第二話 淡い恋
※誤字があったらすみません。
遅刻ギリギリになりながらも、なんとか教室までたどり着く。
「ここが新しい教室か…」
クラスは1年c組であった、正直下駄箱から遠いので少し気に食わなかった。
しかし、これから新たな友達や、もしかしたら彼女も出来るかもと思うと、ワクワクせざるをえなかった。
「さっきのことは忘れて学園生活を楽しもう!」
そう期待を膨らませ教室へと入っていく、しかし、緊張しているのか、みんな無言で席に座っていた。
なんでだろうと考えながら自分の席に着き、隣の席を見る、まだ来ていないようだった。
入学初日から遅刻とはなかなかのやり手だなと少し尊敬する。
俺が席に座った3分後ぐらいにガラガラと音を立てて3人の生徒が入ってくる。
「あの人達、めっちゃ美人じゃね!?」
「それな!特に真ん中の金髪の人とかやばくね?」
「俺は右にいる白髪の子がタイプかなぁ…いや左の清楚っぽい子も捨てがたい…あぁ!もう!3人とも可愛すぎるって!」
「おい!声デカいって!聞こえちゃうだろ?」
そんな声がクラスから漂ってくる、さっきまでのしんみりとした空気はどこにいったのやら。
そんな中、3人の内の白髪の子がこちらに向かって来て、そして俺の隣の席に座る。
俺は心の中でガッツポーズをした。
だってこんな美人が隣の席だ、男子だったら喜ぶに決まっている。
俺は交流を深めるため、一応挨拶をしておいた。
「おはよう、これから宜しくね」
すると。
「うん!こちらこそ宜しく!」
笑顔でこちらに挨拶を返してくれた、とても嬉しくて、その瞬間俺は気づいてしまったのだ。
彼女に一目惚れしたのだと。
初めてだった、生まれて早15年。
そんなことは生まれてから1度も起こんなかった。
いや、正確に言えばまだ恋をしていると決まったわけではないのだが、間違いなく好意は持っている。
しかし、俺はそこで彼女に強気に攻めにいける様な人間ではない、何にせよ、俺は人との関係性は程よい距離感が一番理想的であった、だから俺は淡い恋がしたいのである。
しかもおまけに人見知りである。
1つ目は単なる理想だが、2つ目は変わることのない生まれながらの欠点である、決して変えられなどしない。
そんなことを思っていると、教室に教師が入って来た。
「今日からこのクラスの担任となる、黒田平助だ。俺はみんなと楽しく思い出に残る1年間にしていきたい、みんなよろしくな」
とても優しそうな先生で一安心した。
しかし、体が筋肉質であるため、怒らしたら多分やばい系の先生だろう、怒らせないように気をつけて生活しようと心に誓った。
「では、クラスの皆との交流を深めるため、まずは皆で自己紹介をしようと思う」
きました、自己紹介タイム。
俺は何を言おうかと脳をフル回転させる。
自分の好きな食べ物でいくか?いやなんか違う気がする、好きなスポーツでいくか?いやそもそも好きなスポーツなんてなかった。
そうやって俺は、みんなが自己紹介する中、ひたすらに自己紹介デッキを組んでいた。
そしてついに俺のターンが回ってきた。
「俺の名前は緑原大地です。俺は横浜からきました。得意なことは特にないですが、趣味でゲームをしています。皆さん仲良くしてください!」
我ながら完璧である、周りの反応を見てみると。
「…ぱちぱち」
拍手が少し鳴るだけであった、あれ?俺嫌われてる?!俺何かしましたか?!
