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シミュレーションRPG狂騒曲サラリーマンが剣士で王子様?  作者: 独身奇族
鵬程万里編

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②『王子の村興しは、空中楼閣?②』

【前回までのあらすじ】

――藤堂が自宅のリビングルームで村興しの秘策を皆に語り始めた頃。ワーシントン王国の南部戦線では、第四王子の藤堂を逆恨みする王弟ガスバルの命により、冷血部隊の魔の手が遊撃隊に伸びようとしていた――


 ガーネット騎士団の蛇が笑った。いや口の端を一ミリ上げただけだ。だが、それだけでエドモンドを取り囲んだ男達の輪がザッ広がった。


「分かってますよ。お詫びの印に、ワシが隊長の所まで案内いたしやすから」


「ではその間、冷血部隊はすぐにこの砦から移動出来るように、準備をさせておいて下さい」


「ほう。ワシら第十三小隊が、南部戦線を離れてもよろしいんで? って事は、ココよりも楽しめる場所が、他にあるって訳ですかい」


「ええ、もちろんです。こんな所よりもずっと……」


(第四王子、そして我らの天敵であるジョナサン伯爵の愛娘という、飛び切りの獲物。貴方達にはたっぷりと用意してあげますよ。ククク)

 王子の家のリビングルーム。実質上の遊撃隊本部作戦司令室では、藤堂のベリハム村復興計画を聞き終えた面々が、それぞれ意見を言い合っている。


「ねえねえ、剣一? 今説明してくれた村興しのアイデア。すっごく面白そうなのは分かるんだけど、実際それで本当に上手くいくのかな?」


「分からない。だから逆に、皆の意見を聞きたいんだ。突拍子も無い話だっていうのは承知の上さ。所詮は机上の空論だって事もな。だが……」


「王子のおっしゃりたい事は良く分かります。村長の私だけでなく、村の役員達もこのままでは自分達の村がジリ貧になって、廃村になるのが目に見えています」


 藤堂の懸念を肯定するように村の代表役が、椅子から立ち上がる。知らず知らずに握った拳に思わず力が入っている。


「それは、困るだ。オラんとこ、先月孫が生まれたばかりで。今更隣町へ引っ越すなんて考えられねえだ」

 村長の意見に賛成する声が上がった。野良仕事で真っ黒に日焼けした村人が、困ったように頭を掻いている。


「そうです。このまま何もせずに、黙って指をくわえて見ていても仕方がありません。ここは王子のプランに賭けてみてはどうでしょうか?」


 村長の前向きな意見に、村の役員達も全員大きく頷いた。


「しかしながら若様。村と遊撃隊の財政事情は逼迫しております。この壮大な村興しイベントに、一か八かの賭けで全ての運命を委ねるのは、いささか危険では?」


 さすが年配者。老執事が現実的な意見を述べ、王子の計画に一足飛びに流れ出しそうな雰囲気を上手に冷ましていく。


 リビングルームが再びザワザワと会話が飛び交い始める。部屋が喧騒に包まれそうになる瞬間、皆の意見をまとめる様な絶妙のタイミングでロビンが手を上げた。


「チュートリアル様のご懸念も当然です。ただし、早急に財政再建を図らなければ、村にも遊撃隊にも未来がないのは、意見を同じくするところかと」


「確かに」

「ならば、ここは両者の折衷案と言う事でいかがでしょう?」


「ロビン、具体的に頼む」


「はい。まず王子様のアイデアは悪くないと思います。ですから、村と遊撃隊の財政事情に影響が出ない部分から、プランを実行していけば良いのです」


 アーチャーの説明に首を捻りながらも、酒田がヒョイと手を上げた。


「うーん。よく分からなかったっすけど……。つまり、お金が掛からない作業をとりあえず皆でやってみる。ぶっちゃけた話、今はそんな感じでイイっすよね?」


 今までずっと相棒としてやってきた女戦士の分かりやすいフォローに、ロビンが嬉しそうに大きく頷いた。


「なるほど! そこであっしの出番って訳ですな。王子様が、どうしてあっしみたいな無駄飯食いを引っ張ってくれたのか。その理由が、ようやく分かりやしたよ」


「まあな。正直言って、ゲンさんの負担が大きくなるのは目に見えている。だが、さっきも言ったとおり、この計画にはあんたが必要不可欠なんだ」


「任せて下せえ! 今聞かせて頂いた作業なら、あっしの十八番でさ。まあ大変そうだけどさ。やっぱり頼りにされるって言うのはイイ気分だね」


