表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シミュレーションRPG狂騒曲サラリーマンが剣士で王子様?  作者: 独身奇族
東奔西走編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/51

⑩『初めての騎馬は、匹夫之勇?⑩』

【前回までのあらすじ】

――ネットカフェからシミュレーションゲームの世界へと転生されてしまった藤堂、酒田、竜馬の三人。OK牧場を廻る疫病事件もいよいよクライマックス。藤堂の計略が功を奏し疫病調査団でこき使われていた土の魔術師三人を見事仲間に引き入れる。ベリハムの村から急遽呼び寄せた土建屋こと土の魔術師ゲンさんの説得の賜物だ。

 一方、原因不明の疫病をでっち上げてまで真の目的を隠蔽してきた疫病調査団の団長パラケスだったが、第四王子である藤堂の出現に痺れを切らしOK牧場を力づくで手に入れる決意を固める。牧場敷地の地下に眠る銀鉱脈を差し押さえるため、疫病調査団とは名ばかりの荒くれ者達を引き連れて町の郊外へ進撃を開始した。

 ※戦闘フィールド描写のため横読み推奨です。

 ここはシミュレーションRPGの世界。アメリア大陸で群雄割拠する国々の内のひとつ、ワーシントン王国。その最北に位置する地方都市マウントパーソンの郊外。OK牧場の広大な緑の牧草地が地平線の彼方まで続いている。


 太陽はすでに天高く上り澄み切った青空にはチチチッと小鳥がさえずる声が響き渡り、心地よい風がゆったりと流れる。


 家畜が逃げ出さないように太い杭と白木のフェンスで囲われた牧場では牛や馬達がのんびりと草を食んでいる。


 そんなのどかな風景の中、寄り添うように肩を並べる馬の母子が町へと続く一本道の向こうへ警戒の視線を走らせる。高く掲げた二頭の長い首が遠くを睨む。何か危険な音を聞きつけたのだろうか。両耳がピンと立ってせわしなく動く。


――ヒヒヒーン!――


 遥か彼方で舞い上がる土煙に気が付いた母馬がいなないた。子馬を急き立てながら母馬が反対方向へ逃げるように駆け出した。


 家畜達がこぞって逃げ出した丘の向こう側。白ずくめの装束に身を包んだ屈強な男達が、剥き出しになって舗装もされていない小道をOK牧場目指して進撃していた。


 少し距離を開けて二頭立ての馬車が一台、男達の後を付いてくる。御者席にはいかにも公務員と言った風体の男が手綱を握っている。


 黒塗りの車体の隅には白いペンキで「マウントパーソン公用馬車」と書かれていた。客室の扉は固く閉ざされ、ガラス窓はカーテンで覆われ中を窺う事はできない。


 先頭を行く騎馬に追随する男達に私語はない。まるで似合わない白装束姿。真っ黒に日焼けしたいかつい顔。揃いも揃って目付きが悪く、だらしない無精ひげや頬に傷痕が残る者もいる。


 騎馬にまたがった指揮官が後ろを振り返りもせず居丈高につぶやいた。


「隊列を乱すな!」

「へ、へい」


 王都から派遣されてきた疫病調査団の団長パラケスの言葉に十名を超える団員達は皆震え上がった。騎馬に従う歩兵部隊が大慌てで二列縦隊の態勢を整える。


「いいか、お前達! 王都では第二王子のミハエル様が我らの報告を今か今かとお待ちかねだ。このまま何の成果も得られないようでは貴様らの処分も考えざるを得ない」


 スッと馬の足を止めたパラケスは、芝居がかった仕草でようやく後ろを振り返った。大柄の男達が思わず息を呑んで棒立ちになる。


「だが、役立たずの魔術師共が昨晩ようやくお目当ての銀鉱脈の場所を探り当てた……」


 団長が隊列の最後尾に目を向ける。俯き加減で顔の見えないフード姿の三人が恐る恐る頭を下げた。


「お前達もこんな何もない田舎町にはそろそろ飽きた頃だろう? 疫病調査の名を借りた茶番劇も今日で終わりにしてやる。だからいいな、OK牧場の連中を力ずくで排除しろ!」


