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⑦『初めての騎馬は、匹夫之勇?⑦』

【前回までのあらすじ】

――騎馬少女ミディアの実家であるOK牧場が感染源と疑われる疫病騒ぎ。マウントパーソンの副町長と王都から派遣された疫病調査団の団長パラケスがどうやら裏で糸を引いているようだ。その真偽を確かめるべく歌舞伎町のネットカフェから転生した王子役の藤堂と女戦士役の酒田、そして盗賊役の竜馬の三人が、町役場に乗り込んだ。――


「改めまして。私マウントパーソンの町を預かる町長のバートレイと申します」

「これはご丁寧に。私は……」


「ははは。王子様、こんな小さな町の首長にお気遣いはご無用です。普段の口調で結構でございますから」


「そうですか、悪いですね。じゃあ、そちらも敬語じゃなくフランクな調子で構いませんから。堅苦しいのはどうも苦手でして」


 相手から普段の口調で良いと言われても、そこは中身がサラリーマンの藤堂。王子だからと言って、さすがに年上の町長にタメ口を叩くほど愚かではない。


 一方、年は若いがさすがに町を預かるバートレイも王子の思慮を読み取り当たり障りの無い世間話を振ってくる。


「ありがとうございます。確か藤堂王子は隣村のベリハムご出身でしたか? ここマウントパーソンの町と比べるとのどかで良い場所ですよね」


「ええ、のんびりして平和な田舎って感じかな。……少なくともあの村では、厄介な疫病なんて物は蔓延していませんでしたからね」


 頃合いを見計らった所で藤堂が早速ジャブを放った。まさに機を見るに敏。契約相手をリードする営業トークで鍛えた彼の弁舌は健在のようだ。

「え、疫病ですって? い、いや、それは……。お、王子が何を仰っているのか、よく分からないのですが。まさか、隣村でも被害が出たとか?」


「いえ。この町で初めて耳にした話ですよ。実は生まれ故郷の村からの道中、OK牧場の騎馬娘とひょんなことから知り合いになって。原因不明の疫病については、そのミディアから相談を受けました」


「牧場の一人娘から?」

「……ええ。ちょうど王都から第四王子の俺に遊撃隊を組織して国軍の一翼を担えって命令が出たんですよ。まあ見過ごす訳にもいかずってところでして」


「遊撃隊ですか……」


「まあ、出来立てホヤホヤの部隊ですがね。王子の俺が率いていると言ってもそこはホラ、王都のお偉方にそれなりの実績を示す必要があるんですよ」


「大変ですね」


「いえいえ、それはどこも同じですよ。例えば……、王都から派遣された疫病調査団とかもね」


「うっ」


 王子の鋭い眼光に町長の息が一瞬止まる。


「王都の財政も無限にあるわけじゃない。何の実績も無い部署は、予算削減か統廃合されてハイそれまで。こんなことは今更俺が言うまでもありませんね。特にこの町を預かる首長の貴方には、釈迦に説法でしょうけど?」


 藤堂の台詞にせわしなく両手を組みかえるバートレイ町長の目が不安げに泳ぐ。


「俺達遊撃隊が調べたところ、どうやらパラケス団長もワザワザ王都から出張ってきて、この町で疫病調査団の点数稼ぎをやっているようですが?」


「そ、それは」


「白ずくめの調査団が、原因不明の疫病を見事封じ込めに成功して国家の危機を水際で食い止める。お涙頂戴の小説が書けそうな話ですね……、でっち上げの茶番劇じゃなければ!」


「わ、私は何も知らなかったのです!」

「へえー。でも、今は知っていると?」


「いや、つまり……」


「あ、そうだ。一つ言い忘れていました。俺達遊撃隊は、すでに副町長と軽く一戦交えた仲なんですが、町長は無論ご存知ですよね?」


「な、何ですって! まさか。副町長、どうして私に何も……」

「おやおや、この町のトップがまさか一人蚊帳の外?」


 王子の指摘はまさに図星だったようだ。それまで何とか気を張っていたバートレイ町長が、深くため息をついてソファにぐったりともたれ掛かる。


「ふぅー。王子には何もかもお見通しのようですね。お見込みのとおり。この町を仕切っているのは私ではなく、叔父の副町長なのですよ」


「叔父?」


「ええ、亡くなった父の弟です。小さい頃は良くあの叔父に遊んでもらったものです。ああ見えても、昔は肝が太くて頼り甲斐のある人だったのですが……」


「太くなったのは、腹回りの脂肪だけみたいですね」


「ふふふ、確かに。それから何年か過ぎた冬のある日。私がまだ王都の大学に留学中の頃、突然父が急死した知らせが届いたのです。急ぎで帰郷した時には、すでに父の葬儀は終わっていました」


