チーミング
第34話です!
「大丈夫イルミ?」
「うん? あー大丈夫、大丈夫だよ」
モヤモヤっとした気持ちはありつつ、強敵との試合を避けられたのは幸運だったと自分に言い聞かせ気持ちを切り替えるイルミ。戦った印象としてはザイツ単体の能力だけでも十分に脅威で、これに加えてマリアの補助魔法が加わるとなると苦戦は必至だっただろうと思う。
それよりもザイツの纏う黒いオーラ、けして相容れる事がないであろう水と油のような存在を相手にした事の方がイルミのメンタルを削っていた。
既に二回目の花火が上がり、マップは②と書かれたゾーンまで更に縮小をしていた。ザイツ達が本当にリタイアをしたかどうかはイルミ達には分からないが、イベントに対してのやる気を見るとリタイアしたのだろうとイルミは考える。
「ん? えぇ?」
「どうしたのイルミ?」
誰かがいた痕跡を見つけたイルミは困惑した様子を見せるイルミ。
「多い……」
「多い?」
「痕跡の跡が多過ぎる。何人だこれ? 4、5人なんてもんじゃないなこれ……」
イルミは屈んでさらに念入りに痕跡を調べ始める。
「4、5人? どういう事? ここで混戦があったって事?」
多数のチーム同士が同時に出会えば大人数がいた痕跡も残る事もあるだろうが、イルミの見解は違うようであった。
「いや、戦った様子が一切ない。周辺に荒れた様子もない、あまりに綺麗すぎる……。しかも、ここで留まっている訳じゃなくて、移動している感じだ。しかも、仲良く並びながら?」
タッグマッチに置いてこれはどういう状況かをイルミは整理する。
「これって、チーミング?」
「なにそれ?」
「別のチーム同士が手を組んで、試合を有利に進める事なんだけど……」
タッグマッチをうたっている以上、これは流石に反則ではないかと思うイルミ。
「誰も気付いていないのか、上手く立ち回っているのか」
そもそも黙認している可能性もあるのかと考え始める。
「どうするの、イルミ?」
「んーどうしよっか」
これだけ大人数での移動、イルミであれば痕跡を見つけるのは容易く、逃げる事も可能であるとイルミは思う。ただ、面倒だと避けたとしても、最終的には狭まった空間で相対する事になる。
これだけの大人数をいったい誰が纏めているというのだろうか。
「あ」
と、ここでイルミはある人物が脳裏によぎる。大人数を取り仕切るだけの人望があり、何かしらの策を持ってこのイベントに臨んでいる人物。
「ダリルくん」
コーデリアを裏切るように誘ってきた人物。ネリルの情報では、平民出の生徒達のリーダー的な存在であると言っていた。
コーデリアに一泡吹かせるというのは、つまり、自分に目的の場所までコーデリアを連れて来させて袋叩きにしてしまおうという魂胆だったのかもしれないとイルミは思い至る。
となると、狙いは他の誰でもない自分達、もっと言えばコーデリアにあるという事だ。
イルミは思考を巡らせる。大人数でコーデリアを相手にする場合、どうするかを。
「……リア、ちょっと考えがある」
そう言うとイルミはコーデリアに自分が思いついた作戦を話す。
「あんまり、こういう作戦は好きじゃないんだけど、先に仕掛けてるのは相手だから多少はね」
チーミングをしている相手に対して、イルミは策を張った。
「それじゃあ、行こうか」
そういうとイルミ達は見つけた痕跡と同じ方向へと向かっていくのであった。
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