ACT6 少女と彼の帰り道
玲旺那君は、お腹をかかえて笑っていた。あまりに笑うから、私はちょっと頭にきた。
「ちょっと。そんなに笑わなくたっていいでしょ?」
「ごめんごめん。多崎さんがおかしくってさ。でも、片思いは見抜いたけど、両思いまではわからなかったんだな」
また玲旺那君は笑い出した。私は無視してそのまま歩く。
「ああ、待ってくれよ、瑠璃。悪かったって……瑠璃?」
玲旺那君は目を見開く。私の涙のせいだろう。
「玲旺那君は……心配じゃないの? 私たちが付き合ってるってばれたら……もう、あそこにはいられないよ。部活辞めなきゃいけなくなるかもしれないんだよ!」
抑えようとしても、後から後から涙があふれてきて、どうしょうもなかった。
「私、怖い……玲旺那君と、離れたくない……でも、部活も続けたいよ。でもこれって、我儘だよね?」
私は道端にしゃがみこんでしまった。玲旺那君から顔を背けて、私は泣き続けた。
「俺だって、同じだよ」
すぐそばで、玲旺那君がしゃがむ気配がした。
「俺も瑠璃に告白する前に、こんなことしてもいいのかって思った。けどお前も、部活も、大好きなんだ。だから、どっちも自分のものにしようって思って」
私はそっと顔をあげた。玲旺那君と目が合う。彼はちょっと恥ずかしそうに、はにかんでみせた。
「俺が、欲張りなだけなのかも」
そういうとハンカチを差し出して、立ち上がった。
「今日は先に帰るよ。俺のせいで困らせちゃって、ごめんな。それと、あんまり泣きすぎるなよ?目が腫れたまま芝居なんて、かっこわるいからな」
一瞬の間に、玲旺那君の唇が頬に当たる。ひゃっ、と、情けない声を上げてしまった。
玲旺那君はまた笑うと、じゃあねと手をあげて、自分の家へ向かって走ってく。
私は、手の中の青いハンカチと、夕日で赤く染まる彼の背中を交互に見ていた。
……私も、欲張りになりたいな。
あなたも、部活も、あきらめない。
玲旺那君、大好きです。本当に、大好きです。