 ドンと大きく胸を叩く。山賊に命じられるまま、日の当たらぬ地下で穴を掘り続ける生活よりは、気分的にも余程やりがいがあるのだろう。


「そうと決まれば話は早い。明日はメンバーを二班に分けて行動しよう」


「じゃあ、あっしは予定どおり、山賊のアジトまで道案内をいたしやす」

「兄貴、オイラもゲンさんに同行するよ」


「それがいいな、頼むよ。……あ、そう言えば。山賊の生き残りが居ないとも限らないな。ロビン、念のためお前も一緒に行ってやってくれないか?」


「分かりました」

「じゃあ、第二斑は俺と一緒だ。タニア、鉄平付き合ってもらうぞ」


「OK! 行き先はもちろん、村外れの草原だよね?」

「ああ。村興しの主役が、今どうしているのか? この目で確認しないとな」


「ハニー、私達はどうする?」


 教会のおしどり夫婦が仲良く見つめ合う。


「そうね。王子様の話だと、貴方はタニアと一緒の方がイイんじゃない? 二班は戦闘になるのが確定だから、広範囲で怪我を治せる回復役が必要だわ」


「ダーリンと離れるのは辛いけど、そう言う事なら仕方がないね」

「山賊の生き残りに備えて、私は第一斑の方へ回るわ」


 その時、何かに気付いた村長が手を上げる。


「あ、王子様。山賊アジトへ村人を数名同行させては如何でしょう?」


「おお、そうだな。あまり期待はしていないが、ゲンさん達だけじゃお宝のアイテムを運びきれないとも限らないからな」


「はい。お宝を一部残して、また取りに行くのは二度手間ですから」


「村長は、俺と一緒に第二班へ同行してくれ。出来れば、今日山賊と一戦交えた村人達にも付き合ってもらえると助かるんだが」


「なるほど。王子様の計画では、将来的に私達村人が戦闘における壁役にならないと、村興し自体始まりませんしね」


「まあな。だが、相手は山賊よりもずっと楽な相手だし。まあ、今日の攻防戦を凌ぎきったメンバーなら、十分対応出来るんじゃないか?」


 藤堂が村人達に信頼の視線を投げかけた。王子の言葉を耳にした青年団の代表が、頭を掻いて照れ臭そうにはにかんでいる。


「えへへ。実を言うと、オラ久しぶりに今日レベルアップしただよ。この年になって今更だどもさ、結構嬉しかっただよ」


「だろ? 今回俺が思いついた計画プランは、まさにそこが狙い目なんだ」


 思わず口を突いて出た村人の本音に、藤堂がたまらず椅子から立ち上がる。


「確かに村人だって戦闘を経験すれば、レベルアップが出来ます。攻撃力はともかく、力やHPが上がるのは普段の農作業でも役に立ちます」


 村長も諸手を挙げて賛成の構えだ。


「王子様の見込みどおり、きっと上手くいきますよ」


「後はボス戦でも大丈夫なくらい、皆が頑張ってくれるのを期待するよ」

「お任せ下さい」


「当面は、現場の確認作業になるだろうな」

「経費が嵩む訳でもありませんから、私も反対する理由がありません」


 ひとまずお金の心配がなくなった事に、老執事が安堵の色を浮かべる。


「今の段階では、少なくとも村人がレベルアップ出来れば御の字ってくらいで考えてくれ。たとえ村興しが駄目になっても、それはそれで無駄にならないからな」


「若様、明日の食事の準備などもございますので、私は調理場の方へ参ります」


 遊撃隊の財政を担っている老執事が、懐から懐中時計を取り出してソワソワし始める。それを察した村長が、すかさず提案した。


「チュートリアル様、私の方から村の婦人会に連絡しておきます。この村始まって以来の一大イベントですから。明日は、女性陣にも一肌脱いでもらいますよ」


「それは助かります、村長。一斑、二班ともお腹を空かせて戻って来るでしょうから。ここでお昼ご飯を用意しようと思っているのです」


「それならば、いっそのこと公民館を拠点にしては如何です? 幸いあそこには大きな鍋や薬缶、それに食器なども一とおり全て揃っていますから」


「それはいい考えですな」


 意気投合した老執事と村長が明日の細かい打ち合わせを始めると、リビングルームのあちこちでも、自分達の事務分担を確認する声が響きあう。


 全員が議論に夢中になっていた。つい先程まで部屋をオレンジ色に照らしていた夕日が、いつの間にか姿を消している事に誰も気が付かない。


