最強と最愛
第31話です!
大剣の剣先はバカップルへと向く。蛇に睨まれたカエル状態になって怯えて震えていた二人も、大口を叩いていただけはあるようで、マー君が真っ先に自身の武器である槍を構えチーちゃんを庇うようにコーデリアの前に立ち塞がる。
「やるよチーちゃん! 僕達で、コーデリアさんに勝つんだ!」
チーちゃんを鼓舞するように喝を入れ、腰が抜けて立ち上がれなくなっていた彼女に手を差し伸べる。
「うん、そうだよねマー君! 勝とう! 私達の力で!」
震えが消えたチーちゃんも持っていた弓を構える。
すっかり悪役のようになったコーデリア。バカップルのイチャイチャとした茶番に勝手に組み込まれた事も分かっておらず、準備が出来た二人を見た彼女は
「行くよ」
と、騒ぐカップルと正反対に静かで冷淡に彼女は向かっていく。
「き、来た! 行くよチーちゃん!」
「OKだよー! マー君!」
迫るコーデリアにマー君が突っ込みに行く。しかし、二人が激突する直前、弓を構えていたチーちゃんが動く。
「いっくよー! 【パワーアロー】!」
コーデリアの目の前に立ち視界を狭めたマー君。その死角から放たれるチーちゃんの一撃。
何度もこの連携を練習してきているようで、スムーズにマー君はその場を離れる。
そして太く鋭い一本の線となった矢は真っ直ぐ風を切りながらコーデリアに迫る。
「――‼」
一瞬の事で反応が遅れたコーデリアは大剣でのガードが間に合わない。
「うっそぉ!」
と、チーちゃんの叫びが聞こえる。信じられないと心からの叫びであった。
武器でのガードが間に合わなかったコーデリアは素手で矢を殴り落としたのであった。
なんのスキルも使わず己のフィジカルと単純なステータス差の暴力で、相手の放つ渾身の一撃をあっさり撃ち落としたのだった。
「まだだよ! 【レイン・アピス】!」
先程のチーちゃんの矢が質の攻撃であるとすれば、マー君の攻撃は量であった。
一本の槍が何本にも見える程、高速に突きを繰り返しコーデリアに攻撃を仕掛ける。
しかし、今度は大剣の使用が間に合ってしまう。
「え?」
ただ大剣を振り下ろしただけであった。
たったそれだけで、槍を持ったマー君はコーデリアの攻撃の重さで直接当たった訳でもないのに関わらず態勢を崩し地面に叩きつけられる。
「へぶっ‼」
そして丁度いい高さにきたと言わんばかりに、容赦のないコーデリアの蹴りがマー君の顔面に決まる。
「マー君⁉」
強烈な一撃を食らい地面に何度か跳ねて木にぶつかり止まる。
ピクリとも動かないマー君の頭上のHPバーは一撃で全て削られ、失格となっていた。
「マー君! マー君!」
と、動かなくなったマー君を心配してチーちゃんが駆け寄り、心配そうに抱き上げる。
「後は貴女だけ」
「おいリア、あんまりやり過ぎるなよ?」
もう勝負は決まっている。というか、初めから勝負は決まっていたとイルミは思う。
【Lv】も技術も経験も何もかもが相対した二人のカップルには足りていなかった。そもそも、模擬とはいえ戦場で大声をだしてイチャついているようなコンビにコーデリア程の実力者を相手に万が一もある訳もなく。
多少のコンビプレーが出来た所でコーデリアの圧勝であった。
「チーちゃんに……手を……出すな……」
息も絶え絶えにかろうじて意識を保っているだけのマー君はそれでもチーちゃんを庇うようなセリフを吐く。
しかし、マー君は既に失格となっている。
「これ以上、マー君を傷付けないで! 私が相手になるわ! コーデリアさん!」
傍から見ているとコーデリアが悪者に見えてくる不思議。コーデリアに対してもカップルに対しても何だか不憫な感情が芽生えてくるのであった。
「あーと、チーちゃん? もうリタイアしたらどう?」
兎のようにプルプルと震えているチーちゃんにイルミは助け舟を出すイルミ。マー君が失格となり後衛一人となったチーちゃんにもう勝ち目はない。
「駄目! マー君と優勝しよって約束したんだもん! 私だけでも頑張るもん!」
それでも頑なに戦いを続けるとするチーちゃん。
「ねえリア、代わって貰える?」
「え、うん?」
もう勝負が決まって満足してしまったのか意外にあっさりと身を引くコーデリア。
「何よ! 知ってるんだから! 君【Lv.1】のイルミ君でしょ! 私が一人になったからって勝てると思ってるんでしょ! 舐めないでよね!」
そういいながら、「えいっ」と目を瞑って慣れないパンチを放つチーちゃん。その拳をヒョイと交わしたイルミはチーちゃんが背中に矢を纏めるために結んでいた紐を解き、手を掴み後ろに曲げさせ拘束する。
「ちょっと何するのよ! バカ! 変態!」
キャーキャー喚くチーちゃんを無視してイルミは淡々と背中に回した手を奪った紐で結んでいく。
「きゃっ」
そしてイルミは軽く押しすことでバランスを崩させマー君に被せる様にチーちゃんを倒した。腹部にチーちゃんの頭部が落ちてきたマー君は「ゴハッ」と言う声が出る。
「まぁ、こうしておけば時間切れで勝手に失格になるでしょ」
「いいのイルミ?」
その確認には敵を倒したアドバンテージを取らなくていいのかという確認であった。
「これ以上痛めつけるのも心苦しくて。まぁ一本は手に入れたし、お互いダメージも食らってないから」
厳密に言えばチーちゃんの攻撃を素手で叩き落としているため、多少のダメージは入っているがあまりに微量過ぎて減っているかどうかも分からない程であった。
「そう、それならいい」
「先に急ごう、俺達が失格になっちゃうかもだし」
「ほーどーけー!」と文句を言うチーちゃんを無視してイルミ達はその場を後にする。
「そういえば、どうして一人で戦おうとしたの?」
一人で戦いたいと言ったコーデリアの意思を尊重したイルミだったが、理由が気になっていた。
「お婆様が誰かを思う気持ちで人は強くなるって言ってたから」
「あー……」
それはあまりにも相手が、と言うより自分が悪いとイルミが思う。コーデリアはお婆様が言った事を確かめたかったのであった。しかし、最愛では最強を超える事は不可能であった。超えるどころか圧敗に終わった。
コーデリアの祖母の考えは【聖騎士】となった人間らしい高潔な考えで、実際、誇り高く立派で、きっと――正しい考え。
しかし、コーデリアがあまりにも強すぎたため、その実感は得られなかったようであった。
「お婆さんの言ってる事は間違えじゃないと思うよ」
イルミは少し補足を加えようとする。
「あの二人、何だかんだ言っても最後までリアに立ち向かおうとしたじゃん。一人はもう一人を守るために、一人は約束を守るために。それは蛮勇だったかも知れないけど、それはやっぱり強さなんだと思う。勇気をもって強敵に立ち向かうって一人じゃ難しい事だから」
コーデリアは納得したのかどうか分からないが、その後も黙ってイルミの後ろを付いて行くのだった。
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