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帰り道の話題

第8話です!

「…………」


「…………」


 学校から出てしばらく、無言のまま二人は相変わらず気まずい空気の中、カンパネラ王国の街を歩いていた。


(どこまで着いてくるんだ?)


 イルミは思う。カンパネラ王国も大国である。わざわざ寮に入らず、通う生徒は一握りしかいない。コーデリアの実家がある場所は決して近くないはずとイルミは思う。どこかに借家でもあるのかもしれないと考えるイルミ。


「えっと、コーデリアさん?」


 遂に沈黙に耐えきれずにイルミが話題を切り出す。


「なに?」


「住んでいる家ってこの辺りにあるんですか?」


「近くにはない。私は寮生だから」


「え、じゃあまた学校に戻るって事……?」


 わざわざ自分を送るためにここまで一緒に来てくれているという事に罪悪感を覚えるイルミ。そうであるなら、もっと早く聞いて、すぐに断っておくべきだったと思う。が、コーデリアは「何を言ってるの?」と言うように首を傾げている。


「今日から貴方の家に私も一緒に住むんだよ?」


「……はい?」


 突然の事で理解が追いつかないイルミ。


「私は貴方を命に代えても守るって誓った。だから危険がないよう常に貴方と一緒にいるのは騎士として当然」


「いやいや! 騎士の人の考えはよく知らないけど、主君でも何でもない一般人一人のためにそこまでする事ないと思うんだけど?」


 英雄で学長の息子とは言え、一生徒、王族でも貴族でも何でもない。そんな人間一人にそこまで仕える事は変だとイルミは言う。


「初めての人だから。私が騎士として背負う事を任された最初の人だから。私は貴方を何としても守らないといけない。立派な騎士になるために」


「初めて? コーデリアさんの家に依頼された討伐任務を一緒に行ってるって聞いてますけど」


「それは私に任された訳じゃない。私の家に任されただけ。私は未熟だから、今まで誰かの命を背負う事を許されなかった。だからイルミが初めての人。初めて命懸けで守る相手」


 重たい思いだとイルミは内心思う。友達もいなさそう。


 学校で知らない人はいない彼女だが、彼女の強さ以外を知っている人の話をそういえば聞いた事がないとイルミは思う。違うクラスだからではない。彼女はクラスで浮いているのだろう。


 それでも、悪い噂を聞かないのは彼女自身が無口で誰も近寄らせないオーラを纏っているから。ただの孤独ではなく孤高であると認識され、ある意味、強さも相まって神格化されているとも言える。


 しかし、口を開けば勝手な言い分。相手の都合なんて一切考慮していない。


「あの、コーデリアさん。ここまで大丈夫です。送って貰ってありがとうございます」


「え、でも……」


「寮に帰ってください。俺は一人でも大丈夫なんで。それに急に家まで着いて来られても迷惑なんですよ」


 ハッキリと迷惑だとイルミは言う。少し口調も荒い。勝手なコーデリアの言い分に多少はイラついているらしかった。


「迷惑……」


 イルミのハッキリとして拒否にコーデリアのクールな表情にほんの少し陰りが見える。しかし。


「それでも、それでも貴方の傍にいさせて欲しい。私は外でも構わない。野宿は慣れている。構うなと言うなら私は貴方に声を掛けない。見える範囲にいるのが嫌だと言うなら、私は貴方から距離を取って見えない場所から見守る。だから、私を貴方の近くに居させて欲しい?」


 必死な叫び。実際に叫んではいないが、イルミには叫んでるように聞こえた。何も変わっていない。結局は身勝手な提案である。しかし、彼女にも譲れないものはあるらしい。


「……分かりました」


 折れるイルミ。陰っていたコーデリアの顔が明るくなった気がした。


「ただ、俺が住んでる所は俺の家じゃないんで、家主に許可貰えたらですからね?」


「許可が貰えなかったら、野宿する」


「お願いですから、ちゃんと寮に帰ってください」


 と、言いつつも、イルミは許可を貰う心配はしていなかった。それよりも許可を貰った上で心配な事があった。


「コーデリアさん、料理はした事ある?」


「料理……? 一度もない」


 まぁ、これはイルミも予想していた事であった。騎士階級のお嬢様にそんな期待はしていない。


「配膳の手伝いはしたことあります? 接客……はないと思うから、人と話したり、関わる事は得意……じゃないですよね?」


「……? よく分からないけど、配膳はいつも私はやってない。でも、人と関わるのは得意だと思ってる」


 という事は全部だめと言う事かと、イルミは思う。


「まぁ配膳くらいなら出来るか……」


 と、イルミは呟く。


「なんでそんな事を聞くの?」


「住むに当たって、バイトをする必要があるからですよ」


「バイト?」


「要は働かざる者食うべからずって奴ですよ。店主がその辺り厳しい人だから特別扱いはされないはず。バイト先はあの通りを曲がった所です」


 飲み込みきれてはいないが、とりあえずイルミに着いていくコーデリア。


「ここです」


 と、イルミが立ち止まる。そこにある看板をコーデリアは読む。


「酒場『双児宮ジュミニ』」


「ここが、俺のバイト先であり、家ですよ。まだ準備中だと思うんで入ってください」


 そういって、イルミはコーデリアを自分のバイト先に招き入れるのであった。


読んで頂きありがとうございます!毎日21時に投稿しているのでブックマークを押して頂けると嬉しいです!またYouTube『熱き漢たかの熱唱熱遊ch』にてゲーム実況をしていますのでよければ遊びに来てください!

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