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イルミVSレオン ②

――あぁ……やっぱり、驚いてやがる……。


 レオンは攻撃の手を緩める事なく、防御に専念するイルミについて考える。


――まぁ、そうだろうな。


 これに関しては仕方のない事だとレオンは思う。


 あれだけ【Lv.1】だと見下していながら、自分が全開で勝負を仕掛けてくると思わないだろうと。


 急なレオンの全力に面食らうイルミだったが、レオンからすればそれは当然の事であった。


 それは嫌いな奴を叩きのめしたいとか、二度と立ち直れない位にぶっ潰したいとか、そんな意地悪な感情からくるものではない。ただ、【Lv.1】であるイルミの、彼の実力をレオンが知っているからに他ならなかった。


 今回のイベントのパートナーである、シャミアの次にイルミについて詳しいと言って良いほどに、レオンはイルミの実力を理解していた。嫌と言うほどに、うんざりする程に。その努力を、実力を認めざるを得ない程に。


 レオンはイルミを知っていた。


――知らねぇだろ。お前と一緒にいない時のアイツがどれだけ鬱陶しいか。


 いつかネリルが言っていた。イルミの事になると喧嘩になるシャミアとレオンだが、意外と仲がいいと。学外授業の時は二人で行動している事が多いと。


――俺の身にもなれ。お前の自慢話を永遠と聞かされる俺の身に。


 学外授業の際にある移動の最中も、休憩している時も、シャミアは常にイルミの事を嬉しそうにレオンに話すのだった。それをウンザリしながら、イラつきながら、レオンは何度も聞かされていた。


 だから知っている。


 イルミが何をしてきたのかも、何をしているのかも、何をしようとしているのかも、全て知っている。


 実際にイルミが努力している現場を見た訳でもない。ただ聞いただけ。それだけで【Lv.1】のイルミが強いという事をレオンは信じた。


 誰からの話でもない、シャミアの話だったから。


――ムカつくに決まってるだろ、そんなの。


 レオンは毎日のように思い出す事があった。


 それは入学してすぐの事だった。貴族出身であり戦闘の英才訓練を受けていたレオンは鼻を伸ばしていた。周囲に実力を認められ、力を示し、とりまきにチヤホヤされていたレオンは調子に乗っていた。しかし――


 それは、ある模擬戦があった日の事だった。その調子に乗ったレオンの鼻っ柱を圧倒的な暴力で叩き折ったのがシャミアであった。


 初めて同年代の、それも女の子にボコボコにされ泣きじゃくったレオン。思い出すだけで情けなく恥ずかしくて死にたくなるような記憶。


 その記憶に悶えながら、奥歯を噛締めながら、悔しさに喘ぎながらも、毎日思い出していた。


 しかし、その記憶の中にある、負けた悔しさも、ボロボロに泣いた無様な姿も、砕けちったプライドもレオンの今日を作っている。学年でトップクラスを維持するレオンの強さを形成してきた。


 それもこれも、シャミアに振り向いて貰うために。


 彼女に負けたその日から、レオンに取ってシャミアはライバルとなり、目標となり――思い人となった。


 しかし、自身がどれだけ強くなろうと、力を示そうと彼女の関心を受ける事が出来なかった。


 それは、いつまで経っても邪魔な存在がいたからであった。


――だから、ちょっとの悪態くらい吐かせやがれ。


 どれだけ時間を過ごそうとも、シャミアが見ているのは常に一人しかいない。


 隣で負けじと実力をつけている人間がいるのにも関わらず、彼女は自分ではない誰かを見て努力をしている。


 コチラに見向きもしない。自分に対して何の関心もない。


――だから俺はお前を否定してるんだよ


 彼女が信じているモノを。英雄に憧れる【Lv.1】の事を。


 お前には無理だと、そんなのは夢物語だと、教えてやればいい。諦めさせればいい。


 希望を断てば、自分が新たな希望に成り代われるかも、と。


 何の因果か分からないが、シャミアとチームを組む事が出来たうえに、こうしてイルミと相対している。


 シャミアはイルミに誰が隣にいるのがふさわしいか分からせるために出場すると言っていたが、それはレオンも同じであった。


――分からせてやるよ……!


 レオンは自分のために剣を振るう。


「やっぱ、そんなもんかよ! 【Lv.1】の雑魚が!」


 己の傲慢を通すために。


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