②『初めての騎馬は、匹夫之勇?②』
【前回までのあらすじ】
――生まれ故郷の復興を村人に託し、ベリハム村を後にした藤堂率いる遊撃隊のメンバー達。隣町マウントパーソンへと続く未舗装の一本道を南下する途中、まるで台風のような少女ミディアに出会う。小柄な幼女の外見に似合わず、巨体の愛馬【ポニーちゃん】に跨るその手には細身の槍。隣町から馬を飛ばして急ぐそんなミディアの言葉に興味を引かれた王子は、新たな試練に立ち向かう?――
「ふん! 貴様のような悪態優男に相談して打開できる程、生易しい問題ではない。牧場の一大事を解決できるのは、この国の王子様でないと無理なんだ」
小柄な身体に寄り添わすように槍の石突を地面に刺し、憐れむような視線で藤堂を見上げる。
「そこのシスターの前で、男子として格好を付けたかったのだろう? 暴言優男の気持ちだけは貰っておいてやるから、さっさと道を空けるがいい」
「ちょ、ちょっと。あなた、剣一は……」
少女の言葉に思わずタニアが口を開こうとするのを藤堂が片手で制する。
「道を空けるのは構わないが、自己紹介してからでも遅くないだろ。俺は藤堂剣一。ワーシントン王国の第四王子をやっている……毒舌・悪態・暴言・優男だ」
王子の言葉に耳を疑うミディアの膝から力が抜けていく。腰砕けになって地面がむき出しになった土の上にペタンと女の子座りになった。
「う、嘘?」
彼女を見下ろして突っ立っている気品の欠片も感じられない少年が、捜し求める王子と知ったミディアは、まるで悪夢を振り払うかのように声を上げた。
「だ、だが王子様ならやはり金髪碧眼だろ? あとは白馬に跨って、涼しげな眼差しで優しく微笑んでくれるのがまさに王道ではないか!」
「ちっ、悪かったな。黒髪黒目の三白眼で! ついでに言うと馬にも乗らずに地べたを歩いて、隣町まで移動の途中だ」
到底涼しげとは呼べないジト目で少女を睨む藤堂だったが、舌打ちしながらも道路に座り込んでいるミディアに手を差し伸べる。
「あ、ありがとう……ございます」
「いまさら丁寧に喋っても遅いだろ」
王子の口調はぶっきらぼうだったが、小柄な彼女の手を取って地面から優しく引き上げる。
「でも、本当に貴様が王子なのか?」
「疑り深い娘だな」
「大丈夫ですよ、お嬢さん。その方は間違いなくワーシントン王国の王子様です」
神々が嫉妬するような美貌に輝くばかりの笑顔を浮かべるアーチャーが声をかけると、両手を胸の前で組み瞳をハート型にした少女がこっくりと頷いた。
「はい、ロビン様!」
「おいおい、俺への態度と雲泥の差じゃないか?」
「あー。どうせならロビン様が王子なら良かったものを……」
不貞腐れたように少女が地面の小石を蹴る。
「コラッ! そんな台詞は俺に聞こえないように言えよ、ったく。で? 俺に急用って言うのは何だ?」
「あっ! そうだ。アタシに力を貸してくれないか。王都から調査団が来て、水質調査で原因不明の病気で、それでアタシの家の牧場が大ピンチなのだ!」
ここまで馬を飛ばして道を急いできた理由をようやく思い出したミディアは、小さな身体に似合わず両手両脚をフルに使った身振り手振りで懇願する。
だが、頭に思い浮かぶ言葉をそのまま焦って口に出すばかりで全く要領を得ない。
「何だ? それじゃあ何の事か、さっぱり分かんねーよ」
「ミディアさん、落ち着いて。ほら、これでも飲んで冷静になって。隣町で一体何が起きているのかを、順序立てて王子に話して下さい」
イケメンのアーチャーが差し出した水筒をひったくる様に奪い取ると、“うんぐっうんぐっ”と一息で飲み干してしまう。
「プハァー、生き返りました。ありがとうございます、ロビン様」
「それで、事の発端は何なんだ?」
「えーっと、先月の終わり頃だったか? マウントパーソンの町外れにある集落で、原因不明の病気が発生したのだ」
「原因不明? じゃあ今、町はその病気が蔓延しているのか?」
「いや、違う。その病気は、身体中を針で刺されるくらいの痛みがずっと続くという症状なのだが、何故かその集落の一角だけでしか発病していないのだ」
(うーん。昔映画で見た【パンデミック(世界流行)】いや、かなり限定された地域の感染症だとしたら【エンデミック(地域流行)】の風土病か?)
