シャミアVSコーデリア ②
「はぁはぁ……クソッ!」
コーデリアから距離を取ったシャミアは荒れた息を整えながら汚い言葉を吐く。
対するコーデリアは何一つ変わらず無表情のまま。その余裕の差はHPの差にも現れる。シャミアは5割程減っているのに対し、コーデリアは4割程とじわじわと差が開いている。
初撃こそ互いに打ち合った彼女たちだったが、それ以降重たい一撃を食らわせる事が出来ないシャミア。
かと言ってコーデリアもシャミアに強い一撃を与える事は出来ていない。
どちらも決定打を当てられない。最初に受けたダメージを考慮してかどちらも防御が固くなっているため、ほんの僅かな隙に軽い攻撃を入れる事しか出来ない。
それでもジワジワとHPの差が広がっているのはステータスに原因があった。
力で勝っているシャミアだが、耐久の方はお世辞にも高いとは言えない。逆にコーデリアのステータスは耐久よりであり、シャミアの方が勝っているとは言え力もトップクラス。
HPに差が生まれるのは自明の理であった。
――このままじゃ負ける……
シャミアもそれは理解していた。このままただ殴り合うだけでは勝てない事に。
「負ける……」
改めてそう口にした時、シャミアの腹の中にマグマが込み上げてくるような熱と吐き気を感じる。
心臓が脈打ち、頭に血が上っていく。
「嫌だ」
過ってしまった敗北した未来。
「アイツの隣にいるのは私だ。居ていいのは私だけだ」
誰にも譲らない、譲る訳にはいかない。
今までも、これからも、誰にも。
「――ぶっ殺す」
そう言うシャミアの目は赤く充血している。【暴君の加護】の影響が出始めていた。
グローブを握り締め、拳を作ったシャミアは再びコーデリアに向かって行く。
相も変わらず直線的な動きで突っ込むシャミアだが、今までとは決定的に違うものがあった。
攻撃の溜めであった。
シャミアは拳を振りかぶっていた。そこには防御なんて考えは微塵もないと事を表していた。
目と同じく赤く燃える振り被ったシャミアの拳を同じように、大剣で受けようとするコーデリア。
「――!!」
しかし、衝突の直前に大剣を引き、コーデリアは回避行動を取る。
――ドカンッ!
と爆発音が鳴り響く。勢い余ったシャミアの拳は地面に衝突し小さなクレーターを作った。
その光景に流石のコーデリアも冷や汗を掻く。
受け止めていたら確実に飛ばされていたと肝を冷すコーデリアだが
「避けんな!」
めちゃくちゃな事を言うシャミアは追い打ちをかける様にコーデリアに殴りかかる。
今度は避けきれないと悟ったコーデリアは大剣で防御の耐性を取る。
「くぅ」
シャミアの重い一撃は、コーデリアの予想通りに体を宙に浮かし、勢いよく後方の木へとぶつけられる。
「かはっ」
と、衝撃で肺から空気が漏れでるコーデリア。シャミアの残りHPよりも少し減らされる。
明らかに力が増しているシャミアに危機感を覚えるコーデリアはすぐに耐性を立て直そうとするが、目前までシャミアが突っ込んできている。
直前で避ける事に成功したが、その代わりにコーデリアを受け止めた気はバキバキと音を鳴らして倒れていく。
シャミアは止まらない。
頭の中は目の前の敵を殴り倒す事以外もう何も考えていない。
「アンタを殺す――ぶち殺す‼」
殺意に飲まれ冷静さを欠いたシャミアはその滾る思いを拳に乗せるのであった。




