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シミュレーションRPG狂騒曲サラリーマンが剣士で王子様?  作者: 独身奇族
東奔西走編

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35/51

①『初めての騎馬は、匹夫之勇?①』

【前回までのあらすじ】

――新宿歌舞伎町のネットカフェからシミュレーションRPGの世界へ魂を飛ばされたサラリーマン二人組。藤堂はこの国の第四王子として、生まれ故郷とも言うべきベリハム村の復興に尽力した。貧しい村に『スライム王国』を建設し、一大観光地へと変貌させるという奇想天外な村興しプランの第一段階は終了した。自立心に目覚めた村人達に事後を託し、藤堂率いる遊撃隊は、新たなる目的【虹の宝珠】を求めて旅立つ。後輩サラリーマンの酒田【女戦士】、幼馴染のタニア【シスター】、エルフのロビン【アーチャー】そして、新宿で黒服をしていた竜馬【盗賊】の五人。戦乱が続くこの世界を統一し、藤堂達が無事に新宿へと帰る日はいつか?――


「……ありがとう」


 薄っすらと浮かぶ涙を悟られないように、目頭を押さえながらポツリと呟いた。


(やばいな。今、本気でグッときた)


 生き馬の目を抜くようなサラリーマン生活の時には、思いもよらなかった感情が藤堂の心の奥底から湧き上がって来る。


「この村が、俺の故郷だ!」


 何の計算も無く自然と口を突いて出た王子の言葉を耳にした村人達が、一気に感情を爆発させる。


「王子様、万歳! 王子様、万歳!」


 誰かがこう叫ぶと、後は誰もが我知らずの内に続いていた。


 公民館の広間を仕切る襖が人々の声でビリビリと震えだす。畳の上で何度も何度も村人の両手が高く掲げられた。

 一夜明けたベリハム村。二度と帰らない訳でもないと、特段の出立式も催さずに遊撃隊の面々は故郷を後にした。


 隣町までの道中。アスファルトの舗装どころか、石畳すら整備されていない一本道。月に何度か町と村を往復する荷馬車のわだちが、ずっと地平線まで続く。


 行商人や旅人、そして冒険者によって踏み固められたむき出しの地面が、昨晩決意も新たに村人達の前で「世界統一」を高らかに宣言した藤堂の心に影を落とす。


【単なる思いつきで始めた村興し】


 スライムを使って村を復興させるという荒唐無稽な計画を途中で放り投げて、村から飛び出した事を藤堂は早くも後悔し始めていた。


(ちっ、シミュレーションゲームは、やっぱり最初の地盤固めが重要だよな。俺一人ならばともかく、遊撃隊を維持させていくには財政面での不安が残るぜ)


 山林を抜けるように伸びる、頼りなく細い道。ベリハム村と外界を繋ぐ唯一の生命線とも言うべき街道を歩きながら、鈍る決心に頭を悩ませる。


(スライム王国が軌道に乗るまでは、村で腰を落ち着けるべきだったか? 【虹の宝珠】がこの世界からの脱出を握る鍵だとしても、焦って飛び出すべきじゃなかったか?)


