【調教師】
第19話です!
コーデリアのイルミを見る目つきは変わっていた。鋭い眼光でイルミを睨み付ける。今まで守るべき相手として認識していたのが嘘かのような敵意を向けるのであった。
「説明してイルミ」
敵意を向けられて尚、イルミはチースタルの顔を撫で魔物を甘やかすことを辞めない。
「ごめんリア、【調教師】だって隠してて。でも、俺から今まで以上の説明は何もないよ。ずっと俺は話してるはずだよ。強くなるためにはなんだってするって」
「でも、その職業は」
それはコーデリアも何度も聞いている。その貪欲に強くなりたいイルミの姿勢に尊敬の念すら抱いていたコーデリアであったが、これに関しては、この一つだけで、今までのイルミに対するイメージを全てひっくり返る程の事態であった。それは
「【調教師】は【魔王】になる職業……!」
過去に人間と魔物の大戦を引き起こしレイヴァンによって討伐された【魔王】。その正体は、多くの魔物を従えた人間であった。その【魔王】になるための職業が【調教師】であり、この職業を持った多くの人間が【魔王】側に付き人間を危機に脅かしていたのであった。
そのため【調教師】系列は最も禁忌とされる『悪党職』という世間の共通認識となっていた。
「強くなりたい気持ちは分かるけど、それは流石にーー」
「ダメじゃない。何も悪い事なんてない」
イルミはコーデリアの言おうとする事をピシャリと遮ってしまう。
「『悪党職』なんて、まさに悪そうなイメージの名前を付けられてるけど、本当に悪かどうかはその職を持った個人によるはずだろ? 天下一の大義賊って言われてるロビンだって、職業は【盗賊】だったけど弱きを助け悪を挫いて英雄扱いだ。結局、その職業じゃない、その人なんだよ」
「でも【調教師】は……【魔王】は……」
イルミの話が依然として腑に落ちないコーデリア。その心情の裏には魔物との大戦を最前線で戦い抜いた彼女の祖母の過酷な話を聞いていからこそ、より一層イルミが【調教師】である事に拒否感を覚えているのだった。例え彼女でなくとも、【調教師】の職業を持つ人間はそれだけで畏怖の対象である。その事はイルミもわかっているはずであった。
「ごめんリア、俺はずっと前から決めてるんだ。強くなるためなら何だってするって。英雄になれるなら何だって。それこそ【勇者】にだってなるし、【魔王】になる事にも俺は何の躊躇もない」
「…………」
唖然とする。イルミに対する尊敬の念の奥底がほんのりと恐怖に変わるのを感じるコーデリア。イルミの覚悟を履き違えていた。純粋な英雄に憧れる同年代の少年だと思っていたが、認識が甘かった。
しかし、よくよく考えれば【Lv.1】の彼が目指す所は冒険者になる事ではない。彼の父親のような偉大な英雄を目指そうというのだ。そこに対する認識のずれ。
ただでさえ圧倒的なハンデを背負ってるイルミが冒険者になるだけでも、とてつもない偉業であるにも関わらず英雄にもなろうとする彼の覚悟。自分の【聖騎士】になろうとする覚悟や努力なんて彼に比べれば、なんと大した事がないのかとコーデリアが思う。
思う、が、それでもここまで狂気を孕みながら自分の道を進む事は不可能だろうと思うコーデリアであった。
「何でそこまでして英雄になりたいの?」
「昨日も言ったけどカッコイイからだよ」
「本当にそれだけ?」
確かにその話は昨日『双児宮』で聞いた。その時は、その理由でよかった。しかし、それだけのモチベーションでここまですることが出来るのかと。
「他に理由があるとしたら、期待されてるからかな」
「期待?」
「どうしても俺が英雄になるって信じて疑わない奴がいるんだよ。しかも厄介な事に英雄になった俺と一緒に肩並べたいとか言って努力する馬鹿がいるせいで、俺は絶対に諦める訳にはいかなくなってるんだよ」
と、苦笑いを浮かべながら、チースタルに再び焼き菓子をモシャモシャと食べさせるイルミ。
「その期待ってそんなに重いの?」
「凄く重い。でも、折れない芯を作り出してくれてもいるかな。今も頑張れてるのはそいつの期待があったからだろうと思うし」
誰かの期待が強くする。騎士の娘に生まれたコーデリアもそれには理解ができた。
「それなら私も期待しようかな。イルミが英雄になる事に」
「また重たい期待だな……学校最強からの期待ってのは。じゃあ、俺も期待してる。リアが誰よりも強い【聖騎士】になるって事」
「うん。私はイルミを守る最強の盾になる」
「親父に……元々はリアのお婆さんだっけ? に言われた事は気にしなくてもいいのに。あんなの俺をタッグマッチに出させる口実みたいなものなんだから」
コーデリアは彼女の祖母に言われてイルミを守る事を誓ったが、わざわざ大人になってもその関係でいる必要はないとイルミは言う。
「私が守りたいと思ったの」
コーデリアの心からの本音にイルミもドキッとしてしまう。
この狂ったように英雄を目指すイルミを守りたいと。出会ってまだ一日程であるが、彼に期待したくなるという気持ちはコーデリアも同感してしまう。
「ところでーー何で何もないところからお菓子が出てくるの?」
「あ」
チースタルに無意識に餌を上げていたイルミはタラタラと冷や汗を掻く。
「イルミには秘密が多いんだね」
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