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ダリル達の作戦

第36話です!

「行くぞ!」


 ダリルの掛け声と共に動き出す。持っている武器はバラバラで、各々が得意武器を使用しているようであった。


 最初はリーダーであるダリルが率先してコーデリアに突っ込んでいく。手に持った摸造刀を構え果敢にコーデリアに向かっていき。刀を振り下ろす、が、コーデリアの大剣にあっさりと受けられてしまう。


 しかし、間髪入れずに別の生徒の攻撃が次々と繰り出されていく。


 剣が、メイスが、ハンマーが、拳が、槍が、刀が。


 コーデリアに近接攻撃に行う生徒は誰一人として深追いはせずに、一撃防がれたら下がるを繰り返していた。


 かなりの手数を繰り出すダリル達だが、コーデリアのHPバーは一向に変化を見せない。接近戦を挑み、攻撃を浴びせるが決定的な一撃が入らない。


 かすめる程度の軽い攻撃ならば数発くらいは入っているが、その程度では誰一人としてコーデリアの防御力を貫く事が出来ていないのであった。


 しかし、HPバーは減らずともコーデリアの体力は徐々に減らす、それこそが彼らにとって重要な事であった。元々、簡単に勝てる相手ではない事はダリル達も理解している。


 だから徒党を組んだ。姑息かもしれない、だが、この理不尽に抗うために死力を尽くしているのだった――それでも


「化け物が……」


 思わずダリルは苦い表情で呟く。


 これだけ大人数を相手にしているにも関わらず、コーデリアは息一つ切らす事なく変わらず凛とした表情でダリル達に相対している。


 むしろ、一撃も食らう事が許されないという緊張感も相まってか、体力の消耗はダリル達側の方が多いように感じられる。


「ダリル! 行けるよ」


 近接戦闘に加わらず、後方に構えていた三人の内の一人、ヴァ―リと呼ばれていた少女がダリルに声を掛ける。


「――よしっ! お前ら!」


 そう言うと、今まで一人ずつ丁寧に攻撃していたダリル達が、一斉にコーデリアに襲い掛かる。


 先程のような綺麗な連携は見られないが、物量作戦に出たダリル達。しかし、それをモノともしないコーデリアの圧倒的実力。


 団子状態となったコーデリアは対応を変える。ただ単に周囲にいる相手に向け、力任せに大剣をぶん回したのであった。


 大剣のリーチと攻撃力に注視した攻撃。でたらめに振ったとは言え、広範囲に渡る大剣の一振りを避けきれずに、ハンマーと槍を持った生徒に直撃する。


 でたらめに振り回しただけの攻撃、直撃とは言えHPバーをゼロにするまでには至らない。しかし、あと一撃かすめただけで退場となるであろう所までその値を減らした。


「今っ!」


 と、味方が致命傷を負った事を知りつつもダリルは後方に合図を出す。


「「【アイシーフレイム】!!」」


 と、顔が瓜二つの双子の女子生徒が、片方は魔導書を広げ、片方は杖を掲げ、同時に叫ぶ。


 双子が放つ魔法は絡み合い、氷と炎が美しくコントラストを描いた魔法がコーデリアに向かって飛んでいく。


 それまで見た彼らのどの攻撃よりも強力そうなその魔法攻撃に対して急いで回避行動を取ろうとする――が


「――!」


 先程攻撃を浴びせHPバーが残り少なくなった二人の生徒がコーデリアにしがみつき動きを止めるのであった。


「離さねえぞ、コーデリア!」


「悪いけど、一緒に食らって貰うぞ!」


 コーデリアは急いで振り払おうとするが、予想外の捨て身の行動に何も出来ずに、ついには直撃してしまう。


 激しい爆風が起こり、周囲の木々の葉を鳴らす。


「――やったか?」


 メイスを持った男子生徒がそう呟く。


「そんな甘い訳ないだろ……相手は――あのサスフィールだぞ」


 ダリルは何一つ気を抜かない様子で言う。


 魔法によって巻き起こった砂煙の中からコーデリアは変わらず凛とした表情で現れる。


「おいおい、せめて半分くらいは減ってくれよ……」


 強烈な魔法が直撃したコーデリアのHPバーは確かに減っていた、が、その値――わずか4分の1程度。


