バイクの男
おれが郵便局で
配達の仕事をしていた
時の話だが
おれのすぐ側に
髪の毛を金色に染めた
バカヤンキー兄ちゃんがいた
そいつは乗っていたバイクから降りると
おれの配達の邪魔になるにも
関わらず
そこの団地に住んでいる
ダチ公を呼んで
おれの赤バイクの前で
タバコを吹かし始めた
季節は真冬日で
道路のところどころに
雪が残っていた
おれはそのヤンキー兄ちゃんの前で
配達中にも関わらず
立ち往生してしまった
おれは無造作にバイクを停めた
ヤンキー兄ちゃんに
いささかムカついた
「この野郎…」とおれが小声で
ボソッと思わず口にすると
そのヤンキー兄ちゃんは
少しビビリ気味になって
慌てて自分のバイクを
そそくさと
どかし始めた
おれは半ば拍子抜けして
半分罪悪感を
感じながら
今どきの若い奴は
イキがっている割には
意気地なしなんだな、と思った
おれはその日の仕事が終わり
家に帰ってから
親父にそのことを話した
すると親父は
「この野郎だなんて
言うモンじゃない
おまえはまかりなりにも
郵便局で働いている
社会人なんだぞ
そんなヤクザみたいな口の利き方を
するモンじゃないぞ」
「いや、思わずこっちも
言っただけだよ」
「思わずったってもしも相手が
凶暴な奴だったらどうするんだ
普通にどいて下さいと言えば
それで済むことじゃないか」
「分かった、分かったよ」
親父は生後間もない
孫娘を抱っこしながら
「あのおじちゃんは
あんな恐いことを言う人だよ
恐い、恐い」
そう言って孫娘をあやした