 その時、山あいの道中に一陣の涼風が吹き抜けた。爽やかな風が、迷い心の生じた王子の黒い前髪を勇気付けるように揺らす。


 戦乱の世の中を忘れさせるような暖かい日差しを身体中に浴びたシスターが、ふてくされた顔で藤堂の後ろから声をかけた。


「ねえ、剣一? タニアもう疲れて足がパンパンだよ! 少しでいいから休憩しようよー」


 ふくれ面で口を尖らせる幼馴染が、両手を腰に当てている。


「兄貴! オイラもちょっとギブアップ! さすがに二時間歩きっぱなしだと身体に応えるから、一息つかせておくれよ」


 見るからに線の細い竜馬が、ここぞとばかりに諸手を挙げて賛同する。


「だらしが無いっすね。あの夜、先輩と僕から逃げ切った足の冴えはどうしたんすか?」


 女戦士に身をやつした酒田が盗賊姿の竜馬にそう言うのは、新宿歌舞伎町で三人が出合った時の事だ。


 ボッタクリバーの黒服をやっていた竜馬は、武道のインターハイチャンプ二人に追い駆けられたが、裏町通りを駆け抜けてまんまと彼らを煙に巻いた実績を持つ。


「そりゃ無いよ、酒田の兄貴。オイラ、あの時はホントに殺されるかと思ったから、必死に逃げたんだってば。それに瞬発力は自信があるけど、持久力はからっきしなんだよ」


「あはは。竜馬さんは私の相棒と正反対ですね。女戦士は貴方とは逆に短距離走は大の苦手のくせに、こういった長距離をテクテク歩くのは苦になりませんから」


 冷静な沈着かつ完璧な美貌を誇るエルフが、上品な笑みを浮かべる。


「あー、ロビンって人の欠点を暴くのが趣味だったんすか?」


 馬車が二台並んで対向する事も出来ないほど幅員が狭い山道に、遊撃隊員達の笑い声がこだまする。


(ふっ、そうだったな。所詮王子一人の力なんて高が知れている。世界統一なんて夢のまた夢だ)


 はしゃぎ合う四人の姿を見ている内に、藤堂は自分の心に芽生えた迷いがゆっくりと氷解していくのを感じていた。


(そうさ。こいつ等が一緒に闘ってくれたら、必ず道は開ける。……もし失敗したら。その時は、皆と一緒に村へ戻って最初からやり直せばいい。それだけだ)


 肩から力が抜け、どこか吹っ切れたような顔つきの藤堂が声を張り上げる。


「ようし! まだ先は長い。それじゃあココでいったん休憩にするか」

「キャッホー。でもでも、隣町までそんなにかかるの?」


「そうですね。恐らく隣町までの行程はまだ半分といったところでしょうか」


 女戦士とパーティを組んで冒険者をしていたイケメンエルフは、隣町から徒歩で村までやってきた時の事を思い出す。


「うそーん」


 ロビンの説明を聞いた途端、目を点にしながらタニアが石像と化した。


 狭い山道の幅員が少しだけ広くなった場所で、遊撃隊のメンバーが思い思いの場所へ腰を降ろす。


 二人がちょうど座れるくらいの幅で地面が盛り上がった路肩の一角に、王子とシスターが並んで休憩を取る。


「ふぅ、よっこらしょと」

「やだ、剣一ったら。もう、オッサンみたい!」


(しまった! 俺のアバターは十六歳の王子でも、中身は十歳も鯖を読んだサラリーマンだからな。畜生、ついつい余計な掛け声が口を突いて出てしまうぜ)