 疫病調査団と言うよりはむしろ野盗崩れと言った方が相応しい外見の団員達が、恫喝にも似たパラケスの言葉に大きく頷く。


 荒くれ者達の中でも一際体格の良いリーダー格が、薄ら笑いを浮かべて肩に担いだ斧を握り締める。


「分かりやした、団長。望むところで。ところで、例の王子達は殺っちゃってもイイんですかい? あんな若造どもに舐められっ放しで、俺達結構ムカついているんでさ」


「……『俺達』だと? クククッ、『俺』の間違いだろう。お前、役場の裏であの女戦士に投げ飛ばされた事をまだ根に持っているだけではないのか?」


「べ、別に。そんな……」


「フン、まあいい。こんな戦国乱世の時代。この国の東部でも南部でも隣国とは一食触発状態だから誰が死んでもおかしくない。一見平和に見える田舎町でも同じ事だ。ククク、それが例え王子様であってもな」


「そ、それじゃあ?」


「藤堂王子の出しゃばりは想定外だったが、せっかく疫病をでっち上げたんだ。せいぜい利用させて貰う。すでに手は打ってある。町役場への根回しも十分だしな……」


 そう言いながら疫病調査団の後を追うように付いてくる黒塗りの馬車に顎をしゃくる。


「王子が率いる出来損ないの遊撃隊は、不幸にも正体不明の疫病に感染して今日全員死ぬのだ。王都には役場からそのように報告させる手はずも整えてある」


「そりゃありがてえ。その言葉を待ってたんでさ。これで遠慮なくこの斧を振るえるってもんだ」


「これは驚きだ。お前の口から遠慮なんて洒落た言葉が出るとは……」


「勘弁してくださいな、団長。俺だって王都の王弟殿下やミハエル第二王子様に睨まれたくありやせんから」


――ワハハハ――


 リーダー格の男の冗談めかした言葉に他の白ずくめの男達が卑しい笑い声を上げる。


「お前達、もう一度言うぞ。いいか、クズを寄せ集めた遊撃隊など恐るるに足らず。相手が王子だろうと遠慮するな。思う存分叩きのめしてやれ!」


「オウッ!」


 十人の男たちがそれぞれの武器を高々と掲げて勝どきを上げる。意気揚々とOK牧場へ向かって前進を再開した疫病調査団。その後ろを黒塗りの公用馬車が軽やかに付いて行く。


 アップダウンを繰り返す丘の小道を二列縦隊で進撃して行く彼らの眼前にようやくOK牧場の建物群が姿を現した。


 敷地一帯が腰の高さほどある白い柵で取り囲まれている。町へと繋がる小道を遮断する扉は固く閉ざされたままだ。半円を描く木製の看板が入り口の上に掲げられている。


「フン、『ようこそOK牧場へ』か。皮肉なものだな」


 目を細めて馬上から眺めるパラケス団長が呟く。


 疫病調査団の名を借りた軍隊と藤堂率いる遊撃隊の死闘が今まさに始まろうとしていた。


――■――□――■――□――


 一方、OK牧場の敷地に建ち並ぶ木造家屋の前では、遊撃隊のオールスターキャストが勢ぞろいしていた。


 剣士の藤堂、シスターのタニア、女戦士の酒田、アーチャーのロビン、そして盗賊の竜馬。戦いが苦手な土の魔術師ゲンさんの姿だけがない。


「王子様、奴らは本当に来るのでしょうか?」


 丸太小屋の前で藤堂にこう尋ねたのは、ドワーフ族の牧場主エドウィンだ。背の低い彼が不安そうに王子を見上げる。


「ええ、間違いなく来ます。昨日の夜、ちょっとした餌を撒いておきましたから」

「餌……ですか?」


「王子、悪役達のご登場のようです」


 遊撃隊の軍師ことロビンが、美しい額に手をかざしながら遠くを見つめている。優秀なアーチャーは目が良い事が必須だ。美貌のエルフは丘の上に出現した敵をいち早く見つけたようだ。