そう心の中で叫んでいると、隣の席の子の順番が回ってきていた、俺は耳をすませる。
「はじめまして!私の名前は白浜埜乃です!好きなことはカフェを巡ることです。皆のオススメのお店あったら是非教えてください!1年間よろしく!」
自己紹介が終わった瞬間、盛大な拍手と声が聞こえてきた。
「よろしくねー!」
「埜乃ちゃ~ん!俺と連絡先交換してぇー!」
白浜さんは苦笑いしていた、モテるって大変なんだなと痛感した。
「なにか質問とかありますかー?」
とみんなに投げかけた。
もちろん俺は質問する勇気などなく、ただずっと白浜さんを眺めていた。
「はいはい!埜乃ちゃんに質問でーす!好きなタイプとかありますかー?」
と、ぶっこんだ質問を男子がしていた。
こいつデリカシーないのかと思いつつ白浜さんの回答を待つ。
「うーん…私を助けてくれるようなたくましい人かな?」
俺は結構意外だと思った。
てっきりイケメンとか言い張るものだと思っていたが、案外白浜さんは乙女なのかもしれない。
「俺とかどう?絶対助けるって!」
白浜さんはまたしても苦笑いをしている。
「おーい白浜が困っているぞー、それに時間もないから、次の人の自己紹介いくからなー。」
先生からの救済処置を受けた白浜さんは席に座った、顔を見ると、少しホッとしていたように感じる、そんな顔も可愛いなと思いながら残りの時間を過ごした。
そんなことがありつつ、あっという間に入学初日が終わり、下校の時間になっていた。
結局友達の1人もできゃしなかった…悲しい!
そんなことを思っている矢先、一人の男子生徒が話しかけてきた。
「なぁ緑原、お前どんなゲームしてんの?」
これは…友達を作るチャンス!
「いろんなゲームしてるぞ、てか名前何?」
「おい自己紹介の時聞いてなかったのかよ!?」
「俺は自分の自己紹介デッキを作るので忙しいかったんだよ。」
「何だよそれw俺の名前は黄菊陽太だ、これからよろしくな!」
「おう、よろしく!」
黄菊陽太、名前の通り陽の雰囲気剥き出しの男子であった。
身長は175くらいだろうか?それなりに大きく、顔は結構イケメンである。
そんな高スペックな男友達を1人獲得することに成功した…めっちゃ嬉しい!
俺はルンルンで帰ろうとすると、白浜さんが小走りで校舎裏に向かって行く所を見かけた。
まさか告白!?いやいや入学初日だぞ!?
俺はつい気になって白浜さんの後を追っていった。
すると白浜さんは、1つの段ボールの前でしゃがみ、何かをしていた。
俺は勇気を持って話しかけて見ることにした。
「し、白浜さん、何してるの?」
「あ!緑原くんじゃん、実はね、学校付近にモルモットが段ボールに捨ててあってさ、見過ごせなくて一回ここに避難させていたの。」
「モルモット?珍しいね」
「そうだよね、飼ってあげたいんだけど私の家ペット禁止でさ…どうしようかなって思って…」
動物を放っておけない様な人なのか、心までいい人何だな…そんなことよりも、白浜さんが困っている!なんとかしてあげなくては。
「じゃあ俺が引き取ってもいいかな?」
「いいの!?」
「大丈夫だよ、俺一人暮らししてるんだけど家に一人って寂しいし丁度いいかなって」
「ありがとう緑原くん!そういえば朝にもイノシシから人を守っていたよね?」
「え!?見てたの!?」
周りから人の視線とかは感じなかったのだが、まさか白浜さんが見ていたとは…助けて良かった!
「うん、でも助けた後の顔がなんかどんよりしてたけどどうかしたの?」
「い、いや…特に理由はないよ…」
言えない、助けた人がオカマで落ちこんでいたなんて言えるはずがない。
「そっか!じゃあ私友達待たせてるから、モルちゃんのことお願いねー!」
「おう」
行ってしまった。
ところでモルちゃんって言ってたか?もしかしてこのモルモットに名前をつけたのかな?
まぁなんでもいっか、もう帰ろう。
「入学初日からいろんなことが起きたな…いつもよりも肩が重い気がする…ただ帰ったらペットショップと耳鼻科にもいかなくては」
そんなことを小さくつぶやき、段ボールを抱えながら夕日に照らされ、俺は自宅へと帰って行く。
ぼーっとしながら帰っていると、どうしても白浜さんの顔が浮かび上がってくる。
「白浜さんいい人だし可愛かったなぁ…」
俺は自然とそう発していた。
しかも気になって白浜さんの尾行までしてしまった。
しかし、俺はこれで確信したことがある。
僕は淡い恋をしている
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