非常に致死率が高い風土病が、特定地域から一気に拡大して世界中を震撼させるという、映画館で見た当時のストーリーが藤堂の脳裏をよぎる。
「その病気に、お前ん家の牧場がどう関係してくるんだ?」
「アタシの家も町外れなのだが、少し高台になった丘の上にある。牧場の草原の坂道を下っていくと、その病気にかかった人が住んでいる集落に出る」
「なるほど。感染経路を水に絞った訳か」
「ねえ剣一? それってどういう意味?」
少女に槍を突き立てられた藤堂に回復呪文を唱え終えたシスターが、薄いグレイの大きな瞳をパチパチと瞬かせる。
「今この娘から聞いた話だとその得体の知れない病気は、町の一角だけで収まっているらしい。つまり空気感染や接触感染の可能性は低い」
「あ、そっか」
「まあ、発病までの潜伏期間が長い可能性もあるけどな。だが、もう既に一ヶ月は経過している事を考えれば、病気の原因が水にあると考えるのは妥当な線だ」
「王都からやって来たあの偉そうな調査団も同じ事を言ったぞ。牧場から出る汚水に、何か有害物質でも混ぜて垂れ流しているのではないかなどと……」
「王都から病気の調査団が派遣されて来たのか?」
「ああ、そうだ。それがアイツ等ときたら、やれ水質検査だとか土壌検査だとか言って、アタシの家の土地に勝手に入り込んで我が物顔で調べ回っているのだ」
「まあ、そんな病気が流行したら危険だからな。まず原因を突き止めるのが一番だ。だが、王宮もやるな。こんな田舎町の事件なのに、よくも迅速に手を打ったもんだ」
「恐らく副町長の差し金だ。あのタヌキ親父、アタシのパパと犬猿の仲だからな。王宮にもコネがあるっていつも自慢している嫌な奴だよ」
「町長じゃなくて、副町長? 二人は役場の中で対立でもしているのか?」
「いや。町長が大人しいのを良い事に、副町長が町の行政を引っ掻き回しているのが実情だな。あのタヌキ親父め、口ばっかりの役立たずの癖に!」
仮にも町のナンバーツーに対し、少女の暴言が炸裂する。
「調査団から牧場の運営も制限されて、アタシの家は商売上がったりでな。それが原因で、使用人の牧童達までストライキを起こす始末だ」
ぷっくりと頬を膨らませる少女が藤堂に詰め寄る。
「かと言って田舎の牧場娘が、王宮には逆らえる筈も無い。だが、家の一大事にアタシとしても何とかしたいと思い、取るものも取らず家を飛び出してきた訳だ」
「誰かに俺の事を聞いたのか?」
「アタシの叔母だ。ベリハム村の宿屋の奥さんは、アタシの家の出なのだ」
「そう言えば、いつだったか村長が確かそんな話をしていたな」
「あ、先輩。それって、竜馬がロビンの寝ている部屋に押し入った時の話っすね。ほら例の山賊どもが、この町から村へ流れて来たって言う噂」
藤堂たちが話し込んでいる間に、敵対していた巨馬と心が通じ合ったのか。サラリーマン時代からの部下である酒田が、ポニーちゃんの首を撫でている。
「ちょっと、その話はもう勘弁しておくれよ、酒田の兄貴。それって、オイラの黒歴史の中で筆頭候補なんだからさ」
元山賊の仲間だった若い盗賊が、口をへの字に曲げてため息をつく。
「そうだ、宿屋の奥さんだ。実家の近くで暴れまわっていた男達が、ベリハム村で悪さしているのを見かけたっていうあの話。実家って言うのは町の牧場か」
「あの愚連隊どもの話だな。以前、牧童たちとも何度かもめた事があったのだ。そう言えば、あいつ等最近見かけないな」
「ああ、俺達遊撃隊が全滅させたからな。もうこの町に戻って来る事もない」
「遊撃隊? あの山賊ども。ゴリラみたいに身体のデカイ奴が仕切っていた筈だけど」
「ああ、あの首領か。あいつはそこに居る鉄平が叩き斬った」
