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シャミアVSコーデリア 決着、そして

――まずい


 目が赤くなってから明らかに破壊力が増したシャミアの攻撃。ただ冷静さを欠いているため、酷く直線的な攻撃になっている。余程、不意を突かれない限りは。先程のように一撃を貰う事もない。


 しかし、それでもコーデリアは攻めの手がなく、困っていた。


 それは、コーデリアの基本的な戦術が関係していた。


 肉を切らせて骨を切る、それがコーデリアの戦術だった。


 自身の圧倒的な防御力を楯にしながら攻撃する。隙が大きいが攻撃力の高い大剣を選んだのも、自慢の防御力があったからこそであった。


 しかし、現在のシャミアの攻撃力はコーデリアの受けるダメージの許容範囲を超えていた。


 最強の矛と最強の盾、拮抗していた攻撃力と防御力のバランスがシャミアに傾きつつあった。


 ただ、基本戦術が通用しないとは言え、レベルの差によるステータスの差は健在であり、まだコーデリアに有利だと言える。


 力が上がったとは言え、駆け引きも何もない単純なごり押しであれば、避けるのは容易い。


 後は、どうやって攻撃の隙を作るかであった。


 攻撃力のある大剣だがシャミアの攻撃力を上回る事までにはいかない。そのため、もし攻撃を当てそこなう、もしくは当てたとしても耐えられれば致命傷が飛んでくるのは自分の方である。


 攻撃が最大の防御とはよく言ったものだとコーデリアは思う。


 圧倒的な力と言うのはそこに存在するだけで警戒を余儀なくさせる。


 自分も見習うべきかもしれないと真面目に考えるコーデリアだが、それは今すぐ出来るものでもない。


――今できる事を、最大限に


 コーデリアは向かってくるシャミアに逆に突っ込んだ。


 今まで受けの姿勢であったコーデリアがここに来て一転、自ら攻勢に出たのだった。


 驚きを見せたシャミアだが向かってくるコーデリアに向けて真っ赤に燃える拳を突き出した。


 ダンッという衝突音が鳴る。


「く、っそ!」


 ギリっと悔しそうに歯を噛締めるシャミア。彼女の拳がコーデリアの大剣にきっちり受け止められていたからであった。


 先程、衝突したときは吹き飛ばされたコーデリアだったが、今度は踏み止まっていた。


 コーデリアの狙いは二つだった。


 まず、シャミアに溜めを作らせない事、そして自分の助走をつける事であった。


 シャミアの化け物じみた破壊力を生み出す要因の一つに、大きな溜めを作る事があると考えたコーデリアはシャミアが満足な溜めを作ってしまう前に、その距離を詰めたのだった。そして、それと同時に自分の助走距離を確保し勢いに乗せた大剣はシャミアの拳と拮抗させたのだった。


 距離を詰めたコーデリアは間髪入れずにシャミアに対して大剣を振る。


「舐ッめんな!」


 間合いも近く振りも大きい大剣の攻撃にシャミアが反応出来ない訳がなく、あっさりと向って来る大剣を殴り飛ばした。


本当にあっさりと、意図も簡単に、手応えなく。


 コーデリアの持つ大剣は彼女の手元から離れ、勢いよく殴られた方へと飛んで行った。


 衝突の直前にあろう事かコーデリアは大剣から手を離したのだった。


 予想外の出来事、軽い物を重たい物ように騙された感覚。


 シャミアが想像していた反発がなく、全力で空を切った拳に振り回されたシャミアは態勢を大きく崩す。


 そして、コーデリアは大剣を離して自由になった右手を握り姿勢を崩したシャミアの顔面を逆にぶん殴った。「ぶっ」


 武器がなくとも十分な「力」を持つコーデリアのパンチはシャミアのHPをさらに削り残り2割程まで削る。


 殴られよろけるシャミアだが、状況を理解したのか、それともただ頭に血が上って無意識的に行動したのかは分からない、だが彼女はまだ殴られたダメージが残っているにも拘らず、コーデリアに殴りかかる。


 素手の『最強最悪』の女同士のぶん殴り合いが始まったのだった。


 普段から拳で戦っているシャミアの方が明らかに分のある戦いのようであるが、シャミアの惜しむべきは、思考するだけの理性が既に残っていない事であった。


 怒りのままに、ムカつく目の前の女をぶん殴る事で彼女の頭の中は支配されていた。


「ぁぁぁぁ!!」


 叫びながら突っ込むシャミア。しかし、武器なしとはいえ学園一実力者であるコーデリアにその拳は届かない。


 しかし、 その力は凄まじくコーデリアでさえガード越しからでもダメージを食らっており、普通の生徒

であればきっと力のごり押しで成すすべなくやられていた事は想像に難くない。


 ただ、現在、目の前でシャミアが相手にしているのは――学園最強であった。


 手数ではシャミアの方が上だが、駆け引きもなにもない直線的な攻撃をコーデリアは捌き切り、シャミアの残った2割のHPをじわじわと削る。


「くそ! ちくしょう! ぶっ殺す!」


 叫んでも、憤っても、届かない。


 彼女にも、彼にも。


「ふっざけんなぁぁぁ!!」


 怒り任せに遂に大きく振り被る拳。


 軌道をあっさり見切ったコーデリアは首を逸らして拳を避け、相手の勢いを利用しカウンターのパンチを打つ。


 綺麗に顔面にヒットした拳はシャミアを5m程後ろに吹き飛ばし、HPをゼロにした。


「……勝った」


 息を切らせてそう呟くシャミアのHPは2割程まで減少していた。


 一見、有利そうに戦いを進めているようではあったが、もし一発でもシャミアの拳がマトモに当たっていたら負けていたのは自分だったとコーデリアは思う。


 倒れたシャミアのHPがなくなったのを確認したシャミアは自分のポーションを確認する。


 まだ変色はしていない。向こうの勝負が終わってないか、もしくはイルミが負けている――


 いやいや、と、悪い想像を振り払うシャミア。


 とにかく、すぐにイルミの居る場所まで戻ろうと吹っ飛ばされた大剣を取りに倒れたシャミアに背負向ける。


「――す」


「――⁉」


 咄嗟に振り向いた。声が聞こえたからだけではない。かつて対峙したどんな凶暴な魔物からも受けた事のない『殺気』を感じ取ったからだ。


「殺す」


 こんどはハッキリと聞こえる。倒され動かなくなったはずのシャミアの拳から再び炎が燃え上がる。


 その燃える手を支えにゆらりと状態を起こし始めるシャミア。


 そして完全に立ち上がったシャミアの目は虚ろで赤色を超えて赤黒い濁りを見せる。


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す」


 呪いの言葉を連呼しながら濁った眼でコーデリアを見据える。


――ぶっ殺す


 その声と共にシャミアの拳から全身にかけて炎が包みこんだ。


「これって」


――【暴君の加護】の暴走!


 急いで飛ばされた大剣の位置に目をやるコーデリア。


 そして、次にシャミアがいた所に視線を戻すと――もう目前には、赤く燃え滾るシャミアが拳を振り上げている姿をとらえ、そこでコーデリアの意識は途切れるのであった。


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