嫌がらせの報復
第11話です!
「なんか俺達の接客だけお前ばっかりじゃないか?」
「男に接客されてもなんも楽しくねえよ! あの可愛い女の子に接客させやがれ!」
席についてしばらくすれば酒も入り、酔っ払い始めたガラの悪い客達がついにイルミしか接客してない事に気付き文句を垂れ始めた。
「差別じゃねえのこれ? 客を差別するんですかこの店は?」
「なぁ、お前はもういいからさ、女の子呼んでこいよ、女の子。お客様を不快にさせた罰だ。ちょっとくらい晩酌に付き合って貰わねえと、割に合わねえよ! なぁ!」
ギャハハハと下品な笑い声で鳴くガラの悪い客達。酔って気が大きくなったのか、発言がドンドン横暴になってきている。
「申し訳ありません、お客様。ウチはお酒とご飯を楽しむ店ですので、女性との戯れは別の店でお願いいたします」
「ちっ、何だクソガキ? 俺達に意見かよ? あ?」
「いえ、そう言う訳では……」
絡まれるイルミを他のお客の対応をしつつ心配そうに見つめるコーデリアとリディア。
「あーあ、もういい、もういい。分かったから。さっさと同じ酒持ってこいよ。ついでにこれも全部下げとけ」
諦めたのか、男は追加の酒の注文をする。
「はい、かしこまりました」
と、イルミは空いたグラスや食器を纏める。その様子を注文した男はニヤニヤと見つめる。
「それでは失礼します」
纏め終わった食器を持って厨房へ引き返そうとするイルミ、その足元には注文をした男の足があった。
「うおっ」
と、足元に注意が疎かになっていたイルミは見事にその男が少し浮かせた足に引っ掛かり、片付けた食器とイルミが宙へ浮かぶ。
「イルミ……!」
転びそうになっているイルミにコーデリアは手を差し伸ばそうとするが間に合う距離ではない。
しかし、転ぶかと思えたイルミは空中で即座に体勢を持ち直し地面に着地した……かと思えば落ちてきた皿やグラスを一つも落とす事なくキャッチしたのであった。
その大道芸人のようなパフォーマンスを見た店内の客達は大盛り上がりを見せる。そんな中、足を掛けた男達だけはつまらなそうな顔をし、イルミはというと、
「危なかった……ルリさんに殺されるところだった……」
と一人冷や汗をかいていた。
「イルミ、大丈夫?」
心配そうに駆け寄るコーデリア。
「イー君、私やっぱり無理、アイツらぶちのめしてくるわ」
と、今度こそ感情剥き出しでキレているリディアにイルミは
「大丈夫だから、落ち着いてリディ姉。あれは俺が足元に気をつけてなかったせいだから」
明らかに足を引っ掛けられたにも関わらずイルミは自分のせいだと言って、リディアをなだめきかす。
「あ、そうだ。お酒の注文入ってたんだった。ちょっと作ってくる」
ドリンクカウンターに向かうイルミ。自分で作って自分で持っていくと言う意思を感じる。パッと作った人数分のお酒をイルミは持って再びガラの悪い男達の元へ持っていく。
「お待たせいたしました」
「ちっ、またお前かよ」
当然のように悪態を吐く男。そんな悪態を気にする様子もなくイルミは酒の入ったグラスを並べていく。
「失礼します」
全て並べ終わってテーブルを後にしようとするイルミを
「おい、ちょっと待てクソガキ」
と、イルミを引き止める声がする。
「俺はさっきと同じ酒持ってこいって言ったよな? この酒、全然違う酒じゃねえかよ!」
完全に男のいちゃもんであった。確かにイルミは男達が注文した同じ酒を作り持って行っていた。しかし、そんな事は男には関係なかった。
イルミに対して理不尽に溜まった鬱憤をどうにか晴らしたいという気持ちでいっぱいらしい。
「それは大変失礼致しました。すぐに作り直すので、申し訳ありませんが、もう一度注文をお願いしてもよろしいでしょうか?」
イルミの淡々とした対応すら男は気に食わないのか、机を「バンっ!」と叩いた男は立ち上がり、ついにイルミに掴み掛かった。
「テメエ俺を舐めてんだろ! 俺は【Lv.20】の冒険職持ちだぞ!? 痛い目をみたくないなら今すぐ詫びろ! 泣いて無様に許しをこいやがれ!!」
イルミをシンドレア学院の生徒だと知らない男は自身の【Lv】を脅迫の道具として用いてきた。
