バカップル登場
第30話です!
「止まってリア」
先導していたイルミがコーデリアを手で制す。イベントが開始されてすぐの事であった。
「近くにいる」
そのイルミの言葉に場の雰囲気に緊張感が増す。
イルミはそのまま地面の草などを入念に調べ始める。コーデリアは警戒を解かずにイルミのその行動が終わるのをじっと待っていた。
「向こうだね、どうする? 行く?」
行くというのは、つまり敵を倒しに行くかどうかという事である。
「任せる」
完全に判断をイルミに委ねているコーデリアの答えは相変わらずイルミへの一任であった。
「うん、それじゃあ行こうか」
と、自ら接敵する事を決めるイルミ。
「この近さだったらいずれにしても接敵する可能性が高い。俺達が先に存在を気付いている内に倒そう」
「わかった」
コーデリアも了承して、先程、向こうだとイルミが指した方向へと周囲を警戒しながら一緒に向かい始める。
「そのスキル、便利」
「ん? あー【探知】の事? やっぱり便利だよ。まぁ、あんまり人気がないんだけどね」
【探知】は近くに誰かいるか、何人いるか、周囲を見て判断する事が出来る能力であり、こういったイベント事であればかなり活躍しそうな能力だが、その人気はない。
「【盗賊】のスキルだから」
悪党職に分類される【盗賊】。人気がないというより、悪党職であるため一般の冒険者は【盗賊】を忌避しているというのが正しかった。
「こんなに便利なのに、悪党職だからってスキルを持っている人口が少ないってのは勿体ないと思うんだよな。まぁ、【盗賊】は対魔物よりも対人間のスキルが多いから、どっちにしても人気なさそうだけど。でも魔物の位置を知れたりしてかなり便利だけど、【妖術師】とか【僧侶】みたいな直接的なサポートが出来る訳でもないし」
イルミはこう言っているが、実際かなり便利なスキルだとコーデリアも感じている。同じチームに一人でもいればかなり戦闘も安全に行えるだろうと。
「でも、【盗賊】の職業スキルってどうやって手に入れるの?」
これだけ便利ならば悪党職という認識から外してもっと世間的に普及してもいいとコーデリアは思う。
「えーと、あの……」
と、何故かここで歯切れが悪くなるイルミ。
「盗みを繰り返して技術スキルの【盗み】を手に入れる事、です……」
思わず敬語になってしまうイルミ。悪党職が悪党職たらしめるのは、そのスキルの会得方法にあり、【調教師】は魔物と仲良くなる、【盗賊】は盗みを働く事、どれもその習得方法は悪と断罪されてもおかしくないものである。実際、【盗賊】のスキルを持っている人間は、過去に何度も盗みを犯している犯罪者が多く、だからこそ忌避される悪党職となっている。
「イルミ……」
悲しそうな顔でイルミを見るコーデリア。
「違う、俺は他人の物は盗んではない! 親父の知り合いに義賊の人がいたんだよ! その人に指示されたモノを練習として盗んで手に入れてたんだって! 盗んだモノも身内のものだし、ちゃんと返してたから! 断じて犯罪はしてない!」
それを聞いたコーデリアは悲しい顔を辞める。
「イルミのお父さん、ホントに色んな関わりがある」
「そこだけは本当にありがたいと思ってるよ」
そもそも父親が魔王を討伐していなければ、世界の英雄でなければ、こんな成長方法を取らずとも良かったという見方も出来るが本人はそう感じてはいないようであった。
「――!」
何かに気付いたのか急にイルミが足を止める。
「リア、もうそこにいる。声が聞こえた」
と、弛緩していた空気が一気に張り詰める。声が聞こえたとイルミは言うが、正直コーデリアにはまだ何も聞こえていなかった。
イルミが指示した方に歩いて行くと、流石にコーデリアにもそのコンビの声が聞こえてくる。
「ねぇねぇ! マー君! 本当に私達、勝てるかな?」
「何を言ってるんだ! チーちゃん! 僕らは最高で最愛のコンビじゃないか! 負けるはずないだろう?」
「えーでもでもーマー君! 今回はコーデリアさんとかーレオン君とシャミアさん? とか、私らの学年で一番優秀な子達が出てるんだよー? 本当に私達みたいな普通の生徒で勝てるかなー?」
「勝てるさ! それに僕らは普通の生徒じゃない! 世界で一番愛し合った二人じゃないか!」
イベント中だという事を忘れているのか、普段からこんな残念な感じなのかマー君は周囲に憚る事なく大声で続ける。
「どんなに最強でも最愛には適わないんだよチーちゃん! つまり二人一緒にいる限り、僕らに勝てるコンビなんていないって訳さ! 僕はチーちゃんが傍にいてくれるなら、現在、最強だって言われてるコーデリアにだって勝ってみせるよ!」
「わー流石マー君! 格好いいー! 惚れ直すってこういう事だね!」
目の前にいるバカップルに頭を抱えるイルミ。警戒のけの字も見えない二人。もう無視してしまいたいと、強く願ってしまうイルミ。
「最愛は最強より強い……」
「あ、ちょっとリア」
様子を見るためにしばらく二人の会話を聞いていたイルミとコーデリア。しかし、コーデリアはマー君のセリフに引っかかったようで、イルミの指示を聞かずに隠れていた場所から出ていってしまった。
「ねぇ、見せて? その最愛の力ってやつ?」
「「コーデリアさん!?」」
急に現れた最強に対し悲鳴に近い声を同時に上げる2人。
「イルミ、私1人で戦ってもいい?」
「え、いいけど……」
その真意はイルミには分からない。が、コーデリアが負ける心配ない相手だと判断する。
イルミの了承を得たコーデリアは背負っていた大剣を抜く。
先程の余裕など一切なくなり、2人は互いを抱くように震え上がっている。
「さぁ、見せて」
迫り来る最強を前に最愛は絶望をするのであった。
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