ACT15 少女は星を受け取る
「これ、あげるわ」
公演の後。着替えもちゃんとしてない状態で、先輩は私に体育館裏まで来るように言った。
しかも抜け出す時、先輩と時間をずらしてくるように言ったのだ。トイレに行くふりをしてね、という指示まで受けた。
私は先輩の言ったことを守った。トイレのある通路をまっすぐ行けば、小さな非常用出入り口がある。そこから体育館裏に行けるのだ。
誰にも見つからないようにあたりを見回しながら歩いていたけど、なんだか馬鹿ばかしくなってきた。
先輩は、私に何の用があるのかな。
どうして、二人きりになるのにこんなに慎重になる必要があるんだろう。
疑問でいっぱいのまま、まだドレスを着たままの先輩に追いついて、最初に言われたのがこの一言だ。
「これ、あげるわ」
言葉と一緒に差し出された物を受け取って、私はそれをまじまじと見た。
ペンダントだ。シルバーのチェーンが長めのもの。
そしてトップアクセサリーとして、五芒星がついている。直径は三センチくらいで、プラスチック製なのかな。半透明の黄色だ。よくみると、銀色の五芒星の形をした、スパンコールみたいなものが五枚、星の中に閉じ込められている。
なんだろう。先輩の用事って、これ?
「それはあなたのものよ。これは、先輩からの命令。それを肌身離さずに持っていて。常にどんなときにも。眠る時もお風呂に入る時も、身につけていなきゃだめ。そうしないと、あなたが危ないわ」
なんだかわけのわからないことを滔々と言われて、私の頭はすっかり混乱していた。おまけにその原因をつくった先輩はさっさと立ち去ろうとした。
「あ、待って下さい!」
私はかろうじて声を出して、先輩を引きとめる。
「えっと……これは、どういうことですか?」
先輩は、私を見なかった。首が真横を向き、その状態で止まったまま、静かに口を開く。
「あなたは気がつかなきゃいけない。質問するだけじゃ、答えはつかめないわ。お願い、早く気がついて」
先輩は、空を見上げる。体育館裏からだと、建物やそばにある木に囲まれて、見上げても全然解放的な気分にはなれない。
「早くしないと……早く逃げなきゃ。感づかれるわ。この子も危ない。あなたも危ない」
一瞬、聞き間違いかと思った。
先輩の声が、別の女の人の声に変わっっていったのだ。
背筋に寒気が走った。
立ち尽くす私の目の前で、若山先輩は倒れた。人形をあやつっていた糸が切れたように。
数瞬後、あわてて駆け寄った私に声をかけてきたのは、目を覚ました若山先輩。
「あれ、何で私、こんなところにいるの?」
先輩は、つい先ほどまでの出来事を、すっかり忘れていた。
私は星のペンダントを握りしめながら、何も言えず震えていた。