反省会
第39話です!
「――て言うのが、ダリル君達の作戦だったんだと思う」
エリアが収縮する前に次のエリアに間に合ったイルミはコーデリアにダリル達の作戦を説明していた。大まかな内容はダリルが言っていた事と同じであった。
「一人いなかったんだ。気付かなかった……」
「戦闘中だったからね、気付かないのも無理はないと思う――というか、それよりだよ! リア!」
と、イルミは何かコーデリアに不満があるようであった。
「演技下手過ぎだよ!」
「……ごめん」
自覚はあったようでコーデリアは素直に謝る。イルミに途中「喋るな」と言われた意味を理解していたようであった。かなり申し訳なさそうな表情をしているがイルミは止まらない。
「勘付いているのバレないか冷や冷やしたよ! それに、俺がやられた振りをする前に戦闘しようとするし、俺が魔法で吹っ飛んだ時も本気で俺の元まで駆け寄ろうとしてたでしょ!?」
「イルミが馬鹿にされてたし……反射的に体が動いちゃって……」
「うっ」と、反省している様子のコーデリアに言い過ぎたかもと思うイルミ。それに、どれも自分の事を想っての行動であるため、説教したのが逆に申し訳なくなるイルミ。
「ま、まぁ狙い通り、俺を最初に奇襲をしてきたし、バレてなかったから。ごめん、ちょっと言い過ぎたよ」
「いや、私が悪い。イルミの作戦を壊す所だった」
本気で反省しているコーデリアを見て、少しいたたまれない気持ちになってきたイルミはフォローを入れる。
「作戦なんて言うほどのものじゃないよ。作戦っていうのはダリル君達がしていた事を言うんだよ。俺のは行き当たりバッタリも良い所だったしね。ダリル君も、もしかしたらザイツ君と同じように最初に【Lv.1】の俺から倒そうするかも、なんて、確証も何もなかったからね」
「でも、その考えがなかったら私達も失格しているかもしれない」
「それは、そうかもね」
イルミがやられた振りをしたのは、相手を欺くというよりも、あの場の状況判断を的確にするという目的の方が大きかった。相手の人数、持っている武器、パーティー構成、作戦、それらをまず把握する必要があった。
入念な準備をして来ていると予想出来る相手に、何も考えずに自分とコーデリアの力でゴリ押すというのはあまりに無謀だと判断したイルミは、コーデリアの力を信じて相手の分析が出来るまでの時間を稼がせたのであった。
そして、【探知】などを駆使して隠れた人物がいない事を確認し、一人少ない理由からダリルの作戦を予想したイルミは逆に奇襲を行ったのであった。
結果的には奇襲がなくとも、コーデリアと力を合わせていれば、時間稼ぎもする余裕を与えず、突破出来ていた可能性は高かったが、完全に相手の状況を把握していなかったため、その判断が正しかったと言える。
「でも、ダリル君には裏切りとか騙すのは英雄らしくないって言って、やられた振りをしたのは納得いってないっていうか、もっと正々堂々と相手した方が良かったのかなって思うんだよね」
コーデリアの裏切りを提案してきた時に断る文句として「英雄らしくないから」と、イルミはそう発言していた。
「そんな事ない」
そうコーデリアは言う。
「人数不利の逆境を策で覆すなんて、英雄譚の一幕らしいと思う」
その言葉にイルミは少し照れたように「あはは」と笑い。
「モノは言いようかもね」
と、照れ隠しをするように言うのだった。
「そういえば、まだダリル君のチームメイトの一人がどこかに残っているはずだけど、どこかに隠れているのかな?」
作戦の中核が破綻してしまったため、まだダリル達を信じてどこかに潜んでいるかもしれないとイルミは思う。
しかし、特に危険も無さそうなので探す気がないイルミはそのまま放置する事にするのだった。
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