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2章第3話 受容者

「ついてくるな」


俺は振り返らずに吐き捨てた。背中の金床が、歩くたびに重く、鋭く肩に食い込む。

石畳が途切れ、荒野の泥がブーツの底を汚す音が響く。その背後から、もう一つ、頼りない足音が絶え間なく続いていた。


「……行くところなんて、ないの」


ノンの声は、風にさらわれて消えそうなほど細かった。

彼女は道で拾った少し太い枝を杖代わりにし、引きずるような足取りで俺の後を追ってくる。


「それに、あなたが首につけてくれた石の正体だってわからない。永続的に続くものなのか、いつか効果が切れて、マナドライブが始まるのか...

 お願い。私、まだ死にたくない。理由なんて、ない。ただ……あんな風に、壊れて終わるのは、嫌なの」


俺はその瞳を見て、舌打ちをした。

この世界では、国も軍もシステムも、俺たちを「価値」という基準でしか見ない。役に立つ間は磨き上げ、壊れれば無造作に放り出す。そんな世界で「生きたい」と願うことが、どれほど非効率で、どれほど重い罪か。


「俺は、あんたを救い続ける余裕なんてない。俺自身が、いつ野垂れ死ぬか分からないんだ」


「……分かってる。でも……」


こいつは正直、俺にとって足手まといにしかならない。

さっきこいつ自身が言ったように、いつまたあの兵のように暴走を始めるかわからない。

そんな危険なやつを近くにおいていけるわけがない。

だが、それを捨てることができない自分に、俺は苛立ち、そして微かな諦めを感じていた。


「……勝手にしろ。ただし、足が止まったら置いていく」


俺の言葉に、ノンの顔に一瞬だけ、生きた人間らしい表情が戻った。


その後、歩き続け、俺たちは崩れかけた石造りの小屋を今夜の拠点に決めた。

屋根の半分は吹き飛び、壁には砲撃の跡が抉れているが、吹きさらしの地面よりはマシだった。


俺は荷袋を下ろし、セラの店から持ち出した金床とハンマーを並べる。その重さが地面に伝わる鈍い音が、静寂に響いた。


俺は瓦礫の中から燃えそうな木屑を集め、火打ち石を叩いた。

小さな火が、暗闇を橙色に染め始める。


「ねえねえ、結局この石は何なの?」


「正直なところ、俺もまだ良くわかってないというのが答えだ。この石は、俺のことを拾ってくれた店主が大切だと言っていた物。わかるのはそれくらいだ。」


俺は石を火の側に置き、ハンマーを手に取った。

俺は石をじっと見つめる。


「あんたの体、今、どうなってる?」


俺の問いに、ノンは戸惑いながらも自分の胸をなぞった。


「……熱い。心臓の奥から、絶え間なく魔力が湧き出してくる。今までは、これがずっと溜まってる状況だったけど、今は通気口ができた感覚に近い。あの焼き切れるような感覚より、ずっと静か……」


勇者システムに関する情報を思い出してみた。

俺は勇者の失敗作であるため、本来は消える予定だった。

多分、勇者システムの選別に合格した者のみに、ある程度の情報が頭に送られるのだろう。

合格の有無は生き残っているかどうかで判断される。

不合格なはずなのに俺に情報が送られているのはそういうことだろう。


勇者の合格基準は大きく分けて4つ。

知能、忠誠心、身体能力、魔力とマナへの耐性。

魔力とマナの違いについてだが、本質は同じだ。体内から出ると魔力、体外から体内へ入るとマナ。


一番最後の欄にある魔力とマナへの耐久力。勇者はこれが一般人に比べて圧倒的に高い。

そのため、人外的な戦闘力を発揮することができるのだ。


これを元に、マナドライブの仕組みについて考えると、

魔力とマナへの耐性が低い一般人に、無理やり勇者に与えている以上のマナを送り込む。

一時的に勇者を超える戦闘力を発揮することができるが、時間が経つと死に至る。

そう考えるのが妥当だろう。


ノンの証言を元に考えるに、あの石は魔力の出口を作り、放出する物なのだろう。

しかし、この効果がどれほど強力に働くのかわからない。


生きるのにも魔力は必要不可欠だ。あの石を日時携帯しておくと、今度は逆に魔力不足に陥るかもしれない。


そう思っていた矢先、部屋にいたノンが倒れた。


「おい、大丈夫か!」


意識はない。前のようにマナドライブの影響ではなさそうだ。

先程懸念していたことが起こったのだろう。

俺は咄嗟にノンの首についている石を外そうとした。


しかし、なぜだろう。ここでこの石を外すのは良くない気がする。


対処に悩んでいた時、目の前の金床が目に入った。


現座、バックの中にはもう一つ同じ種類の石がある。

もって来ておいた金属のクズもある。

これらを使って、魔力の放出を調節できる首輪を作れば、この状況を打開できる。


チャンスは一回。タイムリミットもある。



俺の体はすでに動いていた。

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