 ゲームの設定では幼馴染になっているタニアに実際の年齢がバレはしないかと、内心ヒヤヒヤしながら藤堂は言い訳を始める。


「い、いや。その、ホラ。お前が周りに気兼ねなく休憩が取れるように、ワザと突っ込み所を見せてやったんだ。お、俺の気配りに感謝しろよ、あははは」


「気配りねぇー?」


 王子の隣に腰を降ろし、疑わしそうなジト目で彼を睨むシスター。まるで雑誌モデルのような長い両脚が綺麗に揃えられて、女の子らしく横座りする。


 さすがに疲れたのだろう。よく見るとさっき叫んだ彼女の言葉通り、キャバクラ嬢も真っ青なけしからんミニの修道服から伸びる魅惑的な足が僅かに震えている。


「ところで剣一? 馬車とか調達できなかったの? 隣町との距離って結構あるよね。これじゃあ徒歩だと一日ぐらいかかるんじゃない?」


 そう言いながら、ともすれば痙攣けいれんりそうになる太ももを自分でギューっとつねる。


「ああ、チュートリアルの爺さんにも確認したんだが、遊撃隊にそんな予算はないってさ」


「僕とロビンはここ数ヶ月、アメリア大陸を旅して回ったんすけど。実際この世界では、馬って貴重な動物みたいっすよ。うっせ、うっせ」


 体力が有り余っているのか、女戦士の酒田は道路の真ん中でスクワットを始める。


「そう言えば村でも見かけなかったな。牛は結構いたのにな」


「確かに。ほとんどの馬は、職種ジョブとしての騎馬兵が利用します。馬車など交通機関に使われるのは、ほんの一部でしょうか」


「騎馬兵か……。うーん、それはちょっと困ったな」

「何が困ったの?」


 口元に手をやりながら考え込む王子の顔をタニアが下から覗き込む。


「俺達が後にしてきたベリハム村は、言うなれば陸の孤島だろ?」

「うんうん」


「唯一外界に口を開けているのが、この頼りない山道だ」

「村の向こう側は、人跡未踏の山岳地帯なんだから仕方がないじゃない?」


 先日山賊と戦闘になった秘薬草の群生地は、ワーシントン王国の最北端である。


「ああ、だからココが俺達の生命線になる」

「生命線?」


「例の村興しを軌道に乗せるには、どうしても【馬】が必要なんだ」

「馬が……?」


 その時!


