」
一方、遊撃隊のゲンさんお得意の土壁魔法の向こう側では、【藤堂&酒田】VS【パラケス&リーダー格】の四人が、一進一退の攻防を繰り返していた。
「だ、団長。あいつらちょっとマズイんじゃねえっすか?」
侵入不可となった壁の向こう側に突如現れたカウボーイの騎兵隊。図太い神経のリーダー格の男もそれを見てさすがに慌てふためく。
「うぬぬ」
高い馬上からバトルフィールドを見渡す白いキツネ顔にも朱が差している。戦況の不利を悟ったのか眉間にしわを寄せている。
「へへっ。どうしたパラケス、顔色が悪いぜ。あの援軍は想定外だったみたいだな。まあ、俺も他人の事は言えないが。どうやら形勢逆転って奴だぜ」
「そうっすね。先輩、あっちが片付くまで僕達はここで時間稼ぎするっす」
そう言いながら女戦士の酒田が懐から秘薬草を取り出して怪我の回復を図る。
壁の向こうでは早くも戦場を一気に駆け抜けたじゃじゃ馬娘が、戦闘フィールドの一角に押し込められた遊撃隊の元に馳せ参じた。
「ミディア、只今推参! ロビン様に刃向う狼藉者、そこを退け。細身の槍のサビにしてくれるわ」
巨大な漆黒の馬に跨る背の低いドワーフの少女。見事なほどアンバランスな援軍の到着に遊撃隊のロビン、竜馬、タニアの三人が俄然色めき立つ。
「ミディアさん!」
「ヒャッホー、助かった。オイラ一時はどうなる事かと思ったよ」
「ちょっと竜馬。安心するのはまだ早いわよ。コイツらをとっとと片付けて、早く剣一達を助けに行かなきゃならないんだから」
「うはっ。『とっとと片づけて』なんて、オイラとてもシスターの言葉とは思えない……」
「何ですって?」
「あはは、何でもないよ。うん、そうだね。早く兄貴達を助けに行かなきゃね」
盗賊のフードの下からだらだらと脂汗が流れる。竜馬は目の前にいる白装束の敵よりも背後にいる味方のシスターにとてつもない脅威を感じていた。
「アーチャー相手に二人掛かりで挑むとは卑怯千万。そこへ直れ、次のターンで貴様達を成敗してくれる!」
「小癪な真似を。だが、甘いぜお嬢ちゃん。先手必勝。先に殺らせてもらうぜ!」
ロビンの前に居座り続けた白装束の敵が、機敏に包囲網の一角を解いてミディアに迫る。
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■■■■■■ 『牧童』『牧童』【調査団】■■■■■■
■■■■■■ 『マックス』【調査団】 ■■■■■■
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■■■■■■【調査団】『ミディア』 ■■■■■■
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■■■■■■『ロビン』【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■『タニア』『竜 馬』【調査団】 ■■■■■■
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「小娘のくせに調子に乗りやがって。喰らえ!」
疫病調査団の荒くれ者が振り回す武骨な鉄の斧が、小さなミディアの肩を掠めた。彼女のゲージがパパッと点滅しHPが白く削られる。
「くっ!」
「ミディアさん!」
「大丈夫です、ロビン様。今すぐお助け致しますから、しばしお待ちを」
初めての戦闘による負傷もアドレナリンが出まくる「恋する乙女」に支障なし。気丈にニッコリとほほ笑むと再び憎い敵と相まみえ、すぐさま反撃態勢に移る。
「これくらいの傷でアタシの突進は止まらないんだよ! イケェェェ」
そう叫ぶや否や、ポニーちゃんの突進力に物を言わせ小脇に抱えた細身の槍を全力で前に突き出した。その瞬間、漆黒の騎馬兵が七色にフラッシュする!