「ここは王都から遠いですね」


「ええ。あまりに急な出来事に数日呆然としていました。それが……、あれよあれよという間に、何故か私が町長に立候補する話が進んでしまって……」


「タヌキ親父の副町長はどうしたんですか? あれだけ押しの強い男なら、当然一つ上の椅子を望んだ筈では?」


「良く分かりませんが、叔父の出馬に議会がこぞって反対したらしくて」

「なるほど。有りそうな話だ。そこで貴方に白羽の矢が立ったんですね」


「ええ、私の意思とは無関係に。気が付いた時には王都での留学生活は終わりを告げ、今じゃこんな部屋で一人書類に押印するだけの毎日ですよ」


「では、今回の一連の疫病事件について、バートレイ町長は何もご存じないと?」


「私は何も知りません……とはさすがに言えないでしょう。叔父は貴方の兄上、ミハエル様直属の部下に親しい知己がいるようでして」


「らしいですね。パラケス団長も自分達の後ろには、第二王子が付いていると匂わせていましたよ」


「やっぱり。町の郊外で疫病騒ぎが持ち上がった後、待っていたかのように王都から疫病調査団が派遣されてきましたから」


「さすがにタイミングが良過ぎでした。これは何かあると思って、すぐに叔父の副町長に問い質したところ……」


――この町のためだ。お前は黙ってワシの指示どおりにしていればいい!――


「この一点張りで私の言う事になど耳を貸そうともしません。身内の恥を晒すようで心苦しいのですが、叔父にとって私は町長ではなく、単なる幼い甥でしかないのでしょう」


「なるほど」


「私が毎日押印している形ばかりの公文書を見る限りでも、藤堂王子が先ほど申された今回の疫病事件は、間違いなく「やらせ」だと思います」


「だったらすぐにOK牧場の水質調査を止めさせて、封鎖を解除して下さい!」

「そ、それは……。申し訳ありません、王子。私にその権限はないのです」


 バートレイ町長の顔に苦渋の影が浮かぶ。


「どうして? 貴方は町長だ。副町長のタヌキ親父も議会と対立している。だったら、町長として職務命令を一言発すれば済む話でしょう?」


「確かに町議会は副町長に良い顔をしていません。ですが、町長の私に全ての議員が賛同しているかと言えばそうではないのです。……この町では、所詮私も王都の大学を中退した一人の若造に過ぎないのですよ」


「うーん妾腹で四番目の王子の俺には、他人事と言えない話だ。参ったな」


 藤堂が嘆息しながら困ったように頭を掻く。


 マウントパーソンの町長を説得して、OK牧場を封鎖している副町長と疫病調査団の茶番劇を止めさせようとする藤堂の思惑が早くも遠のいた。


 と、その時! 


「ハイハーイ! マスター、緊急連絡が入電だピョン!」


 ウサギ妖精のフェアリーが、次元の隙間からひょっこりと顔を覗かせた。体長二十センチ。髪はブロンドのポニーテール。見た目はちっちゃなバニーガールだ。


「うわっ、何ですかこれ?」


 突然王子の頭上に現れた妖精に町長が思わず仰け反る。


「すいません、町長。コイツは俺のサポートをしてくれているフェアリーです」


「ああ、これが噂の妖精ですか。軍隊の指揮官クラスでないと召喚できないとか。王都で留学中だった頃でもお目にかかれませんでしたが、結構可愛いですね」


「えへへ……。わーい褒められたピョン。マスター、フェアリー可愛いって」

「分かったから。それより緊急連絡って何だ?」


「いっけなーい。ほら、データ画面が点滅してるピョン?」


【メンバーリスト】

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ❙ 藤堂 剣一   LV3 王子 剣士

 ❙ タニア     LV3 令嬢 シスター

 ❙ 酒田 鉄平   LV6 ―― 戦士

 ❙ ロビン     LV5 妖精 弓兵

 ❙ 村上 竜馬   LV3 ―― 盗賊

 ❙ チュートリアル LV― 執事 ――

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 藤堂の眼前に遊撃隊のメンバーリストがポップアップした。その中で竜馬の文字が白と黒で反転表示している。


