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第4話:あかりの独白

〇あかりの自室 (夜。パソコンの冷却ファンの微かな音。部屋にはいくつもの加湿器が置かれ、まるで発酵室のような湿度の高い音がしている。あかりが一人、スマートフォンに保存された「喉に包帯を巻いて怯える彼」の写真を見つめている)


あかり:「……ふふ。ふふふふ。見て、この怯えた瞳。まるで、オーブンに入れられる直前の、真っ白で無垢な成形後の生地みたい。……なんて愛おしいのかしら、彼」


(椅子がギィ……と低く鳴る音)


あかり:「彼はまだ分かっていないの。自分の中に眠る『パンへの渇望』を。……お米? あんな、ただ炊いただけの、個性のない粒の集まり。あれに執着するなんて、魂が飢えている証拠だわ。……でも、大丈夫よ、彼。私があなたを救ってあげる」


(机の上の小麦粉の袋を指先でなでる音)


あかり:「明日から、いよいよ同棲ね。……ふふ、楽しみ。私の目が届く場所で、24時間、360度、パンの香りで彼を包囲するの。朝食のトーストの音で目覚めさせ、昼は私の愛(酵母)が詰まったサンドイッチで胃袋を掴み、夜は……ふふ、小麦粉の寝具で眠らせてあげたいくらい」


(少し声のトーンが熱を帯び、狂気が混じる)


あかり:「彼の血を、一滴残らずパンの酵母に入れ替えたい。彼の細胞一つ一つが、私の焼いたパンで構成されるまで……徹底的に『発酵』させてあげる。……そうすれば、彼はもう二度とお米なんて欲しがらなくなるわ。お米を愛していた過去ごと、こんがりと焼き切ってあげる」


(窓の外、夜の街を見つめて)


あかり:「あかりと彼。二人で一つの大きなカンパーニュになるの。……待っててね、彼。明日からは、米粒一つの隙間もない、小麦色の世界へ連れて行ってあげるから……」


(満足げに、甘く、不気味な笑い声が部屋に響く)

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