「んだと? っざけんな。グハァァァ」
クリティカルヒットの一撃が白装束に突き刺さり、ロビンの前に居座り続けた敵を容赦なく粉砕した。
「クソッタレ! 油断しやがって。こうなったら俺がやるっきゃないか。鬱陶しい小娘から先に始末してやるぜ」
仲間の消滅を目の当たりにしたもう一人の白装束も吐き捨てる。包囲網の持ち場を離れてミディアの正面にダダッと駆け寄った。
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■■■■■■『ロビン』【調査団】 ■■■■■■
■■■■■■『タニア』『竜 馬』【調査団】 ■■■■■■
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「死んじまえよ、オラ!」
――ヒヒヒーン!――
まさに野生の本能か。漆黒の巨馬が抜き打ちに放たれたショートソードの一撃を小さな主に変わって見事にかわして見せた。
「さすがポニーちゃん! 今度はこちらの番だ。タァー!」
「舐めんなよ。この俺が、ガキの槍なんぞにやられるかよ!」
馬上から伸びてきた槍の穂先をギンッと刀剣で弾き返す。「どんなもんだ」と勝ち誇る白装束の男に背後から声が掛けられた。
「では、アーチャーの矢は避けられますか?」
「何?」
騎馬兵のミディアを先に倒そうと、思わずロビンの包囲を崩した敵が後ろを振り返る。
そこには天上の細工師が逃げ出すほどの美貌を持つアーチャーが静かに弓をつがえていた。だが、その冷静な表情からは窺い知れないほどの怒りが弓を引く手に現れている。
「射っ!」
ヒュンッと風を切り裂く音は後から聞こえた。白装束の荒くれ男がハッと気が付いた時には、エルフの模様が刻まれた木の矢が自分の胸に刺さっていた。
「グバッ」
HPをほとんど削られた荒くれ者の白装束は真っ赤な血に染まり、よろめきながら地面に片膝を着く。
「きゃっほー、竜馬。ホラ、早く行ってアイツに止めを刺して」
爛々と瞳を輝かせる仲間のシスターに若干引き気味な若い盗賊は嫌そうな顔をする。
「えー? マジで? でもタニアを守らないとオイラ藤堂の兄貴に何を言われるか……」
「いいの、いいの。チャンス到来だよ。今まで我慢した鬱憤を晴らす絶好の機会だもん。えーっと、何て言ったかな。あ、そうだ。待てば海路のヒヨコありって言うじゃない?」
「うーん。ちょっと違う気がするけど……」
そう言いながらも仕方がなさそうに竜馬が音もなく歩を前に進める。
「な、なんだ、クソガキ? てめぇ、やろうってのか? 上等だ、掛かってこいや」
ロビンの矢で瀕死の重傷を負い、地面に片膝を着いている男が最後の悪あがきを見せて凄む。
「あのさあ。少し前なら、オイラそんなセリフを聞いただけでビビって手も足も出なかったと思うよ。でも、オイラ変わったんだ。いや、慣れたっていうのかな?」
そう言いながらフード姿の若い盗賊が懐からナイフを取り出した。
「それによく考えたら新宿のヤクザや盗賊団の首領の方が、あんたなんかよりよっぽど迫力あったしね。……遊撃隊の仲間を傷つける奴、オイラ絶対許さないから!」
「よせ、来るな!」
「もう遅いよ」
逆手に持ったナイフ一閃。わずかに残っていた白装束のHPが一気に刈り取られ、疫病調査団の団員がまた一人虚空へ消えていく。
若い盗賊の戦果を確認した遊撃隊のアーチャーがゆっくりと斜め後ろを振り返る。そこには包囲網を形成していた最後の白装束が呆然と待機していた。
「もう勝負は付きました。ここは武器を捨てて、大人しく降参された方が身のためですよ」
「あ~ん。ロビン様。素敵~」
超絶美形の軍師エルフの言葉に馬上で目をハート型にするミディア。ずっと竜馬の側面から粘着攻撃を続けていた戦士がその様子を見て忌々しそうに歯ぎしりする。
「グギギギギ。やかましい、腐れエルフ。偉そうに降伏勧告なんかするんじゃねえ。けど……くっそう、マジか。やべえぞ、やべえぞ。こいつは何とかしないとマジでやべえ」
このピンチに男が顔を引きつらせながら辺りを見回す。すると丸太小屋の壁を背にして遊撃隊のメンバーに檄を飛ばしているセクシーなシスターにふと目を留めた。
「竜馬! 良くやったわよ。お姉さん、誉めてあげるわー」
「グヒヒヒ。超ラッキー! あいつらシスターを放ったらかしてマス目がガラ空きじゃねえか。あのネエちゃんを人質に取れば……。もう一回戦況をひっくり返せるぜ。」
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■■■■■■ 『ミディア』 ■■■■■■
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■■■■■■『ロビン』『竜 馬』 ■■■■■■
■■■■■■『タニア』←←←←【調査団】 ■■■■■■
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白装束がタニアに迫る。ロビンと竜馬のターンはまだ先だ。それを知りながら疫病調査団のならず者がノシノシとワザとゆっくり歩く。
「しまった。タニアさん、逃げてください!」
「駄目よ、ロビン。悔しいけれど私のターンはアイツの後みたい……」
