運か努力か
第24話です!
武器のメンテナンスが終わったイルミはアズサとの約束通りに熊手を教えてもらっていた。
イルミに鍛冶を教えるアズサは本当に嬉しそうにしており、イルミもそれを真剣に聞くのであった。
コーデリアもイルミの影響か色々な作業に興味を持ち始めており、アズサの話をイルミの隣で聞いているのであった。しかし
(熱い……)
炉に金属を入れて融解している最中、あまりの熱さに気が遠くなりかけるコーデリア。アズサが上着を脱いで作業している理由も分かる気がした。
自分が作業をしている訳でもないのに薄着になるのも少し変な気がするコーデリア。そもそも同級生の男子の前で薄着になる事がはしたないという感覚は一応持っており、躊躇するのであった。
額にかいた汗を拭う。アズサの話を集中して聞く事が出来なくなるくらいには参り始めていたコーデリアだったが、熱さを感じている様子を見せないイルミとアズサ。
アズサに関しては一番炉に近く作業をしているというのに自分よりも汗を搔いていない事に気付く。そして、それはイルミもその様子で、二人ともケロッと平気そうな顔をしているのであった。
「あれは慣れのおかげ?」
場面は変わり、『双子宮』閉店後。アズサの鍛冶場を後にした二人は、その足で既に開店していた『双子宮』に向かい、そのまま仕事に入る。
昨日はピーク日であったらしく、今日の客足は昨日に比べると落ち着いたものであり、コーデリアもリディア達から仕事を落ち着いて教えてもらえるのであった。そして仕事が終わり、お待ちかねであったイルミの賄いを食べながらアズサの工房で疑問に思った事をイルミに尋ねるのだった。
「あー熱かったよね。ごめん、そこまで気が回らなかった。あれは慣れというか、【鍛冶師】としてのスキルかな。【鍛冶師】の職業スキルを得られるのと同時に【火耐性】が付与されるって感じ」
「スキルのおかげなんだ」
「俺も、【鍛冶師】を得られるまでは熱くて仕方なかったな。アズサさんのお父さんの元で鍛冶に打ち込んでたらいつの間にか熱さも忘れて作業出来るようになってて気付いたら【鍛冶】の技術スキルが得られてて、同時に【鍛冶師】が得られてたって感じ」
熱さを忘れて没頭できるようになる程鍛冶に慣れてきたくらいに得られた熟練度が【鍛冶】の技能熟練度を得られるラインなのかもとコーデリアは思う。
「慣れとは違うものなの?」
【火耐性】が付いたからではなく、慣れて熱さを感じなくなっただけではとコーデリアは思う。
「いや、受けるダメージの方に耐性が付いているみたいなんだ。実際、簡単に火傷しなくなったし」
熱さに対してもある程度の耐性もあるようだが、【火耐性】というだけあって火そのものに強くなるらしかった。
「【最上級鍛冶師】になったら【火耐性】の耐性が相当上がるみたいで、一流の鍛冶師はマグマを風呂にするって言われてるくらい。流石に大袈裟な表現だろうけど」
それはそうだろうと思うが、マグマの中でも機嫌よく笑っているアズサの姿が容易に想像出来てしまうコーデリアであった。
「でもアズサさんの工房にあった炉じゃ融解するのに火力が足りない金属もあって、もっと火力の出せる炉が存在するんだけど、その炉の前だったら本当に耐性がないとまともに作業が出来ないらしいよ」
アズサの工房でも、横で見ているだけで気が遠くなりそうな熱さであったのに、それより更に熱いとなると易々と見学も出来ないと思うコーデリア。
「イルミはどれくらいで【鍛冶師】を手に入れられたの?」
少し気になった事であった。自分たち冒険職も武器技能のステータス手に入れた上で、職業ステータスを会得している。コーデリアの場合、【騎士】になる為に必要な技能は【片手剣】【大剣】【槍】の武器スキルに【盾】の技術スキルを会得する事で騎士になれる。
大体、一つの技能を会得するのに必要な期間は2~3年と言われており、良い師、その【職業】と【技術】の熟練度の高い師がいれば1年と言われている。
