強敵の倒し方
第34話です!
「イルミとコーデリアのペアを見つけた! ザイツとマリアのペアとの戦闘が終わって、今、こっちに真っ直ぐ向かって来ているから、もう後数分で斥侯に残った二人がそろそろポイントに誘導するはずよ」
座って待っていた一人の男子生徒を前に女子生徒が早口にそう報告をする。
「そうかヴァ―リ、いたか」
ヴァ―リと呼んだ女子生徒の報告を聞いた男子生徒、ダリルは満面の笑みを浮かべ膝を叩く。
「よし準備しろお前ら、平民の僕達がこの学院の頂点を食う。覚悟はいいな?」
と、リーダーの掛け声と共に、顔つきを変えたその場にいる斥侯を除く8人の生徒。
「弱者は弱者なりの戦いをする。サスフィールに、学校最強に弱者の僕達が一泡吹かせるんだ。さぁ、行こうか」
スッと立ち上がったダリルも笑顔を収め、顔を引き締めるのだった。
「おい、待て!」
と、誰かを追いかけている様なイルミの声が聞こえてくる。
「待てー」
その隣でコーデリアも一緒に追いかけており、イルミとコーデリアの目の前には二人の男子生徒が走って逃げていた。
「クソッ! おい、拉致があかねえ! もうやるしかねえ!」
「ホントに運がねえな……コーデリアと戦う破目になるなんてよ……」
二人の男子生徒は逃げるのを諦めたようで立ち止まって武器を抜き構える。
「ようやく観念したか」
「別にお前から逃げた訳じゃねえからな!」
「【Lv.1】の奴から誰が背中向けるかよ」
けしてイルミにビビった訳ではなく、コーデリアから逃げていたと主張する二人。
「イルミを馬鹿にしないで」
「ひっ」
その売り言葉を買ったのはイルミ本人ではなくコーデリアだった。その感情のまま大剣に手をかけようとするコーデリアに分かりやすくビビる二人。
「リアは喋らないで」
「む…………」
が、イルミが強めにそれを止める。その後に数歩前に出たイルミが二人に話す。
「あんまり【Lv.1】だって馬鹿にしてると痛い目みるかもよ?」
「はぁ? ぷっ、だはははは!」
コーデリアを差し置いて、急に前に出てきたと思えば、自信ありげに馬鹿馬鹿しい事を抜かすイルミに耐え切れず笑い出してしまう二人。
「お前、コーデリアが一緒だからって強気になってんじゃねえよ!」
「そうだ。それに痛い目を見るのはお前の方だ――」
そう言うと、スッと片方の男が手を上げると
「【ファイアーボール】!」
と、イルミの視覚外から声が聞こえ、イルミの視覚外から大きな炎の玉がイルミに襲い掛かった。
「な――」
不意に飛んできた炎の魔法にイルミは避けきれずに直撃して吹き飛ばされてしまう。
「…………!」
驚いたコーデリアはイルミが飛んで行った方向に駆け寄ろうとするも止まる。
しかし、すでにそれが適う状況ではなく、既にコーデリアの周囲を数人の生徒達で完全に囲まれていたのであった。
「あーあ、可哀そうにな、シンドレア。サスフィールを裏切る選択をしてれば痛い目に合う事もなかったのにな」
そう言いながら現れたダリルの顔は再び人懐っこさを感じさせる笑顔を張り付けている。
「…………」
「状況が理解出来ないかサスフィール? なに、簡単な話さ。お前も経験があるだろ? 強敵、一人、二人じゃ敵わない程強い魔物を倒す時に僕達冒険者が取る選択――人数を増やしてパーティーを組むんだよ。みんなで協力して一匹の魔物を倒す。それが冒険者ってもんだろ?」
つまり、ダリルはコーデリアの事を強い魔物と同じ扱いをしているという事であった。それ程、ダリル達に取ってコーデリアという人物は化け物じみているという事でもあった。
「卑怯なんていうなよサスフィール。僕達にとってはお前の存在が卑怯なんだからよ。生まれながら【女神の加護】を持って生まれて、名門の騎士の家で恵まれて育ってきたお前に、才能も運も家柄も何もない僕達が勝つにはこれくらいの事をしないといけないんだよ」
その思いは取り囲んでいる他の生徒も同じようで、睨むようにコーデリアを見ている。
「別に俺達は今回のイベントは失格になってもいい。ルール違反のペナルティだって甘んじて受けよう。サスフィール、お前に一泡吹かせられたらそれでいい。それだけで僕等は前を向ける」
――だから、とダリルは張り付けた笑顔を消し、真っ直ぐな顔をコーデリアに向けて言う。
「覚悟しろサスフィール。容赦なんて一切しない。僕達は魔物だと思ってお前を――討つ」
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