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更なる戦いへ

最終話です!

 打ち上げが始まってすぐ酒の入ったルディアとリディアがいつも以上のテンションの高さで絡んできたおかげで、イルミ、シャミア、コーデリアの3人揃った時の気まずさはなくなっていた。


 シャミアとコーデリアの様子を見ても二人の間にあったギスギスした雰囲気はなく、イルミがいない間に二人の仲にも変化があったようである。


 普段双子に厳しいルリもハメを外している二人を今日は注意せずにカウンターの端で一人静かにお酒を飲んでいた。


「ねぇルディ兄! あたしもっと強くなりたいよぉぉ!」


「任せろシャミア! また昔みたいに俺が稽古つけてやるよ!」


 お酒が入っていないはずのシャミアも場の雰囲気に充てられたのか、テンション高くルディアと話している。


「えールディアばっかりずるい! ねぇリアちゃん? リアちゃんは私と魔法の勉強したいよね? ね?」


「え、あの、その……」


 逆に酔っ払いについていけていないコーデリアはリディアに絡まれて困った顔を見せる。


「魔法覚えると便利よ~。ねーイー君?」


「え? うん、確かに今回も助けられたけど」


 急に話を振られたイルミは当たり障りなく返答する。確かに助けられたのは本当で魔法を使用できたおかげで切り抜けられた場面は多かった。


「確かにそうね」


 イルミが魔法を使う瞬間を思い出して酔っ払いの話を本気にするコーデリア。


「ねっ! ねっ! そう思うでしょ! そう思うよね~」


「はい、思います」


 肯定されたリディアは「でしょー」と嬉しそうにニコニコとしながらコーデリアに絡みつく。


「あ、あの」


 と、リディアにベタベタされすぎてまた困った顔をするコーデリア。


 こういう場であれば普段なら双子の負担は全てイルミに掛かってくるので、コーデリアには悪いがイルミは助け舟を出さずに見過ごすことにした。


「よー! おいおい! ただ酒飲めるって聞いたんだけど本当か!?」


 閉店の看板を掛けたはずの扉から渋く陽気な声である人物が入ってきた。


「なわけねぇだろ。テメェは金落としていきやがれレイヴァン」


 現れたのはシンドレア学院の学長でありイルミの父であるレイヴァンであった。


「んだよ、打ち上げだって言うから来たのに。まぁいい。じゃあとりあえず酒くれよルリ。いつものやつ」


 一人で飲んでいたルリはやれやれと言った感じではあるが黙って席を立ちレイヴァンのための酒を準備し始める。


「なんでいるんだよ親父」


「なんだよ邪険にしやがって、元気になった息子の様子見に来たってのによ。おっ! ありがとうルリ」


 酒をルリから渡されたレイヴァンは美味そうにその酒を一気にあおった。


「ぷはぁ。まぁ落ち着けよ反抗期息子。お前達の為に良いモノ持ってきてやったんだからよ」


「俺達……?」


 そう言ってレイヴァンは持っていた袋からゴソゴソと綺麗な宝石玉を二つ取り出した。


「わー何それ、綺麗~」


 と、リディアが取り出した宝石玉に食いつく。ようやくリディアから解放されたコーデリアはホッとした様子を見せる。


「で、何だよそれ?」


「この前の大会の優勝賞品だよ。せっかくの表彰式にお前ら気絶して、どっちもいなかったからずっと渡しそびれてたんだよ」


「宝石?」


 イルミも少し興味を持ったようでレイヴァンの手に持っている宝石を見る。確かにそれ程宝石に興味がないイルミが見ても美しいと思えた。ただネリルが欲しがりそうと言うくらいの感想しかそれ以上は出てこなかった。


「ま、まだおこちゃまのお前には価値が分からねえだろうがな」


 確かによく分からないイルミだが、そう言う言われ方をするとカチンと来るものがある。


「もういいから渡せよ親父」


 これ以上ベラベラと話されてもイラつくだけと考えたイルミは早くよこせとレイヴァンに手を伸ばす。


「なんだよせっかちだな。ほら受け取れ――おっと」


「――は?」


 イルミの中で一瞬時が止まる。それは周囲にいた誰もが同じで誰一人として動けなくなる。全員が静止する中でレイヴァンの手から零れ、イルミの手に渡らず地面へと真っ直ぐ落ちていく宝石玉だけが下へと動いていた。


――ガシャンッ


 と、派手に音を立てて宝石玉が割れる。


「おっとやっちまった」


 大してやってしまった感のない言い方をするレイヴァンに


「やっちまったじゃねえよクソ親父! もう酔っぱらってやがんのかよ?」


 と、盛大に切れる息子のイルミ。


「馬鹿、これくらいで俺が酔うかよ。しかし、どうするか。二つしか用意してないってのに一つ壊れちまったな」


「あーもう、いいよ俺のは。どうせ価値の分からねえモノだし。リアに渡してくれれば。そういう宝石は女の子が持っていた方がいいだろ?」


 元々興味の薄いイルミは一つになってしまった宝石をコーデリアに渡したらどうかと提案する。


「私も興味ない。イルミがいらないというなら私もいらない」


 と受け取りを断ってしまう。コーデリアらしい回答だった。


「んーでもなぁ。せっかくの商品を渡さないってのは頑張ってきた他の生徒達にも失礼になるしなぁー。んーどうしよっかなぁー」


 何かワザとらしいレイヴァンの言い方にイルミは嫌な予感がする。


「おい、親父――」


「あ、そうだこうしよう――お前らで模擬戦して勝った方が真の優勝者って事で」


「俺とリアで模擬戦……?」


 言いながらコーデリアの方を見るイルミ。コーデリアも驚いている様で彼女もイルミの方を見

て少し目が見開かれていた。


「それなら誰も文句がないだろ? なぁそうだろ? イルミ?」


 ニヤッと息子のイルミを見るレイヴァン。その顔を見て全てを察するイルミ。


「このクソ親父……!」



――この学校で『最強』なればいい




 イベントの開催を聞かされてコーデリアと組むように言われた日にレイヴァンから言われた事をイルミは思い出していた。


 最初からこれがレイヴァンのシナリオだったという訳であった。


「つう訳だ。それでいいか二人とも」


 学校で最強になる。


 それが英雄になる通過点。


 その為に倒すべき相手。


「俺はいいよリア。俺はリアと戦いたい」


「私も……貴方と戦ってみたかった」


 最初は半信半疑だったイルミの実力。一緒に居る事で知った本当の実力。


 守るべき対象から信頼できるパートナーとなったイルミと戦いたい。


 その感情はコーデリアの中にも生まれていた。


「じゃ、決定でいいな」


 父親の思い通りに事が進むのが少し癪ではあるが、この機会を与えてくれたのは素直に感謝する。


 英雄への憧れ。その思いにイルミは更に熱く滾らせるのであった。


読んで頂きありがとうございます!回収していない伏線もあり、続きのある終わり方ですが第一部の完結とさせて頂きます!他のお話を書きつつまた続きも考えて行こうと思います!最後まで読んで頂き本当にありがとうございました!

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