「エドウィンさんの牧場を戦場にするのは気が引けますが……」


 藤堂がフッとため息をついて話しかける。


「いえ、お気になさらないで下さい。奴らと副町長のやりようには私も腹に据えかねていたところです。どういう形にせよいずれ決着をつけなければなりませんでしたから」


 背の低い牧場主は首を振りながら、決意を秘めた眼差しで王子を見上げた。


「本来なら私が先陣を切って奴らと対応すべきだったのです。なのに私の優柔不断さから問題を先送りしてしまい、牧童頭のマックス達も呆れて昼間から酒浸りになってしまいました」


「それは仕方がありませんよ。原因不明の疫病なんてものをでっち上げたパラケス団長の謀略のせいですから」


「何から何まで王子様に押し付けてしまい本当に申し訳ございません。貴男様は本当に聖人のようなお方です」


「いえいえ。こう見えても俺って結構腹黒いところありますから」

「は?」


「疫病調査団を倒したらエドウィンさんにお願いしたい事があるんですよ」

「こんな田舎の牧場主に王子様のお役に立てる事があるのでしたらなんなりと」


「まあ、それは作戦が上手くいったらの話で。では、手筈どおり牧場の皆さんは建物の中に避難していて下さい。疫病調査団との戦いは遊撃隊にお任せを」


「ロビン様! アタシも一緒に戦います。細身の槍だって使えますし、ポニーちゃんに乗れば騎馬兵として活躍できると思うんです……」


 両親と同様に小柄な少女が、王子ではなくエルフの軍師に向かって叫ぶ。


「ミディア! いい加減にしなさい。娘の貴女には王子様を連れて来てくれただけで感謝しているのよ。これ以上遊撃隊の皆様にご迷惑をおかけしてはいけません」


 牧場主よりさらに背が低い母親がお転婆な愛娘をたしなめる。


「母上……」


「ありがとう、ミディアさん。そのお気持ちだけで十分です。疫病調査団と言っても中身は正規軍には程遠いゴロツキどもです。安心して藤堂遊撃隊にお任せ下さい」


「はい、ロビン様ー」


 類稀なる美貌のエルフの言葉に目をハートマークにしたお転婆少女が薄い胸の前でシスターのように両手を組む。


「では王子様。私達はお邪魔にならないように建物の中へ避難します」


 背の低い親子三人が丸太で出来たログハウスの扉の奥へと姿を消した。


「……さてと。フェアリー!」

「はいはーい。マスター。ココにいるピョン」


 ペットボトルサイズの小さなバニーガール姿の妖精が、藤堂の頭上に開いた次元の穴からひょっこり顔を出した。銀色に輝く四枚の羽根を羽ばたかせながら空中でホバリングしている。


「もう一度ココの地形を確認したい」


「了解だピョン。今回戦場となるOK牧場は典型的な平地ゾーンだピョン。侵入不可の障害物は牧場の建物、ブロック塀、木柵ぐらいしかないから戦闘部隊の展開が容易だピョン」


