放課後にて
第7話です!
「じゃあ、今日はこれで終わりね。全員気をつけて帰りなさいよー」
担任のリリシアは「それじゃあ」と言って、さっさと教室を出て行ってしまった。
「それで、何の話しをしてたの?」
教室での終礼が終り放課後となってすぐに、シャミアはイルミに気になっていた事を問いかけた。
「え、な、何が?」
イルミは隠し事が下手なようであった。学長室で話した事は外で漏らしてはいけないと言われていたイルミは聞かれた時に対処するための答えを考えていなかった。正直、シャミアくらいには事情を話してもいいと思うイルミだが、教室内では人が少し多すぎる。
「何がじゃないでしょ。アンタが学長に呼ばれたせいで、オリハルに見つかったんだから」
オリハルとはジークの事であり、世界一硬い物質と呼ばれている「オリハルコン」から来ているあだ名であり、ジークが世界で一番の堅物であるという由来から来ていた。
「別にあれは俺のせいじゃないだろ……大体、俺は止めたのに、うるさいって言ってスキル使ったのはお前らで、明らかに自業自得だと思わないか?」
「それは、そうだけど……」
非の打ち所がなかった。
「でも、それはそれとして、学長室で何話してたの?」
「えっと、それは……」
話が蒸し返されてしまった。
「え、隠さないといけないような事なの?」
「い、いや、そんな事は……」
その通りであり、それがバレてはいけないイルミは目を泳がせる。
「あ、いた。イルミ」
問い詰められるイルミに救いの手が伸ばすかのようなイルミを呼ぶ声。
クラスのものではない澄んだ声。自然とクラス中の視線がイルミの名を呼んだ人物の元へと集まる。
「え、え?」「なんでここに?」「どうして、アイツを?」
などと言った声が聞こえ、クラスがざわつき始める。
それもそのはず。教室に入ってきたのは、この学校で一番の有名人と言っても過言ではない少女、コーデリアがそこにいたからであった。
「え、何? 今、アンタの事を呼んだの? どうして? いつから関わりがあったの?」
シャミアも他のクラスメイトと同じように動揺しているようで、学長室であった話からコーデリアとの関係について問いかけ始めた。
「えーと……」
イルミとしては全くもって話が逸れていないため返答に困ってしまう。
「イルミ」
そこに、コーデリアは空気を全く読まずに二人の間に入って、イルミに話しかけた。
「迎えにきた。一緒に帰ろう」
「はい?」
予想外の言葉に驚きで間抜けそうな聞き返しをしてしまうイルミ。
「はぁ!?」
しかし、もっと驚いていたのはシャミアの方であり、叫びを上げていた。
「どういうことよイルミ! 一緒に帰ろうって、本当にどんな関係なのよ!?」
ほとんどヒステリーを起こしているのに近いシャミアはイルミの胸ぐらを掴んでブンブンと振り回す。動揺のあまりか、彼女の怪力が遺憾無くイルミを襲っていた。
「おい、落ち着けーー」
「辞めて、イルミが怪我をする」
そのシャミアの暴走を止めたのはコーデリアだった。
間に割って入ったかと思えばシャミアの腕を取りイルミをその剛腕から引き剥がした。
「庇ったぞ」「コーデリアさんがアイツを?」「本当にどういう事?」
いつの間にかクラス中が3人のやり取りに注力するようになっていた。
「大丈夫? 怪我はない?」
掴まれてクシャクシャになった胸ぐらをコーデリアは優しく直そうとする。
「だ、大丈夫だから」
と、イルミはその手を拒否して、自分で乱れた制服を直す。
「ねぇ……いい加減に答えてくれるかしら?」
そのやり取りを一番近くで見ていたシャミアはワナワナと肩を振るわせている。
「どういう関係なの、アンタら二人?」
「それは……」
答えに迷うイルミ。どういう関係。今日初めて会ったばかりの仲のコーデリア。彼女と自分の関係
性を言い表す言葉をイルミは探す。が、言葉を模索している間に先にコーデリアの口が開く。
「私はイルミのパートナー」
クラスの騒めきが大きくなる。
「え、パートナー!?」「それって、そういう事!?」「あの二人が!?」
思い思いに野次馬達は話している。
「えっと、コーデリアさん? パートナーにも色んな意味があるわよね? 二人はどんなパートナー関係なのかしら?」
シャミアは果敢に質問していく。ここで負ける訳にはいかないかのように。
「イルミはーー」
嫌な予感がするイルミ。
「コーデーー」
「私が命に代えても守ると決めた相手」
イルミが止める間もなく答えを出してしまったコーデリア。
大盛り上がりを見せる周囲、さらに邪悪なオーラを放ち始めるシャミア。その瞳の奥がうっすら赤みがかっている。
「違う、誤解だシャミア! 多分、お前が思っているような関係では決してない!」
「へぇ、イルミは私が一体どんな誤解をしてると思ってるの?」
「知らん! 知らんけど怖いから一回落ち着け!?」
「辞めて、イルミをいじめないで」
「ややこしくなるから、入ってこないでくれませんか!?」
イルミ、シャミア、コーデリアの三角関係にこれまでにない盛り上がりを見せる。誰も彼も有る事無い事を想像し、妄想してこの場を楽しんでいる。ゴシップには目がない年頃であった。
「一体、なにを騒いでるんだお前達は」
その声が聞こえるとピタリ喧騒が止んだ。
「あ、オリハル」
教室にいる誰かが呟いた。
そう、入ってきたのはオリハルこと強面教師のジークであった。
「おい、シャミアはいるか?」
名前を呼ばれたシャミアはビクッと震える。
「な、何でしょうか?」
「何でしょうか? じゃないだろ。放課後は補習だと言っただろ。レオンは先に指導室に来て待ってるぞ。まさか、サボろうとした訳じゃないだろうな?」
シャミアを見つけたジークはシャミアの元までくる。
「そ、そんな訳ないじゃないですか。でも、ちょっと待って貰えないですかね? 私、今、ちょっと取り込んでて……終わったらすぐに行くので!」
チラリとイルミとコーデリアの方を見る。二人の関係を問い詰めるまでここを離れるつもりはないらしい。
「ダメだ。すぐに連れていく」
「本当にすぐに行きますから! お願いです! 見逃してください!」
「ダメと言ったらダメだ」
オリハルと言うあだ名に恥じない堅物であった。
「どうしてもダメですか?」
折れないシャミア。
「はぁ……わかった」
と、遂にシャミアの頑固さに折れたかと思いきや、
「え、ちょっと先生!?」
軽々とシャミアを持ち上げたかと思いきや、肩に乗せてしまった。
「話が聞けないなら強制的に連れていく。悪く思うなよ」
「ちょ、おろして! セクハラ! 堅物! オリハルコン!!」
「わかった、わかった。全部生徒指導室で聞く。お前らもいつまでも教室に溜まってないで家に帰るように」
そういって、シャミアを担いだままジークは教室を出ていく。
「あの、分かりました! もう抵抗しないんで! 自分で歩かせて! めっちゃ恥ずかしいんですよこの格好! ちょっ、ホントに、降ろしてぇぇ!!」
と、シャミアの悲痛な叫びが遠くから聞こえてき、次第に消えていった。
「じゃあ、帰ろうイルミ」
「あ、はい……」
もう、何かを言う気力も残っていないイルミはただただ頷いてしまうのであった。
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