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土下座から始まる異世界放浪  作者: 榊葉梓
ダンジョン都市カサンラカ
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第20話 買い物をしよう

 奴隷達と生活を始めて一週間が経過した。私がまず最初にしたことは服と靴を調達することだった。着の身着のままで此処にやって来たのだ。必要な物を揃えるのは雇い主の義務だと思うからね。

 「今日は服と靴を買いに行くよ。」

 朝食の終わりに買い物に行くと告げれば

 「本当に良いのですか?私達は奴隷ですよ。」

アイラ達は恐れ多いとばかりに恐縮した。

 「散財しろとは言ってないよ。必要な物を揃えるのも主人の務めだからね。君達には店舗や宿泊施設の従業員になって貰うから身嗜みや身の(こな)しも必要なんだよ。勿論、それを護衛する皆も身嗜みを整えて舐められないようにしないとね。」

 私の言葉に納得したのか、皆は私の意見に従ってくれるようだ。

 こうして彼等を大商会ヴェニスに連れて行った。

 「いらっしゃいませ、ヒヨリ様。今回はどのようなご用件でしょうか?」

 この大商会ヴェニスの会長であるグリッド・アルマ自ら出迎えに元冒険者達は驚きで固まっている。

 何故彼が私を出迎えているかというと、定期的に砂糖・塩・胡椒を大量に卸しているからだ。VIPな取引相手ということになる。

 「彼等の服と靴を買いに来たんだ。服は一人当たり普段着の服を5着ずつ用意して欲しい。非戦闘員の女性陣にはメイド服、男性陣には執事服を3着ずつ、戦闘員には此方がデザインした戦闘服を3着ずつお願いしたい。」

 「畏まりました。オーダーメイドして頂いた服には刺繍することが出来ますが、どうされますか?」

 刺繍は秋月(あきつき)の家紋を使うので良いだろう。私は自分の家紋を手帳に描いて戦闘服のデザインと一緒にグリッドに手渡した。

 「メイド服と執事服、戦闘服はオーダーメイドで頼みたい。」

 「分かりました。では採寸を済ませましょう。」

 店員が奴隷達を採寸部屋に連れて行った。私はグリッドと商談することにした。

 「私も店を持つことにしたんだ。勿論、塩・砂糖・胡椒は此処にも卸すことにするよ。それとは別にこれを委託したいなって思ってね。私ではまだ王都に伝手はないからグリッドさんに先駆けで売って欲しいんだよ。」

 彼に見せたのは缶詰と袋ラーメン、ドライスープだ。

 「これは何ですか?」

 疑問符を浮かべるグリッドに

 「携帯食になるかな。調理場を貸してくれれば分かるよ。」

調理場を借りたいと申し出る。彼は快くOKを出してくれた。

 お湯を沸かして、ラーメンとドライスープにお湯を入れる。空間魔法(アイテムボックス)からスプーンとフォーク、丼ぶりとコップ、皿を取り出す。

 皿には缶詰の中身を盛り付け、丼ぶりにラーメンを入れ、コップにはスープを注いで彼の前に差し出した。

 「まぁ、食べてみてよ。」

 フォークとスプーンを渡して試食を促す。初めての食べ物に戸惑うグリッドだが、美味しそうな匂いに釣られてラーメンを食べ始めた。

 因みにラーメンの味は醤油、スープは野菜たっぷり卵スープである。缶詰は鯖の味噌煮にした。

 「こ、これは美味しいですね。重層な味わいのスープ、すばらしい香りの麺が絡み合って楽園のようです。これは魚を使っているのですね。何とも贅沢な!保存食にしては贅沢ですね!」

 鯖の味噌煮を口の中に放り込んだグリッドは目をカッと開き

 「しっとりやわらかく、温かくて甘いですな。それに魚臭さがないとは!素晴らしく美味しいですぞ!スープも期待出来ます。」

美味しいと食べ尽くした。最後に残ったスープを一口飲むと

 「味も程よい塩加減で具材がタップリと入っていて豪華な仕上がりですね。私が今まで食べた中で最高の食事でした!!今まで食べてきた食事がゴミのようです。」

美味い、美味いと喜んで食べてくれた。

 「この商品は3年は保存がきく。お湯を注ぐだけで誰でも作れるからヒットすると思うんだよ。」

 「これをうちの店に卸してくれるのですか?」

 「そのつもりだよ。勿論、私の店でも取り扱うけど種類は被らないように調整はする。先駆けでこれを販売して欲しいんだ。その上で別の種類が私の店で買えると宣伝して欲しい。ダンジョン都市なだけあって冒険者には需要があるんじゃないかな?」

 結構な金額が見込めると思うよ、と囁けば

 「そうですな!是非とも我が商会で取り扱わせて欲しいものです。」

了承の言葉を貰った。

 「売り出す金額ですが、袋ラーメンは1袋銀貨1枚、スープが銅貨5枚、缶詰が銀貨2枚でどうかな?」

 袋ラーメンは単価50円ぐらいだし、スープの単価は200円、缶詰は100円だ。ぼったくりな値段だけど中堅の冒険者なら金を持っているだろうから買うんじゃないだろうか?

 「分かりました。売上はいつもの比率で良いですか?」

 「それで良いよ。私の店では少し値段を安くして売るけど、此方に卸す分は店頭に並べないから特別感を出せるんじゃないかな?」

 「それもそうですね。他に種類を増やして頂けるようであればいつでもお声がけ下さい。」

 狐と狸の化かし合いをしつつ、採寸が終わるのを待った。

 採寸が終わったら店内でそれぞれ普段服を購入した。

 「古着じゃないのが良いね。」

 「良い商品をカヌートから安く仕入れていますから。」

 とはいえ古着だと1着銅貨3枚前後だが、商会では新品で銀貨1枚前後の値段になる。地球に比べたら凄く安いんだけどね。

 「靴もオーダーメイドにしてくれるかな?このデザインで作って欲しい。」

 ローヒールのパンプスに革靴、戦闘用に鉄板仕込みの靴を依頼した。

 「斬新なデザインですね。このデザインを白金貨1枚で買わせて頂けませんか?」

 「別に良いけど、紋を消したデザインにしてくれよ。」

 「それは構いません。特に女性のローヒールになっている靴は素敵ですね。とても上品でありながら可愛らしいデザインです。」

 靴を絶賛するグリッドから白金貨1枚を受け取る。

 そろそろ服と靴を買い終えたようなので、最後にグリッドに

 「このデザインのハンカチーフを60枚用意して欲しい。」

秋月(あきつき)の紋をあしらったハンカチを渡した。是非とも参考にして複製して欲しい。

 「分かりました。お会計は女性の普段服が金貨8枚と銀貨9枚、男性の普段服が金貨13枚、靴が金貨16枚、各種オーダーメイドが金貨751枚ですので、合計で金貨788枚と銀貨9枚になります。ヒヨリ様には良い商売をさせて頂いてるので金貨700枚で良いですよ。」 

 金貨88枚も浮いた!ちょっとラッキーな気分だ。

 荷物は空間魔法(アイテムボックス)に収納し、私達は自宅に帰ることにした。


 後日、ヴェニスで売り出した商品が爆発的ヒットしたせいで、開業をせっつかれる羽目になるのであった。

 

 

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