 その代わりに、地平線から顔を見せた満月の青々とした光が、窓から煌々と差し込んでいた。白熱して意見を交換する者達をゆっくりと冷ますかのように……。


「おっと。もう外も真っ暗じゃないか。そろそろ今日は、この辺でお開きにしよう。明日は少し早いけれど、午前六時に公民館へ集合でどうだろう?」


 藤堂の言葉に否もなく、全員が揃って席を立つ。三々五々とリビングルームを後にする。


「お先に失礼します」

「剣一。じゃあ、また明日ね」


 退室を告げる声が何度か繰り返される。


 老執事は、まだこれから村長と公民館へ出掛けて行くようだ。タニアは神父夫妻と教会へ帰り、竜馬とゲンさんは酒田、ロビンと一緒に村の宿屋に泊まるらしい。


 十数人が互いに意見を言い合い、あれほど騒がしく手狭にすら感じられたリビングルームが、突然本来の広さを取り戻した。


 シンと静まり返った部屋。ポツンと一人だけ取り残された藤堂が、ぼそっと呟く。


「さて、明日は忙しくなるぞ」


――■――□――■――


「さすがにコレは酷いな」


 ワーシントン王国の南部。隣国との国境沿いにある小さな村……だった場所。

 そこへ足を踏み入れたエドモンドが、僅かに顔をしかめて周囲を見回す。


 王弟ガスバルの懐刀。ガーネット騎士団の蛇と揶揄される小柄な騎士は、辺りに漂う人肉の焼けた臭いが、自分のマントに染み付きはしないかと感じていた。


 街道から外れた場所にある集落に、今や住居と呼べる建物は存在しない。全ての民家が焼き討ちにあい、黒一色に塗り込められた物言わぬオブジェと化している。


 表面に灰を纏い、ブスブスと焼け焦げた真っ黒な材木たち。まるで墓地に立てられた卒塔婆のように、恨めしそうに傾いだまま天を指していた。


「ひゃひゃひゃ。そうですかい? いい匂いじゃありやせんか。戦場ならコレが欠かせませんぜ」


 すぅーっと、焦げ臭さと血の臭いをしこたま大きく胸に吸い込む。満足そうに後ろ振り返る太った男は、もちろん冷血部隊のジャスワントだ。


 最前線の砦が手薄になる事などお構いなし。国境線沿いにたなびく黒い煙を目指したデブの副隊長は、痩せた馬を飛ばして王都の重鎮を隊長の下へ案内した。


 見渡す限り散乱する瓦礫の山、山、山。

 無論、この世界に死体は残らない。HPが尽きれば、人は淡い光に還るだけだ。


 だが、あちこち焼け残る壁にへばりついた血の痕、痕、痕。

 そして地面に黒々と染み込んだ人型の血痕の数々。


 遺体が戦場のどこにも見当たらない事が、よりいっそうこの村を襲ったであろう陰惨な出来事を物語っている。


 王弟ガスバルの冷酷な懐刀は、鼻が曲がりそうな悪臭に思わず眉を顰めそうになった。ガーネット騎士団の蛇と揶揄される男にも苦手な事はあるようだ。


 もし本物の蛇に眉があれば、ちょうどこんな表情になるのだろう。不快感を懸命に堪えながら、丸々と太った副隊長に声を掛ける。


「それでジャスワント、貴方の上官はどちらに?」


 鼻をつく悪臭に気を取られていたエドモンドに、肥えた男が顎をしゃくって視線を斜め前に流す。


 隣国との国境線沿い。地図に名も記さぬ小さな村で、最後まで轟々と炎が立ち上っていた屋敷がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。


 強烈な炎であぶられて黒い瘤の出来た何本もの柱が、次々と瓦礫の上に横倒しになった。熱気と熱風がむせ返る黒煙を揺らめかせる。


 王弟ガスバルから南部戦線へと遣わされたエドモンドが目を細めると、一筋の陽炎が徐々に人間の形を取り始めた。


「へえー! 珍しいじゃん。いつも王弟殿下の腰に巻きついている蛇が、こんな最前線まで出張ってくるなんてさ。一体どう言う風の吹き回しだい?」


 凄惨な赤い髪。目を背けたくなるような赤い瞳。一人の若い剣士が、ゆっくりと王弟ガスバルの腹心に近づいて来る。


 腰に帯剣した大刀が、歩を進めるたびに耳障りな金属音を奏でる。本来であれば、所持品データに収納し、いざとなれば『装着』の一言で具現化出来る武器。


 最前線が故か? それを片時も肌身離さず持ち歩いているのは、この男に油断と言う二文字が存在しない事を示していた。


 冷血部隊の若い隊長ギシュベル。ガーネット騎士団の友軍からも死神と渾名される男が、退屈そうに頭の後ろで両手を組んで立ち止まる。


(斬られるっ!)