「やはりな。王子が倒した訳ではないのだな」
「どういう意味だ?」
「別に……」
そう言いながらうんうんと頷くミディアは、自分の【人を見る目】に間違いが無かった事を確信する。
第一印象の悪さが、彼女の心にまだ尾を引いていた。毒舌・悪態・暴言・優男のレッテルはそう簡単には剥がせそうにない。
「ちょっと! さっきから黙って聞いてあげていれば、あなた。いい加減にしたら? 剣一は山賊をバッサバッサと斬り捨てて、それはもう大活躍だったんだから!」
幼馴染の王子を馬鹿にされたシスターが、大胆にカットされたデザインの制服から飛び出しそうなほど豊かなバストを突き出して声を張り上げる。
(おお、いいぞタニア。王子の俺が直接文句を言うと何かと角が立つからな。お前からこの生意気な“ちっちゃい”女に【礼儀】ってヤツを教えてやれ!)
アバターの外見は十六歳の王子だが、中身は二十六歳のサラリーマン。妙な所で世間体を気にする藤堂は、予想外に現れたセクシーな援軍にエールを送った。
「確かに剣一はたまにタニアにエッチな事をするよ。スライム相手にずっこけたりするし、ご飯の時ものんびりしているから食べ損なっちゃうけど……」
(オイ! お前、全然フォローになっていないぞ!)
「でもでも! ボスキャラだってちゃんと倒せるんだよ。その時は、派手に格好を付けて、ポーズも決めちゃうんだから!」
(コラ! もうそれは悪口だろ? あー、遊撃隊員たちの視線が痛い。お前ら『そう言えば……』っていう視線でこっち見るな!)
タニアの援護射撃が自分自身に降りかかってくる。悔しいけれども中身は大人の藤堂が、口に出せない煮えたぎる思いにイライラを募らせる。
その隙に少女の苛烈な口撃がタニアに向かって開始される。
「何、このエロシスターは? 大方その自由奔放な格好で軟弱な王子を篭絡したのだろう? 肉体の凹凸だけで、世間が回ると思ったら大間違いだ!」
「へ?」
かなりキツイ言葉で非難されたのだが、タニアの理解を超えた難しい語彙と言い回しだったようだ。彼女が被る黒いベールの頭上に疑問符が浮かぶ。
「ふんっ。その胸と同様、脳みそにも谷間が出来ているようようだな。いいか、いくら自慢気にその乳を揺らそうとも、アタシは全然羨ましくないからな」
「へ??」
「よく聞け! ホルスタイン女。その程度の乳など牧場の乳牛に比べれば屁でもない。と言う事は……アタシと貴様の肉体的レベルには、ほとんど差が無いのだ!」
「ホ、ホルスタイン女って何よ? タニアが乳牛みたいって言いたい訳?」
「否! 乳牛はミルクを生産する貴重な家畜。王子を惑わす貴様はそれ以下だ!」
「むっきー! 言わせておけば、このペッタン胸板娘が!」
「あー、言ってはならない事をよくも! 乳牛シスターのくせに!」
ゴングの鐘の音と共に、騎馬兵少女VSシスター見習いのバトルが開始された。
両者が自分の胸の前で両手を広げてファイティングポーズを取ると、二人の間に目に見えない火花が激しく飛び交う。
若い女の子特有の甘ったるい雰囲気は、微塵も感じられない。双方共に大きな瞳を見開き、鼻息も荒く歯をむき出している。
「がるるるるー」
「ちょっとミディアさん、冷静に!」
「タニア、お前も落ち着けって!」
イケメンのロビンと軟弱な王子にそれぞれ羽交い絞めにされながら、少女たちが引き離される。
「二人とも、もっと相手を尊重するべきっす。ほら僕とポニーちゃんだって、もう仲良くなったっす」
殺し合いも辞さない程に一触即発だった女戦士と漆黒の巨馬が、いつの間にやら仲良く肩を並べている。
「おおっ、鉄平もたまには良い事を言うじゃないか。今のを聞いたか? 二人とも。言い争いなんかしている場合じゃないだろ!」