「マスター、早くアイコンタクトでクリックするピョン」


 言われたとおり藤堂が竜馬の文字に目線でカーソルを合わせて瞬きを二回すると、画面いっぱいに若い盗賊の顔が映し出された。


「あ、兄貴! ごめん、オイラちょっとドジったかも……」


 遊撃隊員同士ならいつでも相互に連絡が取れる緊急通信だ。あたふたと大慌てする竜馬が、顔の前で両手を合わせて謝罪のポーズを取っている。


「どうした? トラブルか?」


「う、うん。酒田の兄貴と一緒に役場の外で職員に聞き込みをしていたら、ちょうど疫病調査団の奴等と鉢合わせしちゃって……」


「よし、分かった。今どこにいる?」

「えーっと、庁舎の裏手かな。食堂の通用口から出たところだよ」


「すぐそっちへ行くから待っていろ。いいか、何があっても絶対先に手を出すな! 鉄平にもよく言っておけ!」


 パッと緊急通信の画面が消え、藤堂が席を立つ。


「バートレイ町長、申し訳ない。うちの隊員が白尽くめの奴等と庁舎の外でトラぶったみたいで」


「何ですって? 王子、私がご案内いたします」

「お願いします」


「ただ、お力になれるかどうかは分かりませんが……」


 最後は消え入るような町長の声だったが、ともかく王子の先に立ち部屋の扉を開けて廊下へ飛び出していった。


――■――□――■――


 マウントパーソンの町役場裏手。盗賊の竜馬と女戦士姿の酒田の二人が、白装束を着た十人前後の男達と一触即発の状態で向かい合っている。


 斧を肩に担いだガタイのでかい白尽くめの男が竜馬を上から見下ろす。疫病調査団の一員というよりも荒くれ者の野盗と言った方がお似合いだ。


「この糞ガキ! 俺達が牧場で黙って引き上げてやった恩も忘れて、こんな所までのこのこ顔を出すとはイイ度胸だな」


「チェッ、そんな恩だったら十倍の仇で返してやるよ! オイラ達遊撃隊は、この国の王子直属の部隊なんだぜ。情報収集の邪魔だから引っ込んでろって!」


「ぬぁんんだと!」

「ひぇぇぇ! 酒田の兄貴、後はよろしく」


 こめかみ辺りをピクピクと震わせながら青筋を立てる大男に、竜馬がすっ飛んで逃げる。盗賊の黒マントが酒田の大きな背中の影に隠れてしまう。


「竜馬ったら、だらしないっすね。山賊のハゲ首領に立ち向かった、あの勇気を思い起こすっす」


 酒田がため息をつきながら振り返る。姿形は女戦士だが、中身は藤堂の部下でサラリーマン。元柔道のインターハイチャンプは伊達ではない。ぐるりと取り囲む疫病調査団の恫喝にも余裕の表情だ。