 死神の姿を見て、不意に胸の中へ湧き上がってきた恐怖。エドモンドはその感情を押さえ込む事に最大級の労力を注ぎ込まなければならなかった。


 副隊長が言ったとおり、彼とて生半可な実力の戦士ではない。だが、それが返って仇となった。ギシュベルが放つ黒いオーラに、否応なく肉体が反応してしまう。


 一秒の百分の一の刹那。


 左右どちらかへサイドステップ、もしくはバックステップで、死神が繰り出そうとする幻の斬撃をかわそうと、身体が自然と足掻き始める。


 勝手に動き出そうと暴れまわる筋肉を無理やり押さえつけてねじ伏せる。ミシミシと音を立てそうな肉体を一ミリたりとも動かさない事に何とか成功した。


「へぇー、結構やるじゃん。さすが王弟の懐刀、くくくっ……」


 小手調べにもならないお遊び。だが、意外にもエドモンドは微動だにしなかったので、死神ギシュベルは僅かに眉を吊り上げて興味を示した。


「それ程でもありませんよ。貴方の毒気に当てられて、身動き一つ取れなかっただけですから」


 常人では決して見て取れぬ程小さなギシュベルの表情の変化。それを目の端に捉えたエドモンドは、満足したように握手を求めて右手を差し出した。


「よく言うじゃん。サイドステップからの横殴りの一撃。まあ、想像しただけの幻にしてはさ、結構イイ線いっていたじゃん?」


「……っ!」


 死神から先に声を掛けられなければ、間違いなく仕掛けていた筈の斬戟。


 完全に手の内を見透かされたガーネット騎士団の蛇が、差し出そうとした右手をピタリと止める。


 だが、ギシュベルは石像の様に固まったその手を何の躊躇ためらいいもなくすっと握る。


「地獄の一丁目までようこそ。こっちに野営のテントがあるからさ。一杯引っ掛けながら、王弟殿下の勅命を聞かせてもらうじゃん」


 表面上は晴れやかな笑顔で歓迎の意を表しながら、副隊長を怒鳴りつけた。


「オイ、豚! ボサッとしていちゃ駄目じゃん。エドモンドが、遠路はるばる王都から駆けつけたんだからさ。とっとと、もてなしの準備をするじゃん!」


 ワーシントン王国の南部戦線。隣国との国境線近く、名もない村の廃墟でガーネット騎士団の蛇と死神が、ついにお互いの手を取り合った。


 第四王子の藤堂を逆恨みする王弟ガスバルの邪まな目論見が、刻一刻と形を整えられていく。


 今はこの国の南部に立ち込めている黒い暗雲が、国の最北に位置するベリハム村に向かって動き出す日は近い。


――■――□――■――


 山賊との攻防戦の翌朝。ベリハム村の公民館に早くから集合した人々が、ワイワイガヤガヤと賑やかしい声を響かせている。


 敷地内に設置されたベンチや花壇の隅に腰を降ろすグループは、昨夜の打ち合わせで藤堂が提案したとおり、すでに二手に分かれて待機していた。


 だが、遊撃隊のメンバーだけでなく、教会の夫婦や村人も大勢集まっているので、あちこちで世間話に花が咲いている。


「じゃあ竜馬、悪いが山賊のお宝の方は任せるよ」


 片方のグループに加わっている若い盗賊に藤堂が声をかける。


「分かったよ兄貴。まあ、魔術師のゲンさんも一緒だしね。教会のシスターまで同行してもらえるんだから、心配する必要はないと思うんだけど……」


 そう言いつつ、盗賊の竜馬が不安そうにチラッと視線を泳がせた。その先には神が地上に遣わしたような美貌を誇る弓使いのエルフが物静かにたたずんでいた。


 山賊が全滅しているのは間違いない。


 だが……。


「おい、ロビン? 大丈夫か、ひょっとして、まだ寝ているんじゃないだろうな?」


 飛びぬけて理知的な聡明さが売り物のアーチャーには、残念ながら一つだけ欠点がある。起きている時は何の問題もないが、兎にも角にも寝起きが悪いのだ。


 早朝から招集をかけたせいか、どこかぼんやりした顔だ。それでも天界の秘宝のように美しい相貌を損ねるような事はない。


「王子。どうかご心配なく、このとおり目覚めもスッキリ万全の体調です」