 可愛らしく小首を傾げて、さらに問いかけようとするタニアの肩越しに土煙が巻き起こるのを藤堂の眼が捉えた。


――ドドドドッ!――


 未舗装のむき出しになった地面から砂埃を巻き上げて、何者かが山道をこちらに向かって疾走してくる。木々の間を蹄の音が駆け抜けた。


「う、馬?」


 隣町から続いている道路に目を向けて、思わず立ち上がったタニアが騒音の正体を突き止める。


 休憩中だった藤堂たち遊撃隊と疾走してくる馬の距離が一気に縮まる。


 アーチャーのロビンと盗賊の竜馬が、何事かというように路肩へ移動する。だが、道の真ん中でスクワットに勤しむ酒田だけは、我関せずとばかりに屈伸を続ける。


「二百十一、二百十二、二百……」

「危ないよ! 鉄平ちゃん。暴れ馬が来るってば」


 タニアの忠告にやっとスクワットの動きを停止した酒田がヒョイと首を巡らせると、もうもうと立ち込める土煙の向こうから甲高い怒鳴り声が響いた。


「どいた、どいた、どいた! アタシのポニーちゃんは気が荒いんだ。跳ね飛ばされても知らないよ!」


 可愛い名前からは想像もできないほどの巨馬が、道の真ん中で自己鍛錬中の女戦士に突っ込んでくる。


 砂埃を置き去りにして疾走する愛馬に跨っているのは、まだ顔に幼い面影をみせる一人の少女だった。


 眼前に迫る大きな馬体に臆することも無く、女戦士は大きく息を吸い込んで裂帛の気合を放つ。


「ふんぬっ!」


 右腕を直角に曲げつつパワーを込めた拳は、たとえ大斧なしでも周囲にプレッシャーを撒き散らす。


 ビリビリと大気を振るわせる威圧感に、巨馬の持つ野性の本能が停止を命じる。漆黒のたてがみをなびかせながら、いななきと共に棹立ちになった。


 両前脚をまるで蟷螂のように曲げながら後ろ足で立つ馬の背で、先の少女が愛馬をなだめすかす。


「どう、どう、どう。いい子ね……」


 直立した馬体を何とか静めた少女が、あぶみに掛けた両脚を真っ直ぐピンと突っ張って伸ばし、鞍に腰掛けることも無く馬の首筋を撫でている。


「ちょっと! あんた。一体どういうつもりなんだい?」


 ようやく落ち着いた巨馬のポニーちゃんからヒラリ飛び降りた少女が、女戦士に食って掛かる。


 相変わらず道の真ん中でガッツポーズをしたまま気合を発し続ける酒田は、漆黒の巨馬を睨みつけたまま戦闘モードを崩さない。


――ブルブルブル。ヒヒィーン!――


 ポニーちゃんの方もる気十分だ。前脚で地面の土をガリガリと削りながら、鼻息も荒くまさに一触即発な状態だ。


 女性アバターにしては大柄な酒田と巨躯を誇る漆黒の馬。異様なまでの闘気をぶつけ合いながら対峙する一人と一頭。二対の眼が火花を散らす。


 その間に挟まれた立ち位置で女戦士を見上げる小柄な少女は、酒田の腰ぐらいまでしか身長がない。


「ちっちゃいな」


 道路脇でその光景を眺める王子が思わず漏らした一言に少女が過激に反応した。


「誰よ? 現在進行形で発育中のアタシに向かって、それを頭っから全否定する非人道主義に基づく差別用語を発した奴は!」


 擬音で表現すれば、まさに【ギンッ!】という金属音を立てながら、少女が下から目線で辺りを睥睨へいげいする。


「うっ」


 少女のあまりのド迫力に腰が引け気味になったのは、嗚咽を漏らした王子ばかりではない。


 今まさに人馬の闘いを繰り広げようとしていた「酒田VSポニーちゃん」もお互いに抱き合いながら震え上がっている。


「お前か!」


 藤堂の方へ振り向いた小学生にも見える少女がダッと地面を蹴る。小柄な身体が一瞬ぶれたかと思うと、次の瞬間王子との距離を詰めていた。


「装着!」


 アニメ声が木々の間を流れた時には、彼女の身体に不釣合いなほど長い細身の槍を手にした少女は藤堂の眼前にいた。


「げっ!」


 まさかこんな場面で戦闘に突入するとは想定外の王子だったが、何とか剣だけは装備できた。半身の態勢になって少女が放った槍の一撃を回避し始める。


 だが……。


 今までスライムや山賊どもの攻撃を薄皮一枚の間合いで見切った絶技が、この時ばかりは色褪せて見えた。華麗なはずの藤堂の動きが何故だか若干鈍い。


――ぷすっ!――


「い、痛ってーーー」


「キャアー。どうして避けられなかったの? や、槍が……。剣一の、お、お尻に刺さっているよ!」


 タニアの言葉どおり、真っ直ぐ突き出された細長い槍の穂先が、藤堂の防具の隙間を縫って浅く突き立っている。


「ジャーン! こんな時こそフェアリーの出番だピョン!」


 透き通る四枚の羽を煌かせるウサギ妖精が、次元の穴からピョコンと飛び出した。苦痛に呻く王子の頭の上を満面の笑みで旋回する。


「えーっとね。マスターが今の攻撃を避け損ねたのは、【武器の相性】が悪いからだピョン」


「フェアリー、【武器の相性】って何だっけ?」


「この世界の武器は【剣】【斧】【槍】の三種類。マスターが使う【剣】は【斧】には強いけど【槍】には弱いピョン」


「そっか。だから斧がメイン武器の山賊相手に、剣一は『無双』が出来たんだね」


「正解だピョン。【剣】を手にしたマスターが、あの子の【槍】攻撃を避け切れなかったのは、【斧】を相手にした時と違って追加の回避補正がないからだピョン」