「敵の戦力は?」


「ちょっと兄貴、そこはフェアリーじゃなくオイラに聞いておくれよ。戦闘ではあんまり役に立たないけれど、情報やお宝の収集ならお手の物なんだからさ」


 いかにも盗賊といった黒いフードを被った竜馬が胸を張る。


「だったな、悪い悪い」

「えーっと敵の戦力だね。まずは何と言っても団長のパラケス。騎馬兵だよ。」


「騎馬兵か……初対戦だな。他の奴らは?」


「うーん、確か戦士系と剣士系が五人ずつの混成部隊かな。王都から派遣されたって言う割には正規兵がいないみたいだったよ」


 それを聞いた美貌の軍師が片手を上げる。


「王子、ちょっとよろしいですか?」

「どうしたロビン?」


「敵の部隊編成から判断すると今回の事件はパラケスの独断で行われている可能性が高いかと」


「お前もそう思うか。王都のミハエル第二王子の策略にしては差し向けた軍団の規模が小さすぎる。三人の土の魔術師を併せてもせいぜい十四名程度の小隊だしな」


「おっしゃるとおり。恐らくは団長のパラケスが、自身の出世の足がかりにでもするために今回の遠征をミハエル第二王子に申し出たのでしょう」


「わざわざ疫病調査団をでっち上げてまでの演出か。ご苦労なこった。待てよ……と言う事は、王都からの増援部隊はまず無いとみていいか?」


「十中八九間違いないかと」

「よし!」


 ロビンの言葉に頷いた藤堂は、嬉しそうに左の手の平に右拳をパンッと打ち付ける。


「ただし、現状では我々の方が不利です。疫病調査団の人数は十一名、対する我が遊撃隊は、シスターのタニアと裏方に回ってもらう土建屋ゲンさんを入れても六名」


「戦力差はおよそ二倍か。ロビンが考えてくれた作戦で奴らを分断し、各個撃破を狙うしか勝機は訪れないって訳か」


「はい。しかもゲンさん達との連携のタイミングが戦局を左右するかと」

「なあに、土建屋の称号は伊達じゃないからな。上手くやってくれるさ」


「へぇー、土建屋って称号だったんすか?」

「そんな訳ないよ、酒田の兄貴。ココにゲンさんが居たら怒るよきっと」


 藤堂の隣で女戦士と盗賊がボソボソと声を顰める。


「策が功を奏したとしても油断は禁物。先ほどフェアリーの報告にもあったように今回の戦場は典型的な平地ゾーン。障害物を盾にした戦術が使えません」


「だな。前回の山賊退治の時と違って狭路に敵を誘い込んで迎撃するという基本戦法が使えないのが何気に痛い」


「はい。しかも敵の団長パラケスは槍を手にした騎馬兵。今まで戦ってきた戦士と違って移動距離が長い事を肝に銘じておくべきです」


「大丈夫、楽勝っすよ。今までどおり僕と先輩が前衛で壁役になるっす。ガッチリ敵の足を止めて二人の間を抜かせないようにすれば問題ないっす」


 現世では藤堂の部下だった酒田は女戦士のキャラクターに身をやつしているものの、今は遊撃隊の盾と言っていい存在だ。


「うんうん、HPを削られても心配しないでね。遊撃隊の美人シスターが速攻ケアで回復してあげるから」


 タニアが腰に両手を当てながらエッヘンと胸を張る。とんでもなく丈の短い修道服から白のニーハイソックスに包まれた艶めかしい脚が伸びている。


(ったく、美人シスターって。確かにそうだけど。けど普通、自分でソレ言うか?)


 藤堂は内心呆れかえって自分の後ろに陣取る幼馴染のヒロインを見つめた。大きくハート型に切り抜かれた彼女の制服の胸元から、これまたとんでもない爆乳の谷間が見える。


(そんなに胸を張るなって)


 目のやり場に困りつつ藤堂はチラリと視線を走らせる。


「あーあ、せめてその自信満々なセリフにギャップを付けて、もう少し恥ずかしそうな表情でもすれば萌えるのに……」


「剣一ってばどこ見てるの? それに内心の思いが口から出ちゃっているわよ。もう、どうせタニアは萌えキャラじゃないわよ、フンだ!」


「じょ、冗談だよ。戦闘前に隊長がメンバーの心を和ませる粋な演出だろ?」

「どうだか?」


 大きな瞳をジト目に変えたタニアが両腕を組んでそっぽを向く。しかし、藤堂の背中を守るのは自分だと言うように王子の背後から一歩も動かない。


「ウォホン、接近戦は苦手ですが、後衛からの援護射撃は私にお任せください。この弓で相手の戦意を喪失させてみせます」


 軍師の援護射撃にホッとしながら藤堂はタニアとの痴話喧嘩から脱出を果たした。


「ああ、頼む。そう言えばパラケス団長は騎馬兵だな。移動距離の長さを活かして遠距離から突っ込まれるとこっちのフォーメーションが乱される。……厄介だな」


「そうですね。ただ、平地ゾーンと言っても所々に岩とサボテンが点在しています。我々遊撃隊のメンバーは全員歩兵ですから問題なくこのマス目に進入できます。しかし、騎馬は迂回しなければならず、移動距離を消費して進むしかありません」


