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『双児宮』にて

「いらっしゃいませ」


 二人が『双児宮』の扉を開けた時、すぐ近くに居た『双児宮』の制服を着た少女が無表情で言う。


「あ、あれ? 何でここにいるの?」


「なんで……? ここが私のバイト先だから?」


 何をおかしな事を言っているのかと逆に問うように、先に『双児宮』で働いていたコーデリアは言う。


「お、帰って来たかいイルミ。怪我は大丈夫なのかい?」


 と、玄関先が騒がしくなったのを聞きつけ『双児宮』のオーナーであるルリがキッチンの奥から出てきた。


「怪我はもう何ともないよ……えっと、ルリさん何でリアがここに?」


「お前が怪我して店に出られないから代わりに働いてくれてたんだよ。代わりと言うにはまだ使い物にならないくらいの荒い仕事ぶりだけど。まぁそこは二人で頑張って補っていたよ」


「二人?」


 コーデリアともう一人は誰だろうと考えを巡らせる。


「アンタ重体だったから私に出来る事なかったし、せめてお店の手伝いくらい代わりにしてあげられないかなと思って……」


 イルミが答えを出す前に、答えの正体であるシャミアが自ら話し始めた。


「え、でもシャミア、不器用だからって――」


「む、昔と一緒にしないで頂戴! 私だって配膳くらい出来るんだから!」


「でも、一緒にここで働こうとして一日で記録的な枚数の皿を割った上によって絡んできた客を力加減間違えて怪我させたり散々な問題を起こした上で迷惑をかけるからって辞めたのに? 大丈夫だったの?」


 イルミはシャミアに聞かずに後ろに居るルリの方に問い掛けた。


「まぁ、だから、あれだ。頑張ってはいたさね」


 と答えを濁しながらルリは再びキッチンの中へと戻って行った。彼女の濁した答えが真相の全てであった。


「あ、あはは……」


 とイルミも苦笑いをするしかなかった。


「でもだぜイー坊! シャミアはシャミアなりにイー坊の事を想って一生懸命に働いていたんだぜ!?」


「そーよイー君! それに二人ともアナタの事を想って頑張ったんだから! フフッ、この色男~」


 玄関から離れた所で仕事をしていた『双児宮』名物の双子、ルディアとリディアが我慢できずに揃って会話に混ざってきた。


「や、やめてよ! ルディ兄! リディ姉!」


 恥ずかしがるシャミア。イルミと同じく双子との関係が長いシャミアも二人の事をイルミと同じように『ルディ兄』と『リディ姉』と呼んでいた。


「しかし、心配したぜイー坊。意識不明だって聞いた時は俺達も心配で駆け付けそうになったんだぜ?」


「メル先生が診てるって聞いたから任せたけど、ホントに心配したんだから」


 二人もシンドレア学院の元生徒であったため、メルのヒーラーとしての実力はよくわかっているようであった。


「ま、でも今日は安静にしてゆっくり休んでろよイー坊」


「どうせお店も早く閉めちゃう予定だから、私達に任せておきなさい」


 「ねー」と柔らかな笑みでシャミアとコーデリアを見るリディア。それに、コクリと何ともないように頷くコーデリアに対して、「う、うん」と自信なさげにシャミアは答える。


「あれ、どうして今日は早く店を閉めるの?」


「そりゃイー君の快気祝いとイー君とリアちゃんの優勝おめでとう会をするからよ。だから、楽しみに待ってて」


 と、言われ納得したイルミ。


 お言葉に甘えて店の奥で店が終わるのを待っていようと思ったが、店が開店してものの数分でシャミアとコーデリアの働きぶりをみたイルミが居てもたってもいられなくなり、結局、出勤してしまうのであった。

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