近づいてくる男が遊撃隊のシスターを嘗め回すように見つめる。大胆にカットされた彼女の制服の胸元へと嫌らしそうな視線を走らせた。
「ウヒヒヒ。色っぽい格好の聖女だな。心配するな。大人しく人質になってくれさえすりゃあ殺さねえって。ぎゃははは」
タニアの横に移動した白装束が嫌らしい馬鹿笑いを上げながら腕を伸ばす。身動きできないシスターの大きな胸を野蛮な手がムギュッと鷲掴みにした。
「ヒッ!?」
「どうだいネエちゃん、俺の攻撃は? 結構効くだろ? ギャハハハハ」
「……」
「なんだ? 気持ち良すぎて声も出ねえのか? ヌヒヒヒ」
「……あんたの攻撃はコレで終わり? じゃあ今度はタニアの番ね?」
魔界の深淵のように、映すもの全てを飲み込んでしまいそうなグレイの瞳。修道服の黒いケープがフワッと舞い上がり彼女の長い髪が徐々に逆立っていく。
「あひゃひゃひゃ。笑わせるな。シスターの癖に反撃だと……、ん?」
辺りが急に暗くなったような気がした白装束は、大きな胸を鷲掴みにしている目の前の少女の雰囲気が急変したことにようやく気が付いた。
「な、なんだ? おい、シスターは回復専門職だろ? 攻撃できない筈だろ?」
「あら、残念ね。最前線に立つ回復役は攻撃もできるよ。それとね、タニアはセクハラ攻撃を受けると回避不可の反撃ができるの」
地獄の底から響いてくるような彼女のトーンダウンした声。背景に「ズゴゴゴゴッ!」という真っ赤な吹き出しが浮かび上がる。
「か、か、回避不可って……。てめえ、ボスキャラかよ!」
「うるさーい」
そう叫びながら右手に木の杖、左手に聖書を持つシスターの制服がフラッシュする。
「ゲゲゲッ、クリティカルヒットの前兆だと? いや、違う。そ、そんな、まさか、コレは!」
白装束が驚いたのも無理はない。七色に輝くいつものレインボーフラッシュではない。タニアの身体からはゴールドとシルバーの透過光が溢れ出していた。
「ぐっ、眩しい。くそ、動けねえ。や、や、やめろーー」
「地獄へ落ちろ!」
右手の杖が疫病調査団の荒くれ男をザシュッと切り裂く。と、そのまましなやかに体を捻り込んでの一回転。神速の連続技。今度は左手の聖書が裏拳のフックとなり、白装束の身体を引っ掛けながら弾き飛ばした。
――ウギャァァァァ!――
断末魔の悲鳴と共に聞こえたボコッという地面をえぐるようなにぶい音を耳にして、パラケス団長との一騎打ちを繰り返していた藤堂は、背後に聳えたつ土魔法の壁を振り返る。
「何だ?」
そこには壁に飾られたシカの剥製のように白装束の頭だけが突き出ていた。男のHPゲージが一瞬ですべて白に変わる。そのまま闇に溶けるように男の身体が消えていった。
――ビシ、ビシ、ビシ――
戦闘フィールドに嫌な音が響いた。魔法の土壁に開いたバスケットボール大の丸い穴から放射線状のヒビが広がっていく。
「お、お、お? おい、ゲンさん。あんたの土壁、大丈夫なのか?」
「王子様、見損なっちゃあ困りますぜ。あっしも土建屋ゲンさんとまで呼ばれた男だ。戦闘力はからっきしでも、土魔法の壁だったら誰にも負けねえ自信がありやす」
こっそりと戦闘フィールドを出てマウントパーソン町役場の公用馬車の後ろに隠れていた遊撃隊の魔術師がそう言いながら胸を張る。
「山賊のアジトでもご覧になったでしょ? ユニットの進入を不可にするこの土壁は、あっしが魔法を解除しない限り、ちょっとやそっとじゃ壊れな……い? い? いーーっ?」
目玉が飛び出しそうになって驚くゲンさんが指さした先。土壁に穿たれた丸い穴から無数の土くれがボロボロと落ち始め、ヒビ割れが稲妻のように壁の表面を走り抜ける。
――ズガガガガガガガガ――
あれほど硬かった土壁が豆腐のように脆く崩れていく。白装束の首が突き出た穴は瞬く間に広がり、フィールドを分割していた壁全体が地面の中へ沈み込んでいった。
「あ、あっしの魔法が破られたって? んな、馬鹿なあああああ」
馬車の横で頭を抱えるゲンさんをしり目に戦闘フィールドの一番奥では、タニアが究極の一撃をぶちかましたポーズのままで荒い息をついていた。
「ふぅー、ふぅー、ふぅー」
エロ満載の肉体から水蒸気が吹き上がり金と銀のフラッシュが徐々に収まっていく。その姿を間近で見ていたロビンと竜馬が目を点にしながら拍手する。
「す、すごいですねタニアさん。ダブルクリティカルヒット発動だなんて。ナイス、ダブクリ」
「ほ、ほんと。オイラも尊敬しちゃうよ。しかもノックバック付きだったし」
二人は尊敬というよりも畏怖を込めた眼差しで手を叩く。乾いた音を響かせながらロビンと竜馬は「タニアに絶対セクハラはしない」と心に誓っていた。
【あとがき】
書き込み過ぎでテンポがグダグダになって、話が進まねえぇぇぇぇぇ。どうしたらいいんだ? あ、そっか。『初めてのラノベ・オンラインノベルが誰でも書けちゃう! 小説風会話式講座(初心者用)』http://dokusinkizokudesu.blog27.fc2.com/# を読めばすぐに解決だな。……などと自分のブログの宣伝をする暇があったらこの「東奔西走編」をさっさと完結しなきゃ。
ほんの少しでも興味が惹かれたお優しい読者様。ぜひ画面上の【ブックマークに追加】をポチッと押してくださいませ。不定期更新の我が拙作が更新されたら自動的にお知らせしてくれますよ。便利便利~。