「ああ、なるほどね」


 ポンッと手を打つシスターが納得したように大きく頷く。


「お、お前等。いい加減にしろ!」


 呑気に会話するシスターとウサギ妖精に、王子が声を大にして叫んだ。臀部を覆う防具の隙間から、紅い鮮血がじわーっと染み出している。


「いい加減にするのはお前だ!」


 自分の背丈より長い槍を構え直した少女が、ビシッと藤堂に向かって人差し指を突きつける。


「アタシはベリハム村に火急の用があるんだ! お前のような軟弱者を相手にして一刻千金の時間を無駄にするつもりは無い。さっさと道を空けるがいい!」


「あ、あのなー。人の尻に槍をぶっ刺しておいて、その言いぐさはないだろっ!」


「笑止! アタシの愛らしい身体的特徴を傲岸不遜にも差別発言した罪は、万死に値する」


「ねえ、剣一。身体的特徴って何の事?」


 王子の臀部に回復呪文を唱えるタニアがそう尋ねると、けしからん程切れ込みの入ったシスターの制服からこぼれ落ちそうなバストがたゆんと揺れた。


「ちっちゃいって事だろ?」


「あー、また言ったな! そんな人種差別による排除思想が、アタシみたいにほんのちょっぴり肉体的に不自由している者達を白眼視させる原因になるんだ」


 猛り狂う阿修羅のごとく少女が吠える。怒気をみなぎらせて幼い顔を朱に染める。鼻息は荒く、血管がぶち切れそうだ。だが、怒髪天を突く……には背が低い。


「いいか? 決してそこのシスターが羨ましい訳でない。アタシだって……。アタシだって、あと二年も経てばボイーンっと立派な谷間ができるんだ」


 そう言って自画自賛しながら胸を張る少女だったが、着衣の上からでも一目瞭然で残念な体型は、間違いなく脱いでも凄くはないだろう。


「だぁぁぁ! お前が言う『ちっちゃい』は胸の事かよ! 俺はてっきり身長が低い事へのコンプレックスだと思ったのに」


「う、うるさい。そっちも気にしているんだ。貴様、そうやって人の劣等感を刺激して楽しいか? そこへ直れ! 今度こそ串刺しにしてやる」


 少女が握る細身の槍の切っ先が小刻みに震え、陽光を反射させながら今にも二撃目が放たれようとする。


「どわっ、ま、待て。短気は損気って言うだろ? 悪かった。このとおり謝るからさ」


 剣を納めて深々と頭を下げた王子に少女の怒りも和らぐ。


「わ、分かればいいんだから」


「ちょっとよろしいですか、お嬢さん? 村にどんな用があるかは知りませんが、お急ぎなら早く出発された方がよろしいのでは?」


 輝くばかりの端麗な美貌に優しい笑みを浮かべるロビンが言葉を掛ける。


 少女がまだ怒り残る眼差しをエルフに向けた次の瞬間、彼女の表情はとろけるチーズのように融解していった。


「うっひゃあー。なんて素敵なお方……」


 体中から力が抜けて大事な槍が手から離れる。ポーッとイケ面のアーチャーを見つめる瞳が、ピンクのハートマークに変わる。


「あ、おい!」


 藤堂が倒れてくる長い得物を慌てて掴み取る。


「アタシはミディア。お名前をお伺いしてもいいですか?」

「あん? 俺は……」


「誰が貴様の名を聞いた? この毒舌優男! アタシはこちらのエルフ様にお尋ねしたのだ。お前はそこのシスターとでも乳繰り合っていろ!」


「まあまあ、私の名はロビン。ミディアさんと言われましたか? 先ほど申しましたとおり、ここで時間を浪費するよりも村での急務を優先させるべきでは?」


「はっ! そうでした。早く村へ行かないとアタシん家の牧場が大変な事に……」

「牧場? 良かったら俺にその急用の話を聞かせてくれないか?」


 スッとミディアへ細身の槍を返しつつ王子が声を掛ける。


「ふん! 貴様のような悪態優男に相談して打開できる程、生易しい問題ではない。牧場の一大事を解決できるのは、この国の王子様でないと無理なんだ」


 小柄な身体に寄り添わすように槍の石突を地面に刺し、憐れむような視線で藤堂を見上げる。


「そこのシスターの前で、男子として格好を付けたかったのだろう? 暴言優男の気持ちだけは貰っておいてやるから、さっさと道を空けるがいい」


「ちょ、ちょっと。あなた、剣一は……」


 少女の言葉に思わずタニアが口を開こうとするのを藤堂が片手で制する。


「道を空けるのは構わないが、自己紹介してからでも遅くないだろ。俺は藤堂剣一。ワーシントン王国の第四王子をやっている……毒舌・悪態・暴言優男だ」


 王子の言葉に耳を疑うミディアの膝から力が抜けていく。腰砕けになって地面がむき出しになった土の上にペタンと女の子座りになった。


「う、嘘?」


                         ――続く――

【あとがき】

 大変お待たせしました。新章「東奔西走」編スタートです。新ユニットはシミュレーションゲームでお馴染みの騎馬兵。故郷の村を後にした遊撃隊VS幼女キャラ。彼女の実家の牧場に起きた問題とは? 村興しの成功を懸念する藤堂が【馬】にこだわる理由とは?

 東奔西走編②『OK牧場の決闘は、五里霧中?(仮題)』乞うご期待!

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