自分の愛馬が嬉しそうに嘶くのを見て、火の玉のような槍少女はバツが悪そうに目を逸らす。
一方王子の腕の中から開放されたシスターも、恥ずかしそうに頬を染めながらうつむき加減になった。
「かなり横道に逸れちまったが、もう一回話を元に戻すぞ?」
「ああ、済まない」
「うん、そうだね」
「この際、山賊の話は終わった事だから、もういいな?」
王子の確認に二人の少女が、黙って大きく頷く。
「次にベリハム村の宿屋の奥さんが、ミディアの叔母さんっていうのもOKだな?」
納得したように首肯するミディアとタニアを左右に見ながら藤堂が話を続ける。
「よし。じゃあ今大事なのは、副町長が呼んだらしい王都からの疫病調査団のせいで、ミディアの家の牧場経営が行き詰っているって事だろ?」
「王子の言うとおりだ」
「そうだね、剣一」
「だからここはお互いに協力してだな、事態の解決を図るべきじゃないか? 現状が分かったら、ホラ二人とも握手、握手」
「……」
気まずそうにお互いを見つめる槍少女とシスターが、どちらからとも無くおずおずと手を差し出した。
ほっそりとした二本の白い手が結ばれた時、ほっと気の抜けたように安堵した藤堂が余計な一言を放つ。
「そうそう。胸の大きさなんて、この際関係ない……」
「がるるるるー」
二人の少女が握手したままギラリと殺意を込めた視線で王子を見つめる。
左右からの殺人光線をまともに浴びた藤堂は、ようやく地雷を踏んだ事に気づいたが時すでに遅し。
「装着!」
見事にハモったミディアとタニアの手に眩い光の粒子が集まる。二人の武器が具現化されるのを王子はただ黙って見つめるしかなかった。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
細身の槍と回復の杖による左右からの見事な連撃に、成す術もなく藤堂のHPが削られていく。お約束の攻撃は、どれほど敏捷が上がっても回避不可能だ。
「お主、シスターなのに結構やるな」
「貴女こそ、すごい槍捌きだね!」
にっこり微笑む少女達がお互いを認め合いながら、それぞれ左手を高々と掲げる。
――パンッ!――
二人のハイタッチが軽快な音を山道に響かせる。地面にうつ伏せになった藤堂は、瀕死状態のままそれを聞くしかなかった。
――■――□――■――
隣町へと南下する山道を遊撃隊の面々プラス小柄な少女と馬一頭が先を急ぐ。
「ったく、酷い目に合ったぜ」
「剣一が悪いんだよ! 余計な事まで言うんだから」
「極めて同意。シスターの見解は正しい。王子は一言多い」
ミディアの愛馬を間に挟んで仲良く歩く二人の少女が、もう少しで撲殺しそうになった藤堂がぶつぶつと文句を言う方へ振り返る。
「それにしても、【ポニーちゃん】って可愛いー。ねえミディア? 今度タニアを乗せてくれない?」
「今度と言わず、今からでも構わないが?」
「うっそ? いいの? きゃあー、どうしよう……」
前を行く二人がキャーキャー騒ぐのを見ながら無言で首を振る王子に。イケメンのエルフが後ろからそっと声をかける。
「さすがです、王子。たったアレだけの事で、彼女達の不和を取り除くとは。他人との付き合いが苦手な私としては、まるで魔法を見ているかのようでした」
「ああ。たったアレだけの事で、生死の境を彷徨ったけどな」
「アハハハ。でも、オイラもロビンさんの言ったとおり、藤堂の兄貴は凄いと思うよ。オイラの時みたいに、きっと今回もあの娘を無償で助けてあげるんだよね?」
そう良いながら黒マントに身を包んだすばしっこそうな若い盗賊が、王子とアーチャーの間から身を乗り出すようにして話に割り込む。