 完全に砂煙が消えた後ろにはコーデリアの足止めをした二人はHPバーが消えたどころか、完全に気を失って倒れていた。


「もう一回だ。お前ら、ここが踏ん張り時だぞ! ロンとポンはポーションを飲んで複合魔法の準備! もっと強力な奴をお見舞いしてやれ!」


「「了解!」」


 元気よく返事をした二人。コーデリアの足止めをした二人組を最後に倒した事で得られたボーナスのポーションを飲みほし再び魔法を練り始める双子。


「厄介ね……」


 コーデリアが呟く。自分のHPをここまで削った魔法。その魔法よりも今度は更に強力な魔法を放とうとしている。それに加えボーナスポーションで強化された魔法で攻撃されるとなると、直撃すれば今度こそ致命傷は免れないと考える。


――なら


 今まで受け身であったコーデリアが動き出す。


 二人減った事で前衛を担うのは4人だけとなり、先程よりも手薄となっていた。そこを突き、包囲網をコーデリアは無理矢理突破し、魔法を練る双子に突進していく。


「まぁ、そう来るわよね!」


 と、ずっと双子の傍にいたヴァ―リが遂に動き出し。コーデリアの前に立ち塞がり進行を止める。手に持った大鎌を器用に使いこなし、コーデリアの攻撃をいなしていく。


――この子、強い


「悪い、ヴァ―リ!」


 一瞬ではあったが足止めに成功したおかげで、ダリル達の応援が間に合い、再び双子の魔法使いと距離を離される。


「そう簡単にはやらせねえよ。あの双子は僕等の攻撃の要なんだ。僕が一番信頼を置いている仲間を付けておくのは当然だろ?」


 ヴァ―リは得意そうな笑顔を浮かべ、今度は双子と近接攻撃部隊の間にポジションを取る。近接戦闘をする人数が少なくなった事でどちらもカバー出来る場所に移動したのだろうとコーデリアは考える。


 なるほど、とコーデリアは思う。


 前衛の数人で時間稼ぎをし、その間に大きな一撃の準備をする。準備が整えば特攻してHPが減れば、捨て身の覚悟でその一撃を食らわせに来る。しかも、味方に味方を倒させることで回復ポーションをコーデリアに渡さない所まで計算されている。


 次の彼らの一撃が勝負の分かれ目になるだろうと予測するコーデリア。となれば、次の魔法攻撃は二人とは言わず、可能な限りの人員、もしかすると、ダリル以外の全員で魔法を当てるために自らを犠牲にする可能性もあるという事だ。


――なるほど、本当に……


「よく出来た作戦だね」


「「え?」」


 背後から突然聞こえた声に驚く双子。


「ごめんね」


 と、謝りながら手に持った模擬専用の短刀で的確に双子の急所である首元に攻撃を当て一瞬にしてHPをゼロにする。


「――は?」


 と、理解の追い付かないダリル。それは他の仲間達も同じであり、仲間の双子がやられるのを呆然と見ていた。見てしまった。目を離してしまった。


 その隙をコーデリアは見逃さない。


「ぐっ!?」「がっ!?」


 一瞬の内に向かって来ていた、生徒二人にコーデリアは大剣を振り抜きHPをゼロにし、すぐさまダリルへと攻撃を仕掛ける。


「ダリル!」


 しかし、双子がやられたショックからいち早く抜け出した大鎌を持ったヴァ―リがダリルのカバーに間に合う。そこでハッとなったダリルはヴァ―リに続いてコーデリアに攻撃を仕掛けるが、後ろに退いたコーデリアにはあたらず空を切った。


 ほんの一瞬の間であった、まだまだ沢山いた仲間達が自分も含めて残り二人になったダリルは混乱しつつも言葉を発する。


「……どうして? なんでお前が動けるんだよ!」


 順調だったはずの作戦。紛れたイレギュラーに向かってダリルは叫ぶ。


「シンドレア!!」


読んで頂きありがとうございます!毎日21時に投稿しているのでブックマークを押して頂けると嬉しいです!またYouTube『熱き漢たかの熱唱熱遊』にてゲーム実況をしていますので興味がありましたら遊びに来てください!

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