表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/57

学長室にて

第4話です!

学長に呼ばれたイルミは学長室に向かっていた。学長室とは言っても、部屋というより、家であり、シンドレア学院の所有している広大な敷地の中に学校棟から少し離れた場所にポツンと建っている一軒家が、学長室と呼ばれる場所であった。


 教師達は建前上、『学長室』と呼んでいるが、生徒達からは『学長先生のお家』や『学長の家』やら、部屋というよりも学長であるレイヴァンの家扱いされていた。実際、学長室で寝泊まりをレイヴァンはしているようなので、あながち間違いではないようである。


(そういえば、腹が減った……)


 どさくさで忘れていたが、イルミは自分の弁当をシャミアに全て食べられた事を空腹で思い出した。


「…………」


 イルミはキョロキョロと周りを確認する。周囲に誰もいないかを見ているようであった。


 人影一つない景色。


 念入りに見渡したイルミは手の平を上に向け開く、するとーー


 「ポンっ」と何もない所から、数枚の美味しそうな焼き菓子がイルミの手の平の上に現れたのであった。


 それをイルミは摘んで一つずつ食べていく。イルミの口の中に甘い匂いが広がる。次々と口に運でいくと、ものの数舜で現れた焼き菓子を食べ終えてしまった。


 そして数枚の焼き菓子では物足りなかったのか、イルミは再び手を開くと今度は甘そうなショートケーキが現れる。


 手掴みで端ないと思いつつ、それを気にして食べられないほど、繊細な心も持ち合わせていないイルミはパクパクと現れたケーキを食べてしまう。


 ペロリと食べてしまったイルミは手に少し付いてしまったクリーム舐めとった。


 ある程度、満足したイルミ。食べている間にどうやら学長室に着いたようであった。


 イルミはコンコンとドアをノックすると、


「空いてるから、入っていいぞ」


 と中から声が聞こえた。その声を聞いてイルミは


「失礼します」


 と言い学長室のドアをあけ中へと入る。そこにはソファに寝っ転がってくつろいでいる髭面の男がいた。イルミの眉毛がピクリと動く。


「あのジーク先生にシンドレア学長がお呼びだと聞いて来たのですが?」


「くっ、ダハハハ! なんだお前、畏まった言い方しやがって! 似合わねえの!」


 ピクピクとイルミの眉毛が更に動く。


「い、一応、学校なので学長先生を立てるべきかと」


「いらんいらん。子供のくせに気を遣い過ぎだっつうの、気持ち悪い」


 イラァという音が聞こえた気がした。


「お前は大人のくせに気を遣わな過ぎなんだよクソ親父! 入ってきたのが俺じゃなかったらどうすんだよ!」


「本性表しやがったなクソ坊主! その時はその時だっつうの! 大体、俺は元々学長なんて気取った地位は似合わねえの」


「開き直ってるんじゃねえよ。世界の英雄がこんなダラけたおっさんだって知ったらガッカリするぞ!」


「そんなの勝手にしてろよ、英雄に勝手な幻想を抱いてんじゃ……ん?」


 口論の途中でレイヴァンはある事に気付いて止まる。


「おい、クソ坊主。お前また勝手にあの能力を使っただろ?」


「な、何の事だよ?」


 能力とは、先程イルミが何もない所からお菓子を出した力を指しているのだろう。急に問い詰められたイルミはシラを切ろうとする。


「口元にクリームついてるぞ?」


「え?」


 急いで口元を拭うと生クリームが取れる。決定的証拠がそこにはあった。


「外でその能力を使うなって、あれだけ言っただろ!?」


「ちゃ、ちゃんと誰もいないか確認したって。探知のスキルも使って」


 悪い事をした自覚はあるのか反抗の言葉に力がない。


「隠密のスキルだってあるんだよ。お前以上のスキルを持つ奴なんてゴロゴロいるんだぞ?」


「大体、こんなお菓子を生み出す能力なんて、世間にバレたからって何になるっていうんだよ?」


「何度も説明してるだろ? 存在しないんだよそんな能力。スキルにも魔法にも、そんな事が出来る力なんてないんだよ。分かるか? お前はタダでさえ危うい立ち位置なんだよ。そんな意味不明な能力までバレてみろ、今度は俺でも庇いきれないぞ?」


「…………」


 本気で怒っている、それも自分を心配してのレイヴァンの説教にイルミはついに何の反抗も出来なくなる。


「全く、ちゃんと反省しろ……。茶くらい出してやるからそこに座ってろ」


 怒りも引っ込んだのか、レイヴァンは台所まで行ってお湯を沸かしに向かう。


 イルミは怒られた事に少しだけションボリしながら言われた通りにソファに座った。


「確かまだ残ってた気がするんだが……」


 お湯を沸かしている間にレイヴァンはガサガサと台所の戸棚を漁っている。


「ん? あれ? もしかして全部食べたんだっけ?」


「…………?」


 何かを探している様子のレイヴァン。次第に諦めてソファで座ってるイルミの元へ擦り寄ってくる。


「ねぇ、イルミ君? 悪いんだけど、お茶菓子出してくれない?」


「はっ倒すぞクソ親父」


 どっちもどっちな親子であった。

読んで頂きありがとうございます!毎日21時に投稿していくのでブックマークを押して頂ければ嬉しいです!またYouTubeにて『熱き漢たかの熱唱熱遊ch』にてゲーム実況をしているので良ければ遊びに来てください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