「ふんっ、勘違いするな。俺はそんな聖人君主じゃねえよ」
ヒラリと馬上に飛び乗ったミディアが、おっかなびっくりのタニアをポニーちゃんの背中へ、何とか引っ張り上げようとしているのを眺めながら藤堂が呟く。
「いいか? 遊撃隊の財政基盤を確かなものにする必要があるのは分かるな?」
「もちろんだよ。だから兄貴は、スライム王国を村に立ち上げたんだろ?」
「村興しの基礎は、村長達に任せて大丈夫だと思う。そこで俺達遊撃隊は、次の難問を解決するために動く必要があるんだ」
「それが……【馬】ですか。確かにこの国では貴重な動物です。交通手段として【馬】を使う例は、一部の裕福な特権階級が所持する【馬車】だけでしょう」
「交通手段? あっ、そうか。この山道だね! 今オイラたちが隣町までテクテク歩いているこの道だ! スライム王国へ観光客を運ぶ足がいるんだ」
「そのとおりです竜馬さん。基本的に【馬】は【騎馬兵】が使います。戦闘において一気に敵陣を突破できる移動力の高い【騎馬兵】は、各国の軍隊にとって脅威ですから」
「そう言えば、王国の騎士団も騎馬兵は優先的に召抱えるって話。山賊の首領が得意気に喋っているのをオイラ前に一度聞いた事があるよ」
「だろうな。つまり町と村を往復させる【馬車】に使えるような【馬】なんて、そんじょそこらで手に入る訳がないんだ」
「そんな理由で、王子はミディアが持ち込んだトラブルを解決すると?」
「まあな。どうだ、結構俺も腹黒いだろ? あわよくば【馬】をゲットして、町と村を繋ぐシャトル【馬車】を運行させてやるのさ」
クククッと王子はニヒルな笑みを浮かべる。
だが、隣で聞いていた盗賊は美貌のアーチャーの脇を小突き、嬉しそうに問いかけた。
「ねえねえ、ロビンさん。兄貴ってばさ、口じゃああんな事を言っているけど。ミディアの実家が牧場じゃなくてもさ、絶対にあの娘を助けに行くと思わない?」
「当然です。私が見込んだお方ですから」
「オイラも同感!」
「何だ? お前達。変な笑顔で俺を見るな!」
アーチャーと盗賊に心の内を見透かされた藤堂は、ぶすっと不機嫌そうに口を閉じそれ以上何も言わなかった。
「先輩―! 早く行くっす。町へ辿り着く前にお腹が空いて死んじゃったりしたら、もう目も当てられないっす」
空を飛ぶウサギ妖精のフェアリーと一緒に先行して歩を進めていた、健脚を誇る女戦士の酒田が遅れている藤堂たちに大声で叫ぶ。
「キャー駄目、駄目! 空腹はキシリトール教の大敵なんだから。ミディア、お願い。町まで急いで!」
少女二人を背中に乗せても平然とリズミカルに歩く漆黒の巨馬の上。背の低い少女の背中から手を回すタニアが血相を変えている。
「そう言えば、アタシも一刻も早く王子を連れて帰らねばならなかったんだ。こうしてはいられない。ハイヤー! ポニーちゃん。町まで全力疾走!」
木製の鞍に跨るミディアが、トンッと両脚で巨馬の腹に気合を込める。待っていましたとばかりに少女達を乗せた馬が前傾姿勢になる。
「キャッホー、行けー!」
砂塵を巻き上げながら遠ざかっていく黒い後姿に、藤堂が呆れたように口を開いた。
「肝心な王子を置いて行ってどうする?」
――続く――
【あとがき】
新年最初の投稿です。今年もこんな調子で更新していく予定ですが、よろしければお付き合い下さいませ。さてミディアの実家の牧場を襲ったトラブルの真相とは? また村興しの進む村と町を繋ぐ交通機関を果たして藤堂は構築することが出来るか? 次回、東奔西走編②『初めての騎馬は、匹夫之勇?③』乞うご期待!
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