 斜め四十五度の角度で体を開き、爽やかに答えるエルフ。しかし、彼の相棒である女戦士が、躊躇いもなく非情な突っ込みを入れる。


「今ロビンが話しかけている相手は、先輩じゃなくて村長っすよ」


「……嫌だな、冗談に決まっているじゃないですか? ねえ王子?」


 酒田の指摘に少しも動じる事無く、クルリと振り返ってニッコリ微笑みかける。


「残念ですが、いま君が面と向かい合っているのは、私の妻だったりします……」


 一体誰が王子なのか、全く分かっていない。それどころか、どうやら男女の区別すら怪しいようだ。神がかり的な美貌を誇るアーチャーは、完全に寝ぼけている。


「しょうがないな。鉄平、アレを頼む」

「うぃっす」


 藤堂の言葉を聞き終わる前に、女戦士の無骨な拳がロビンの脳天目掛けて振り下ろされた。


――ゴンッ!――


「お早うございます。これは皆さん、いつの間に? もう全員お揃いです?」


 切れ長の瞳をパチクリさせながら、公民館に勢揃いしている人々の顔を見回した。女神が嫉妬するようなその相貌に、罪悪感の欠片もない天上の笑みを浮かべる。


(やっぱり寝ていやがったか……)


 すでにロビンの弱点を承知しているタニアも呆れたように首を横に振る。両手を大きく広げ、際どい切れ込みで目のやり場に困るコスチュームの肩をすくませた。


「おいおい、頼むぜロビン。今から行ってもらうあの地下アジトに、万一山賊の残党がいたら、そっちの班で戦闘がこなせるのは実質お前一人だけなんだからさ」


「お任せ下さい」


(ホントかよ? まったく。寝ぼすけ状態じゃなければ、こいつほど頼りになる男は居ないんだがな)


 若干の不安を押し殺しつつ、諦めたように藤堂は村長の方へと視線を移す。


「村人の割り振りは大丈夫かい?」


「はい。一斑には山賊のお宝の運搬係りとして、村の老人会の中でもとりわけ元気な者を何名か同行させます」


「そうだな。恐らく大した物はないと思うけど、数があるとやっかいだ。各人の所持品データに放り込んで持って帰って来るだけだから、体力は必要もないしな」


「二班の方へは、基本的に昨日の山賊との攻防戦に参加してくれた村人全員に、一緒に行ってもらう予定です」


「それがいい。昨晩も言ったとおり俺の村興し計画では、将来的に彼らが主力メンバーになるからな。今の内に段取りを覚えてもらうに越した事はない」


「あと、婦人会には公民館で炊き出しのお手伝いをお願いしてあります」

「サンキュウ。爺さん、そっちは任せるぜ?」


「ご安心下さいませ。このチュートリアル、留守番部隊でこそ我が本領を発揮できますゆえ。お昼ご飯を楽しみに、皆様は現場作業の方を頑張って下さいませ」


 昨夜、村長と綿密に打ち合わせ準備が済んでいるのだろう。大きく開かれた公民館の扉の向こうから野菜を切る音が聞こえ、味噌汁のいい香りも漂ってくる。


「よし。じゃあ一斑に選ばれたメンバーは、山賊の地下アジトに向かって出発してくれ! 現地では、遊撃隊の指示に従って行動するように」


「了解」


 ロビン、竜馬、ゲンさん、シスター真由美。そして村の老人会メンバーが、大きく頷いて公民館を後にする。


「さあ、俺たち二班も行くか」

「うん! 剣一、いよいよ村興しのスタートだね。村外れの草原へ向かって出発侵攻!」


(それを言うなら、出発進行だけど。まあ、いいか)

                            ――続く――

【あとがき】

 一斑の面々は、山賊のアジトで目ぼしいお宝はゲットできるのか? また、藤堂率いる二班のメンバーは、村外れの草原で一体何をするつもりなのか?

 王子達が村興しに向かって動き始めた頃、南部戦線で陰惨な戦闘を繰り広げる冷血部隊が藤堂達の住むベリハム村へ向かって北上を開始しようとしていた。

 次回、鵬程万里編③『王子の村興しは、空中楼閣?③』乞うご期待!

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