「【鍛冶】は師匠がすごい人だったから一年程だったかな。かなりスパルタな人だったからその分成長も早かったけど、何回か死ぬ思いもしたっけな……」
どこか遠い目をしているイルミ。あまり思い出したくない記憶らしい。
「親父曰く、このくらい乗り越えられないなら冒険者になるなんて諦めなってさ。他人事だと思ってヘラヘラ笑いやがってあのくそ親父」
「でも、おかげで早く【鍛冶】のスキルを手に入れられた」
「まぁそうだけど。何回か逃げ出しそうになったけど、逃げ出した後に親父に馬鹿にされると思うと逃げたくなくなったんだよな」
もしかしたらレイヴァンの計算だったのかもしれないがイルミはそうは思っていないらしい。
「それって、いくつの時?」
「鍛冶を習い始めたのは、レベルが上がらないって知ってすぐの時だから7歳の時かな」
「7歳……」
自分もそのくらいの時には剣を握り特訓していたなとコーデリアは思い出す。その時から祖母のような立派な【聖騎士】になれるようにと志しながら。ただ、その時、【Lv.1】からもう上がる事がないと言われたら、イルミのように諦めずにいられたかと考えるとやはり自信はなかった。
「その時から何も変わらないんだねイルミは」
「何? レベルの話?」
と、そうではないと分かっていながら、ふざけて聞き返すイルミ。
「違う」
と、コーデリアに言われて「ははっ」と笑うイルミ。
「俺が変わらないでいられたのは運が良かったからだよ」
「運?」とコーデリアは聞き返す。
「親父が世界の英雄って呼ばれているおかげで、至る所に人脈があって、超が付く一流の人に仕事を教えて貰えるし」
熟練度は熟練度の高い人から教わる事で効率よく上げるが出来る。
「『双子宮』なんて冒険者として特訓するのに絶好の場で住まわせて貰っているし」
『武神』のルディアに『魔精』リディア。それぞれ『武』と『魔』の極致にいる二人から付きっきりで特訓に付き合ってくれる場など他にはないだろう。
「それに、ずっと応援してくれて、期待してくれて、肩並べようと努力してる奴もいるってのが大きいかな」
イルミは一人の幼馴染の事を思って言う。恥ずかしくて絶対に本人の前では言えないようなセリフである。
「だから運が良かったんだって、どれか一歩間違えてたら、一つ嚙み合わなかったら、俺は諦めてたかもしれない」
「そうだとしても、凄いよイルミは」
真っすぐなコーデリアの言葉には相変わらず弱いイルミは目線を逸らし頬をかく。
「あ、そうだ。俺もリアに聞きたい事があったんだった」
照れたのを隠すようにイルミは別の話題に切り替える。
「ん、なに?」
「【聖騎士】に成りたいのに何で大剣を選んだの? それだと【盾】のスキルが死にスキルにならない?」
【騎士】になる為には先程も述べたが【片手剣】【大剣】【槍】に【盾】スキルが必要となる。しかし、大剣は両手で扱うため【盾】のスキルは無駄なものとなってしまう。
それなのに【騎士】になる為に【大剣】のスキルが候補にあるのは、【重騎士】という【大剣】が必須の【騎士】の上位職があるからと言われている。しかし、【重騎士】の派生は【聖騎士】になるための派生にはない。
そのため、コーデリアの大剣をメンテナンスしている時にイルミはふと疑問に思ったのだった。
「守りはスキルとステータスでどうにでもなると思って。いち早く脅威を倒すなら攻撃力と破壊力のある大剣が一番だと思ったから」
「意外と脳筋なんだな……」
と言いながらある事に気付く。
コーデリアは全く自分の身を案じていないのであった。確かに【騎士】は高い防御性能があるから理に適っているようにも思えるが、他人をいち早く助けるために捨て身になっているようにも考えられた。
コーデリアらしいと言えばらしいと思えるが、きっと彼女のそんな考えを変えて欲しいと彼女の祖母は願っているのかもとイルミは思うのだった。
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