表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

晴れた空の下

作者: 彩夏


「明日晴れたらいいね」

そればかり、まるで呪文のように唱えていた。

「明日は雨だって」

呪文にまぎれ合いの手のように呟くその声は、回数を追うごとに笑みを含んだ。


「告白された」

そう言ったのは、友達の祐樹だった。

男女間に友情はないと、世は常に疑いの目で私たち二人を包むけれど、気にはしないという祐樹の一言があるおかげで、私も常に、気にはしないと呟けている。

「そうなんだ」

「そうなんだよ」

その表情は、困ったというわけではなさそうだった。しかし、嬉しいといった感情でもなさそうだった。

「それで、どうするわけ?」

大して興味なさげに呟く。勿論興味はまるきしないわけではない。

「付き合うんだろうな」

人事の様である。

「大事にしてやんなよ」

「大事にはできないだろうな」

私は頭を抱えた。

この男は、本当に思っていることを正直に言う。

自分の欠点だとはまるで思っていない。

「嘘でも大事にすると言っておけばいいのに」

「嫌、俺は嘘はつかない。本人にも、大事にはしないと言った」

その女の子の心情を思うと、自分の事の様に申し訳なさが溢れ出たので、考えるのをやめた。

「嘘も方便だ」

「それでも嘘は嘘だ」

正論だが、相変わらずこの男は頭が固い。

自分を曲げない、それでいて実はとても脆い。

当って砕けろ、いや、当たる前に風圧で粉々になり触れることすらかなわない。

そういう男だ。

だから自分の周りを鉄壁で囲み、いつでも確実に壁をぶち破ってきた。

そういう男なのだ。

今回も、付き合いを始めるにあたって、あらかじめ「大事にはしない」と鉄壁を用意し、そして挑むのだろう。

そしてその鉄壁はいつの間にやら、攻撃力やら守備力やらをレベルアップさせ、壁は自ら消えていくのだろう。

「明日は初デートだそうだ」

相変わらずである。だれの事だと思ってるのやら。

「そう、晴れたらいいね」

「明日は雨だそうだがな」


そして、延々と言い続けることになるのである。

「明日晴れたらいいね」

本当に晴れたらいい。

そして晴れた青空の清々しさの中で、貴方自身を晒し出してくればいい。

壁は自ら消えていくだろうか。

もしそうだとしても、私がいればいいだけなのだ。

明日、晴れたらいいのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