開始の合図とイルミの決意
第29話です!
「この辺りでいいかな」
もう一度地図を開いて自分がいる位置を確認する。演習では何度もこの地図と実際の場所を擦り合わせてきたイルミが間違える訳がなかったが、一応、コーデリアにも確認を取る。
「ん、大丈夫」
と、コーデリアのお墨付きもでる。初歩の初歩であり、そもそもこの地図が読めないようなコンビであれば、はなから出場資格がないという事でもあった。
「じゃあ始まる前に今回の作戦というか、俺達が取る動きをおさらいしておこう」
と、イルミは確認のために開いた地図をそのまま見せたまま話を進める。
「今はこの場所、北北東の端の位置にいる訳だけど、きっと他も同じように森の端に並べられるように一定間隔で配置されているはず」
他のチームの地図を見る事は出来ないため予想でしかないが、イベントの性質上、最終円に近い方が有利を取れるため不公平を無くすためにも、そうであるとイルミは予測する。
「周りがどんな動きをするか予想出来ないから、俺達は時間いっぱいを使ってエリアを移動する。最終円で待って有利を取るのもいいけど、同じ事を考るチームは他にもいるだろうから、混戦にならないように安定を取って行こう。傲りでも何でもなく俺達が一対一で負けるチームはまずないだろうから」
これはネリルの情報が活きていた。自分達に対抗できそうなチームは限られていると考えたイルミは、何かアクシデントがない限りはまず負けないと思っていた。
また、もう一つイルミには最終円に向かう選択をしなかった理由があったがここでは話さなかった。
「基本的に接敵したら戦う。戦えば戦う程有利になるルールではあるから、でも、わざわざ探しに行く事はしないでおこう。余計な動きをして目立ちたくはないから」
とにかく安定を取るイルミ。これは自分達の実力を考えての事で相手を倒したことを得られるボーナスが無くとも自力で勝利する事が出来る自信からくるものであった。
変に動いて不慮の事故で負けるという方がイルミに取っては懸念すべき点であった。
「うん、イルミに任せる」
作戦会議ではあったがコーデリアはイルミにイベント中はどうするかを一任しているようであった。
「だから、イルミの事は私に任せて」
自分の身くらい自分で守れると言いたいイルミだが、コーデリアの頼もしさと安心感に何も言えなかった。何も言えなかったが守られてばかりいるつもりも毛頭なかった。
この2週間、ほとんどコーデリアと一緒にいたイルミは彼女の強さを十分に理解している。彼女一人でもこのイベントを優勝しかねない程にコーデリアは強い。
それはイルミが感じたコーデリアに対する何一つ誇張のない評価。最強という称号がふさわし過ぎる力。
このイベントで彼女に勝る事が出来るものは何か。
イルミに取っては優勝をする事は言うまでもない程の大前提であり、それ以上に必要なのは自分の実力認めさせる事。最強の隣で埋もれない程の強さを示す事であった。
――それくらい出来ないようなら英雄なんて諦めちまえよ
クソ親父と呼んでいる男の声が聞こえてくるようであった。
「……そろそろかな」
と、イルミは太陽の位置を見て時間の予想をする。これも参加するにあたって必須技術であった。
――バンッ!
言ったそばから花火が破裂した音が森中に響く。開始の合図であった。
「それじゃあ、行こうかリア」
地図を閉じて懐にしまうイルミ。
人生の分岐路に立たされている少年の目に不安はなく。ただ真っ直ぐ目の前の事に集中するのであった。
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