 遊撃隊の軍師エルフが戦場のどこに何があるかをチェックしながらつぶやいた。


「なるほど。これをどう使うかが勝敗の分かれ目になるって事だな」


 OK牧場の丸太小屋正面にある広場。赤茶けた数羽の鶏と牧羊犬が戯れている。半ば壊れかかかったレンガの壁。時おり乾いた風が吹き抜けてヒューヒューと悲しい音を立てた。


 朝の日差しが照り付ける中、舞い踊る砂ぼこりと共に球状になった枯草がコロコロと一同の前を横切っていく。


「ところでひとつ聞くけど藤堂の兄貴。どうしてオイラ達、横一線に並んでいるんだい?」

「OK牧場の決闘と言えば、正義役はこのフォーメーションがお約束だろ?」


「残念ながら手持ちの武器は拳銃やライフルじゃなく剣に槍に斧だけっす」

「シナリオは銃撃戦の西部劇だが、中身はチャンバラの時代劇ってことさ」


 現代世界から転生した藤堂、酒田、竜馬の三人と違い、そんな古い映画の話題に付いていけない遊撃隊の軍師が話をさえぎる。


「皆さんのお話は良く分かりませんが、どうやらその悪役連中が到着したようです」


 ロビンの言葉と同時に固く閉ざされていた木の扉がバリバリと音を立てて破られた。頭上に掲げられていた『ようこそOK牧場へ』の看板がドサリと地に落ちる。


 斧を片手に力ずくで押し入ってきた白尽くめの男達。その荒くれどもを掻き分けるように騎馬兵が前へと進み出る。


【戦闘フィールド】

             【公用馬車】

■■■■■■■■■■■■■■ 門扉 ■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■  【魔術師】【魔術師】【魔術師】  ■■■■■■

■■■■■■  【調査団】【調査団】【調査団】  ■■■■■■

■■■■■■  【調査団】【調査団】【調査団】  ■■■■■■

■■■■■■【調査団】【調査団】【調査団】【調査団】■■■■■

■■■■■■       【パラケス】      ■■■■■■

■■■■■■                   ■■■■■■

■■■■■■                   ■■■■■■

■■■■■■                   ■■■■■■

■■■■■■                   ■■■■■■

■■■■■■   『竜 馬』『藤 堂』『酒 田』 ■■■■■■

■■■■■■   『ロビン』『タニア』      ■■■■■■

■■■■■■                   ■■■■■■


「お邪魔いたします、藤堂王子」


 見るからに足の速そうな駿馬に跨るパラケスが慇懃無礼に馬上から声を掛ける。


「妾腹の王子とは言え王位継承第四位の俺に対して馬から降りもしないとは……」


「原因不明の疫病に遊撃隊のメンバー全員が感染している疑いがあります。クックック、ここは礼儀作法よりも一刻も早く貴方達を隔離する必要があるのです。」


「今更よく言う。一刻も早く排除するの間違いだろ。え? パラケス団長」


「そうですな。王子達には最善の手を尽くした結果、残念ながら病死して頂きます。王都にはマウントパーソンの役場から正式な死亡診断書を送り届けるのでご心配なく」


 そう言いながら団長が背後に目をやる。荒くれ者達が粉砕したOK牧場の入り口の向こうに「マウントパーソン公用馬車」と書かれた二頭立ての馬車が止まっているのが見えた。


「何だよ、そう言う事か。オイラようやく分かったよ。あのデブのタヌキ副町長、またこんな所まで出張って来やがって。オイラ達の最後を確認するつもりだよ。その後パラケスの言いなりに書類を整えるって? これだからお役所仕事は大嫌いなんだ」