「ですから、申し訳ありませんと……」
脅しのように出された【Lv.20】。今更その数値にイルミがビビる訳もなく。無様に泣く事もなく詫びる。
「テメエ!」
と振り上げられた拳、イルミは一発受ける覚悟をして目を瞑る。が、いつまで経っても拳が飛んでくることがない。
「イルミに手をださないで」
イルミが目を開けると、男の拳をコーデリアが片手で受け止めていた。
「ぐ、離せ! 離せよ、このガキ!」
自分よりも一回りも歳の違う子供、それも女の子に軽々と受け止められた男。焦って拳を引こうとするがピクリとも動かない。
「離さない」
頑なに離そうとしないコーデリア。受け止めた拳の握る手に少しずつ力が加わっていき、痛みで男の顔が歪む。
「お、おい、テメエら見てないで、加勢しやがれ!」
突然の事で身動きが取れなかった男の仲間達もその声でハッとし立ち上がる。が、
「お、おい! 何だこれ! 冷てえ! 動けねえぞ!?」
仲間の一人が悲鳴に近い声を上げる。よく見ると男達の足元は氷に覆われ固められてしまっている。
「黙って見てれば私の可愛いイー君を虐めやがって、お前らただでは済まさないわよ?」
愛想のかけらもない、全く目が笑っていない笑顔を浮かべるリディアは男達からしたらただただ恐怖でしかなかった。
「おい、何だよここ! 何なんだよこの店は!?」
男が叫ぶ。自分は一体何に喧嘩を売ってしまったのかと。
「辞めろ! リディア! 店の中で何してるんだい!」
ルリの声にビクリと反射的にリディアは窄んでしまう。
「店の中で暴れんじゃないよテメエら! 他のお客様に迷惑だろうが!」
「うっ、ごめん、母さん」
ルリの説教に素直に謝るリディア。
「コーデリア、そいつの手を離してやりな、リディアも魔法を解いてやれ」
「分かったよ、母さん」
とリディアが言うと、男達を拘束していた氷が綺麗さっぱりなくなった。緊張が解けたのか男達は椅子に崩れ落ちる。それを見たコーデリアも一向に離そうとしなかった男の手を離す。
解放された男は苦悶の表情を浮かべながら手の無事を確認する。
「さて、お前達。ウチの店員が悪かったね。店主の私から謝っておくよ。それでお前達から何か言うことはあるかい?」
魔法や拘束から解放された男はしばらく呆然としていたが、ハッと気を取り直し今までの怒りが再燃したのか勢いよく立ち上がり言う。
「ふざけんな! 客の俺達をこんな目に合わせやがって! 金だ金! 慰謝料を払いやがれ!」
「はぁ……」と残念そうに溜息を吐くルリ。
「元はと言えばテメエらがウチのスタッフに嫌がらせをしたのが原因だろうが。それを何だ? 詫びの一つもなく、更に金を払えだ? 舐めたこと言ってんじゃねえよチンピラ共が!!」
今まで感じた事のない圧倒的迫力を前に男の目からは自然に涙が零れ落ちていた。
「ごめんの一つも言えねえようなら、もう客でも何でもないね。おいルディア」
「はいはい、母さん?」
今まで厨房に引っ込んでいたルディアが呼ばれて出てくる。
「アイツら死なない程度に懲らしめてこきな。なに店の外なら暴れても構わんさ」
「了解、母さん。それじゃあ、お前ら行こっか?」
満面の笑みを浮かべ仲のいい友達に言うように肩を抱きルディアは誘う。
「あの、許してーー」
「もう遅い。さぁ諦めていくぞお前ら! それとも無理矢理にでも連れてかれたいか?」
「ぎっ」っと肩を抱かれた一人が悲鳴を上げる。見れば抱いた方の手に力が入っているようであった。
男達は絶望に塗れた表情で店の外へと誘われていく。
「ねえ母さん、私も行って来てもいい?」
「駄目だよ。今から忙しくなるんだ」
そういうと、ルリは大きな声で
「騒がして悪かったね! お詫びといっちゃ何だが今日は特別に安くしてやる! じゃんじゃん注文していってくれ!」
ルリのその言葉に客達から大歓声が上がる。
「さ、忙しくなった。それじゃあ、お前らしっかり働いてきな」
そう言い残してルリが厨房に戻ると、活気づいた店内では注文が止まなくなったのであった。
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