「オイラさっきの啖呵で精一杯だよ。歌舞伎町の弱虫だった黒服も少しは成長したと思わないかい?」


「そう言われると確かにそうっすね……」


「ぐおらぁ! 貴様ら。何、世間話に花を咲かせていやがる! 俺達を無視すんな。状況分かってんのか? ボッコボコの袋叩きにしてやるぞ」


 二人の退路を断つように疫病調査団の包囲の輪が狭まる。


「まあまあ、落ち着くっす。さっき竜馬が言ったことは本当っすよ。少なくとも先輩……じゃなかった藤堂王子は、遊撃隊のリーダーだから。うんうん」


「ふん! 何が王子直属の部隊だ、笑わせやがって。こっちにだって王子様が付いているんだ。しかも手前らの妾腹王子と違って、正当な王位継承権のある第二王子様がな!」


「うーん。だからと言って遊撃隊と疫病調査団が、ここでイザコザを起こしてもいいって言う道理はないっすよ?」


「そうそう、酒田の兄貴の言うとおりだよ」

「う、うるせぇ。大体、女戦士の癖に何でそいつが兄貴なんだよ!」


「何でって言われてもねー、その辺はオイラもよく分かんないよ」

「アンタ等に説明しても無駄っす。まあ企業秘密って事で」


「ざっけんな!」


「ねえねえ、兄貴。そう言えば、あのキツネ顔した団長……。何て名前だっけ? ほら、スキーの技術みたいな名前……パラレルだっけ?」


「バラケルっすよ。ほら、頭の悪い疫病調査団の部下達が、団長の言うことを聞かないもんだから部隊がバラバラに……バラケルなんちゃって」


「上手い! 酒田の兄貴、やるねー」


「馬鹿野郎! パラレルじゃなく、バラケルでもない。パラケス団長様だ!」


「そうそう、そいつ。でも、ココに居ないみたいっすね? さっきからデカイ態度取っているあんた。戦闘を始めるのは良いけど、責任取れるっすか?」


「な、何で俺が……」


「さっきから「何で何で」ばっかり。あんたら本当に王都から疫病の調査をしに来た人達っすか?」


「そうそう。オイラどう見ても変な格好をした、ならず者の集団にしか見えないんだけどな。その白装束、自分達から見て浮きまくりって思わないの?」


「それは……」


 疫病調査団の男が口ごもる。体格の良い他の団員達も互いに顔を見合わせてバツの悪そうな表情を浮かべる。


 だが、リーダー格の男がついに切れた。もしステータス画面を開いてもどうやらこの男の知性の数値は低そうだ。


「うるせー、うるせー、うるせー! 責任何ざ知ったことか! 俺達は今回の任務にいい加減飽き飽きしてんだ。面倒臭せえ、二人とも袋叩きにしてやるぜ!」


 疫病調査団の連中が口を揃えて「装着」の一言を発した。斧を手にする男がほとんどだが、その中にちらほらと剣や槍を持つ者もいる。


「あれ? 魔術師がいないね」


 竜馬の声に酒田も首を捻り敵の頭数を数え始める。


「本当っすね。一、二、三、四……」


「てめえ余裕ぶっこいているつもりかー、うりゃー!」


 のっしのっしと間合いを詰めた男が斧を振りかぶって酒田に躍り掛かる。


「さ、酒田の兄貴! 先に手を出すなって藤堂の兄貴が!」


 女戦士の背後から竜馬が叫ぶ。


「分かっているっすよ」


 そう言いながら自分の武器を装着しようとしない。無手のまま迫り来る相手の斧をヒョイと避け、体をかわしながら腕を取って男を豪快に投げ飛ばした。


「どわぁぁ!」


「ヤッホー! さすが兄貴。見事な一本背負いだね」

「大した事ないっす。先に手を出したのは向こう。今のは正当防衛っすよね」


「ち、畜生! おめえら、ボケっとすんな。そいつらを囲んで袋叩きにしろ!」


 投げ飛ばされて庁舎の裏庭に這い蹲る疫病調査団の男が、顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。


