ACT1 少女は夢を語る
学園モノでファンタジーという話です。もしよかったら読んでやって下さい。
【追記 2020.6.27】
既に更新した部分を修正しながら、続きを投稿していこうと思います。
更新は超絶ゆっくりになるかと思われます。
私は最近、変な夢をしょっちゅう見る。
どこがどう変なのかというと、内容がとっても物騒で、決まって同じ展開になってしまうところが、だ。
私がこれまで見てきた夢というものは、きちんとしたお話としてまとまっていたためしが全くない。
いつも断片的な場面ばかりが、下手くそなパッチワークみたいに繋ぎあわさり、突拍子もないことが次々とおこり、最後は何がなんだかわからなくなって、大抵そこで目がさめる。
それがよくありがちな、私がよく見る夢の内容だった。
生まれてこのかた十四年になるけど、ここまで鮮明でやけに現実味があって、何時までも頭に残るような夢なんて、みたことがない。
夢の中で、私は暗い空間に立っている。ううん、浮かんでいると言った方が正しいかもしれない。足元に地面の感覚はないし、変な浮遊感があるからだ。
暗闇は地平の果てまで続いている。どんなに目をこらしても、尽きるところがあるようには思えない。
けれどそのうち、一筋のやわらかな光が差し込んでくる。その直後、私は虹色の大きな膜につつまれる。膜はシャボン玉のように薄く、それ自体がまるで呼吸をしているように、表面がふくらんだり七色のマーブル模様を描き出す。
私はそれを、ぼんやりと見つめている。
夢を見ている間はいつも、「ああ、これは夢なんだ」という感覚はないし、「何時も見ている夢だ」という考えも思い浮かばない。
ただ、目の前に繰り広げられる不思議で幻想的な光景を、受け入れているだけなのだ。
何となく、私がその膜に触ろうと手を伸ばす。
いつもそれと合わせるようにして、闇の向こうから誰かが走ってくる。その人は、全身真っ黒な服を着ている。
マントを羽織っているから体型はよくわからないし、顔もフードで隠れ、口から上が見えない。
こちらに駆けてくるその人を見ていると、なぜか寒気に襲われる。とてつもなく、嫌な予感。でもそれが何なのかわからない。
私が考えているうちに、その人は私の目の前で立ち止まる。長い距離を走ったはずなのに、少しも息切れしていない。
なぜだか私はその人を男の子だと思うのだ。この夢を見る度、毎回。
私はしばらく、フードで隠れた男の子の顔をしげしげと眺める。そんなことをしたって、相手の正体はわからないというのに、なぜかそうしてしまうのだ。
男の子が、何か言った。でも私には聞こえない。問い正そうとすると、男の子は右腕を振り上げる。
手に握られている物を見て、驚愕する。鋭い刃物だ。七色の膜の光を反射して、冷ややかに銀に光る。
男の子の唇の両端が上に持ち上がって、不気味に微笑んだ。
叫びたいのに、声が出ない。逃げたいのに、足が動かない。
男の子は右腕を振り下ろす。虹の膜が破れ、私の頭上へ冷たい刃物が……
「嫌……、やめてーっ!」
そう叫んだ瞬間、私は飛び起きて現実に引き戻される。
これが最近よく見るようになった、物騒な夢の内容だ。