第3話:情熱の告白(脅迫)
〇夕暮れの公園・大階段 (カラスの鳴き声。風の音。夕闇が迫り、人影はまばら)
あかり:「……ねえ。空を見て。あの夕焼けの色、ちょうどよく焼き上がった食パンの耳の色だと思わない?」
彼:「(掠れ声)……あかりさん、もう帰ってもいいかな。首の傷が疼くんだ……」
あかり:「ダメよ。まだ、一番大切な『仕上げ』が終わっていないもの」
あかり:(彼の正面に立ち、至近距離でじっと見つめる) 「……ねえ。あなたは私のパンを喉で受け止めた。私の魂の一部が、あなたの体内に埋め込まれたの。これって、もう普通の関係じゃないと思わない?」
彼:「いや、それは物理的な事故であって……」
あかり:(遮るように、一歩踏み出す) 「私は決めたわ。あなたを、私の教団の『第一使徒』……いいえ、私の『夫』にするって」
彼:「えっ!? い、いや、無理だよ! 俺、米派だし、君のことはまだよく知らないし……」
あかり:(懐から、あの日彼を貫いたのと同じモデルの硬質バゲットを取り出し、彼の喉元に突きつける) 「……いい? 返事は『イエス』か『イースト菌』の二択よ」
彼:「(冷や汗)……それ、どっちも同じじゃないか……!」
あかり:「私と一緒に歩むの。世界中の白米を、小麦の輝きで塗り替えるために。私というパンを、一生かけて味わい尽くすと誓いなさい。もし拒むなら……今ここで、その喉の穴にこのバゲットを叩き込んで、あなたを『人間サンドイッチ』にしてあげる」
彼:「(バゲットの硬さに震えながら)……ひっ。……あ、あかりさん、目が……目が本気だ……」
あかり:(急に満面の笑みになり、甘く囁く) 「ねえ。怖がらないで。私と一つになれば、あなたの人生はふわふわで、温かくて、香ばしい幸せに包まれるわ。……ねえ、言って? 私を愛してるって。パンを愛してるって!」
彼:「(死の恐怖に屈して)……わ、わかった! 愛してる! あかりも、パンも……愛してるから! そのパンを下げてくれ!」
あかり:「(歓喜して彼を抱きしめる)……ああ! 素晴らしいわ! 今、私たちの愛が最高の温度で発酵したわね! 大好きよ、私のパン君!」
彼(M):……終わった。俺の人生、終わった。……お母さん、ごめん。俺、パン教の教祖と付き合うことになっちゃった……。