「おい、誰を袋叩きにするんだ?」

「うっ?」


 いつの間にか誰かに背後を取られた男が、喉下に突きつけられた白刃に気が付いて息を呑む。


「だ、誰だ? てめえ」

「遊撃隊の隊長だよ」


「イヨッ、待ってました。大統領! さすが兄貴、出番を心得ているね。美味しいところ持ってく持ってく」


「大統領じゃなくて王子だけどだな」


 相変わらずの竜馬のツッコミを軽くかわした藤堂が、押さえ込んでいた男の首にグイッ剣を引き寄せる。


「よ、止せ、止せ、く、苦しい」


「止して欲しいのはこっちの方だ。それにしても八人対二人か……。まあ、酒田だけでも何となる戦力差か。どうする? 売られた喧嘩は買うぜ?」


「お、お待ち下さい! 藤堂王子。ここはひとまず剣を収めてください。疫病調査団の皆さんも早く武器を格納して下さい」


「あん? 何だ、てめえは? すっこんでろ……グギャッツ!」

「おいおい、脳ミソ筋肉のゴロツキ調査団。お前ら町長の顔も知らないのか?」


 後ろから拘束していた男の背中をドンと蹴り飛ばした藤堂が呆れ返る。


「バートレイ町長、やっちゃってもいいですか? こいつらさえ排除すればOK牧場の封鎖も解除される。副町長も後ろ盾が無くなり大人しくなる。一石二鳥ってことで」


「い、いや。しかし、まだ団長が。それに王都から後続の調査団が来れば、この町は窮地に陥ります。父から受け継いだこの町。それだけは何としても避けたい」


「……確かに。急いては事を仕損じるって言いますしね」


 そう言いながら藤堂は何故か素直に剣を格納する。右手をヒュンッと振るだけでショートソードが金色に輝く光の粒子となって消えていく。


 ちょうどそこへ信楽焼きのタヌキ……ではなく副町長がキツネ顔のパラケス団長と白装束姿の魔術師三人を引き連れて威風堂々と姿を見せた。


「バートレイ……町長! 困りますな。疫病調査に関してはワシに一任してもらった筈。勝手に首を突っ込んでもらっては迷惑ですぞ」


 相変わらずのキングサイズの灰色スーツ姿。ぽっこり迫り出したお腹に巻いたベルトを両手で掴み偉そうに仰け反る体勢で自分の甥を睨みつける。


「さようさよう。よろしいですか町長。王都との窓口は、こちらの副町長にお願いしてあります。無用の混乱を避けるため自重して頂かないと」


 存在感の薄いのっぺり顔のパラケスの追従にバートレイ町長の顔が悔しそうに歪む。


「申し訳ありません」


「それで結構。ワシも町長を補佐する立場にあるのでな。時にはあえて苦言を呈することも副町長の務めなのでな、ワハハハ」


「なーにが、時には苦言を呈するだよ。どうせ苦言ばっかりの癖に。オイラ頭にきたよ。兄貴達、ここは一発ぶちかましてやろうよ!」


「いや、時期尚早だな」

「えーっ!」


 売られた喧嘩は買うとまで言い切った藤堂の意外な言葉に竜馬がぶーたれる。


「パラケス団長。OK牧場では疫病調査団が引いてくれた。だから今度は遊撃隊が引き上げる。お互いの戦力を潰し合っても何のメリットも無い。痛み分けってところで手を打たないか?」


「よろしいですな。藤堂王子の聡明なご決断、痛み入ります」

「ふんっ」


 タヌキ親父が鼻を鳴らして不満顔を見せた。自分ではなく団長と交渉した藤堂に何か言いたそうだが、牧場でやり込められた記憶が蘇ったのか? 脂肪まみれの二重顎をヒクつかせるだけで言葉を続けようとはしない。


「……という訳で町長。今日は貴重なお時間を頂きありがとうございました」

「やはりお力になれませんでしたね。申し訳ありません」


「いえいえ、結構収穫がありましたから。またお伺いすることもあると思いますが、今日はこの辺で。酒田、竜馬。帰るぞ」


 うな垂れるバートレイに背を向けて藤堂が町役場の庁舎を後にする。女戦士と盗賊の二人組みが慌てて王子を追いかける。


「ちょっと、兄貴ってば。本当に帰るの? オイラ、あれって絶対イベント発生だと思うんだよ。ここで「いいえ」選んじゃうプレイヤー、普通いる?」


「いいから。先輩には何か考えがあるっすよ……たぶん」

「たぶんって、酒田の兄貴まで。ちょっと、オイラを置いていかないでくれよー」


  ――続く――

【あとがき】

 マウントパーソンの町役場。衝突は必至と思われた遊撃隊と疫病調査隊の戦闘は、何故か藤堂の判断で回避された。だが、両者の激突は時間の問題。OK牧場の封鎖を解除して遊撃隊の財政を担う隣村への交通手段(馬)を確保できるのはいつか。

 次回『初めての騎馬は、匹夫之勇?⑧』乞うご期待!

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