 公用馬車を睨みつける竜馬がゲシゲシと地面を蹴って地団太を踏む。盗賊竜馬の悔しがる声が聞こえたのか、客室の扉は閉ざされたまま。


 その時、竜馬の言葉に耳を傾けながら公用馬車に目を凝らしていた藤堂が、何かに気づいたように独り言をいう、


「うん? アレは……そうか。なるほど副町長……か」


「どうしたの剣一、公用馬車が気になるの? あのタヌキだったら戦闘が終わるまで絶対に馬車から降りてこないわよ。だってアイツあんな体格のくせに小心者のビビリじゃない」


「ああ、そうだな。疫病調査団を叩きのめした後、ゆっくりと馬車から引きずり出してやるか、事件の黒幕をな……」


「藤堂王子、そろそろ始めましょうか」


 背後に十人の猛者を従えたパラケスが痺れを切らしたように言い放った。


「そう急かすなって。慌てる何とかは貰いが少ないって言うだろ」


 公用馬車から目の前の敵将に視線を戻した藤堂が、おどけたようにヒョイと肩をすくめる。


「もう全部バレバレなんだぜ、パラケス? お前が本当に欲しがっているのがOK牧場の地下に眠る「銀の鉱脈」だって事はさ」


「ほう? よく分かりましたね」


「そっちは王都から土の魔術師を何人か連れてきたみたいだが、生憎こっちには土木のスペシャリストが居たのさ」


「なるほど。うちの使えない魔術師に比べて少しは使える部下がいるようですね。だが、所詮は土の魔術師風情、役立たずには変わりない。まあ遊撃隊を殲滅した後、そいつだけは殺さずに銀鉱脈の採掘でこき使ってやりますよ」


 団長の辛辣な言葉に疫病調査団の最後列に待機する土の魔術師、トーマス、アーサー、ジェイクの三人が肩を震わせる。


「ふん、お前が馬鹿にしてきた役立たず……土の魔術師の仕事っぷりを見て驚くなよ」


――パチン――


 藤堂がおもむろに指を鳴らした。

 次の瞬間、耳をつんざく轟音と一緒にとんでもない激震が辺りを襲う。


 両軍の両サイドに建ち並ぶ丸太小屋がギシギシときしむ。一瞬の出来事に腰を抜かして慌てふためく荒くれども。団長自慢の駿馬も棹立ちになっていななく。


 しばらくすると牧草地の斜面の向こうから濛々と一条の土煙が立ち上ってくる。


「な、何だ? これは。王子、いったい何をした!」

「何って? 言っただろ土の魔術師が本気を出したのさ」


「ま、まさか?」


「そう、そのまさかって奴さ。お前が欲しがっていた「銀の鉱脈」だがな。たった今地中深く埋没したんじゃないか? もうドワーフだろうが土の魔術師だろうが、ちょっとやそっとじゃ掘り出せないぜ」


「き、貴様! 何と言う事を!」


「へへっ、これで悪巧みは完全に詰んだな。採掘場でお前が見つけられるのは、自分の墓石くらいだろうよ」

【あとがき】

 すいません×2。またしても戦闘シーンに到達できず。いやー書けば書くほど描写が薄い気がして書き込んじゃう。これが独さんの悪い癖(TV新春特番「相棒」の水谷豊風)

 でも超久しぶりに【戦闘フィールド】の描写を入れてみました。だってシミュレーションRPGってタイトルなんだもん。みんな忘れていると思うけどw

 ほんの少しでも興味が惹かれたお優しい読者様。ぜひ画面上の【ブックマークに追加】をポチッと押してくださいませ。不定期更新の我が拙作が更新されたら自動的にお知らせしてくれますよ。便利便利~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ⇒⇒ぜひワンクリックを!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