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【暴君の加護】

第17話です!

「えっと……まぁ、最初なんだから気にする事ないよ、リア」


 ずらりと並んだ黒いポーションを前に肩を落としているコーデリアをフォローするイルミ。


「私、錬金術の才能ない……」


「いや、それは違うと思うよ」


 イルミと比べて上手く錬金が出来なかった事にコーデリアは自分で自分を卑下するがすぐイルミに否定される。そして少し得意げに語るのだった、


「才能の有無って言うのは『出来る』じゃなくて『諦めない』事の方がよっぽど大事なんだ。だから諦めない限り誰だって才能があるし、逆に諦めたらそこまでの才能だって事……まぁ【聖騎士】を目指すリアに錬金の才能は必要ないかもしれないけどね」


 冒険職を目指すにあたって錬金の技術を習得する人間は少ない。錬金が出来ないからといって諦めたからと言って困る事はないだろうが、イルミの言う本質はそう言う事ではないのはコーデリアも理解している。


「イルミがそう考えるの【Lv.1】から上がらないから?」


 諦めない事が第一条件だと言うイルミの才能に対する考えは、【Lv.1】でも夢を諦めないために自分を鼓舞しているようにも、逃げ道を絶っているようにも思える。


「んーそれもある、というか偉そうに言ったけど実は受け売りなんだ」


「もしかして学長先生?」


「もし親父に言われてたら多分反抗して聞いてない気がする」


 反抗期な年頃の息子であった。


「シャミアに言われたんだ。【Lv.1】からレベルが上がらないって知った時にそう言って背中を押してくれたんだ」


「シャミアってあのずっと怒っている子?」


 コーデリアの中でシャミアは常に怒っている人となっているらしかった。


「普段はもう少し大人し……くもないけど、いや、いい奴なんだよ? 基本的にアイツが怒ってる理由って主に他人の事で、というか大体、俺の事で怒っているんだけど」


 イルミがレオンに絡まれたり、ヒソヒソと陰口を叩かれている時など自分に言われたかのようにシャミアは怒る。イルミの事を傷付けられる事が彼女にとって何よりの屈辱であるかのように。


「シャミアと付き合い長いの?」


「もの心ついた時からアイツとは一緒にいるかな。昔、親がいないシャミアを親父が連れてきて、その時からずっと一緒。二人で周りから腫物扱いされてたから、尚更、二人でいる事が多かったかも」


「腫物?」


 無視できない単語を聞いてコーデリアは聞き返す。


「俺は英雄の息子がレベルの上がらない出来損ないってもんで

期待からの落差で周りからかなり痛々しく扱われていたんだけど、シャミアは俺なんかより、もっと残酷だったよ」


 イルミも過酷な現実を見せられたはずだが、シャミアはもっと酷いと言う。


「アイツの親が居なくなって引き取り手が親戚じゃなくて親父になったのも同じ理由。シャミアの親父さんーー【暴君】なんだ」


「【暴君】……!」


 この名前はコーデリアも聞いた事あるようで、悪党職と呼ばれる中でも【魔王】に次ぐほど恐れられている職業であった。


「父親が【暴君】だって理由でシャミアは皆んなから拒否されたの?」


「それで間違いないんだけど、ちょっと認識は違うかも。腫れ物扱いされたのはシャミア自身にも理由があるんだ。と言ってもシャミアは何一つ悪くないんだけど」


 イルミは淡々とシャミアの事を話す。


「【暴君】って遺伝するんだ。俺とかリアが持ってる【加護】として」


 【加護】は生まれた時に得られる性質であり、遺伝的に得られる【加護】と偶発的に得られる【加護】の2種類がありシャミアの場合その後者であるようだった。


「【暴君の加護】って事?」


「そう、加護の特徴も呪いみたいなもんで、『魔』が一切伸びない代わりに『力』ばかり伸びたり、『力』に単純に補正がかかったりするんだ」


 と、ここまで聞いている限り『魔』が伸びないデメリットはあれど、力に特化させればかなりいい【加護】のようにコーデリアは感じる。


「ここまでなら悪くなさそうに聞こえるかもだけど、問題は別にあって、感情が昂ると我を失って暴走するようになるんだよ」


 暴走するとはどう言う事なのかとコーデリアは疑問に思う。


「シャミアが怒ってる時、目が赤くなってたの気付いた?」


「赤く……」


 言われてみれば、彼女の目がほんのり赤くなっていたような気がする。


「あれが感情が昂ってるサインで、暴走しそうになってる証拠なんだ。あの目が完全に真っ赤になったら見境なく暴力を振うようになる」


「でも、そんな事にならなかった」


 実際、赤くなりかけてただけでコーデリアの目の前で暴走する事も無かった。


「今は抑えられるようになったんだ。昔は毎日のように暴れていたし、その度にボコボコにされてた……」


 【暴君の加護】の被害者がそこにはいた。


「親父がシャミアの事をほとんど丸投げしたせいで、暴走した時に抑える役が俺だったんだよ……。暴走状態の時って更に『力』に補正が掛かるし子供の力とはいえ毎度、死ぬ思いで止めてたよ」


 イルミの表情は苦々しい。それなりにトラウマな過去であるようであった。


「でも、今は大丈夫なの?」


 目が赤く染まりかけているとは言え、暴走まではしていない様子。シャミアの学校での人気振りを見ると上手くやっているようにも思える。


「感情を抑える術をある日に覚えたらしい。どんな術かは俺に教えてくれないんだけど。でも、実際この学校に入学してから一度も暴走した事ないから上手くいってるんだと思う。それでも赤くなりかけてるから怖いんだけど」


 昨日、今日で数回、薄らと赤く染まりかけているシャミア。暴走している頃を知っているイルミからすれば本当に恐怖なのであろう。


「今と昔じゃステータスも違う」


 と、コーデリアが言う。イルミもまさにそこが懸念点だったらしく


「今のアイツが暴走したら本気でヤバいだろうなぁ……」


 普通の状態でも木の机を真っ二つに割り、人間を腕力で数メートル吹き飛ばし、脚を振り下ろせば地面にヒビが入るシャミア。


 そんな彼女が暴走した時の事をイルミは考えたくなかった。


「今日の事ちゃんと説明して謝っておかなきゃな……」


 と、考えない訳にもいかず、過去の経験から今朝のシャミアが暴走まで近付いているように感じたイルミは早々に謝る必要があると考える。


 ただ一方で今の彼女に話しかけに言っても火に油を注ぎこむ行為な気がしなくもないとも思う。


「はぁ……」


 どうしたもんかな、と溜息を吐いて悩むイルミであった。

読んで頂きありがとうございます!毎日21時に投稿しておりますのでブックマークを押していただけると嬉しいです!またYouTube『熱き漢たかの熱唱熱遊ch』にてゲーム実況配信をしておりますのでよかったら遊びに来てください!

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