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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪夢

作者: 如月
掲載日:2026/04/18

ホラーっぽい様な話ですが、オチはつきます。

ある日突然世界にゾンビが溢れた。人間に対して攻撃的で、襲われれば食べられる。当然世界中で大混乱となった。

先人たちの偉大な犠牲の元、ゾンビの対策は判明している。

頭部の破壊。銃器だろうが、鈍器だろうが頭部を破壊すれば活動を停止し、肉体も崩れる様に消滅する。

それが分かったとて、実際に行動できる人は特に一般人は多くはない。

ゲームじゃあるまいし、銃で頭を狙撃なんてできるわけが無い。

鈍器で殴り飛ばすのだって、どうしたって躊躇してしまう。だって一応人型をしているのだ。殺らなきゃ殺られる、そう分かっていても「私」にはできなかった。

そうなるとできる対応としては、隠れて逃げるの1択。

幸いな事にゾンビは思考能力は高く無いらしい。見つかれば追いかけられるが、視界にさえ入らなければ探そうとしない。脳まで腐敗が進行しているせいじゃないか、と言われている。

だから、隠れるのは棚の中や家具の隙間。

全力疾走の後だろうが、呼吸は細く長く静かに。

いくら怖かろうが行動を把握するため、目は開いたまま。

視力と聴力を全力で駆使して隠れながら移動し、避難所になっている所を探す。避難所では物資や情報の交換、雑務の手伝いや、交代で見張りと休憩を繰り返す。

そしてゾンビに襲われれば集団で逃げ、次の避難所を探す、そうやって凌いでの生活が続いていた。


「奴らが出たぞー!」

その日いた避難所に大声が響き渡る。全員一目散に逃げるが、前日の雨で泥濘んだ地面に足をとられて転んでしまう。

少しでも遅れれば奴らの餌食になる。そんな時に他人を助ける余裕なんかは無い。「私」だってこれまでそうして人を見捨ててきたんだから、見捨てて逃げていく人たちに文句は無い。

足を、腰を、肩を、そして頭を奴らの手で抑え込まれていく。

(あぁ、これで終わりかぁ…)

首に歯が突き立てられて感じたのは、いっそ終われることへの安堵だったのかもしれない。


ガブッ…グチャァ……




固いものの上に横たわっている感覚がする。「私」は食べられたんじゃ、そう思って飛び起きた。身体は動くし、痛みも無い。


助かった。


そう思えたのは一瞬だった。

視界に入った自分の身体は、色が変わって腐敗している。肩は動くけど、肘は半端に動かしにくいし末端の指はぴくりともしない。

あれだけ追い掛け回されたんだ。一番覚えているのは、こちらを捕まえようと伸ばしてくる【手】だ。

だからこそわかってしまった。これは【ゾンビの手】だ。「私」はゾンビになってしまった。

ここで発狂したのか気絶したのかはわからないが、意識が途絶えている。


…ガチャ…キィ、


扉が開く音がした。

たまたま意識が浮上したのか、そのタイミングを図っていたのかはわからないが、「私」の意識は正常に扉へと向かった。

しかし、部屋に入ってきたのがゾンビである事に気づくと、もはや条件反射的に逃走を図ろうとする。その身体を止めたのは、


「あぁ、良かった。目が覚めましたね。」

入ってきたゾンビの言葉だった。


「ゾンビが…しゃべった…」

「はい、喋れるというよりゾンビ同士であれば意思疎通はできるのです。コレが人とゾンビだと、人にはうめき声にしか聞こえないのですが…。さて今はまだ混乱の最中にあるでしょうが、今の状態についてこちらで分かっている限りの情報をお伝えします。…正直納得したくない事、分からない事だらけだとは思いますが、今後の行動に関わります。何回でも質問してもらって構いませんし、聞き直してもらっても構いません。」


そう言って話された内容は確かに理解も、納得もしたくないものだった。


ゾンビも元々は人間であり、噛まれた人の中で適応した人がゾンビへと転化する事。

今みたいに会話が可能な事から知性、理性は残っている事。

しかし人間を見てしまえば一転し、本能による食肉衝動にかられ無差別に襲い掛かってしまう事。

テレパシー的なものが有るのか、誰かが人間を見つけると周囲へ伝播し、集団で襲いはじめてしまう事。

自身の腐敗による痛みや臭気が無い、ナニを食べても味が無い。このため五感の内、視力と聴力しか機能していない事。

そして、現状人間に戻れる術は無い事。


「そんなっ、なんで…こんな事に…」

「原因を調べようにも、治療というか元に戻る方法を探そうにも手段が無いんです。私達の指はろくに動きません。研究機材が使えないんです。かと言って人間の研究者に頼む事もできません、間違いなく襲って食い殺してしまいます。最悪なことにゾンビの死体も残らないので、サンプルを残すことも出来ないのです。」


人間に合わなければ、思考は元のままなのだ。とそのヒトは言った。

人がゾンビから隠れようとする場所と、ゾンビが人から隠れようとする場所は似通っている。

だからこそ同じ場所に集いやすい。

見つけないで済むように、人が隠れていそうな場所に視線は向けない。

見つけてしまえば、本能に抗えない。例えその人がかつての家族だろうが、友人だろうが、恋人だろうが、見てしまえば襲ってしまう。


「…目を怪我したゾンビを見た事はありませんか?彼らは大切な人を襲ってしまった事に、人間を食べた事に絶望してしまったゾンビの成れの果てです。眼を潰し誰かに殺してもらうため彷徨っているのです。…どうしてだかわかりませんが、我々は自殺行為が取れません。だから自らを終わらせようと思うなら、人間に殺してもらうしか無いのです。」


「私」に提示された選択肢は2つ。

ひとつはいつか人間に戻れるかもしれない希望に縋り、人間から逃げ生きる事。

もうひとつは、眼を潰し誰かに殺してもらうため彷徨う事。こちらのメリットは誰かを襲わなくて済む、ということ。

どちらを選ぼうと地獄には変わりない。

考えに考えて、「私」が選んだのは……

という夢を見た。


設定をいくつか加えましたが、逃げてるシーンと会話のシーンはほぼ夢のままです。

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