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エッセイ

ちんまん

作者: フーツラ

 上野から御徒町は雑多な店と様々な人種、幅広い年代の人が入り混じる賑やかなところだ。


 線路沿いの露店では食中毒を覚悟する生牡蠣や得体の知れない動物の肉が平然と売られている。その様子に驚いて地下街に潜ると、今度は豚の頭やカラフルな大魚を無愛想な中国人が売り捌いていて逃げ場がない。


 さて、そんな素敵な上野・御徒町周辺でオススメの店を紹介しよう。店の名前は珍満ちんまん、大衆中華だ。


 珍満の扉を開けると先ず目につくのは真っ赤なトレーナーを着たホール係だ。ホール係のテーマカラーは赤らしく、夏場は赤いTシャツになる。


 ピーク時に二人以上で行くと待つ事もあるが、一人だとサクッとカウンターに座れる。座るとさっと麦茶が出されるので、秒で飲み干し注文するのはもちろん瓶ビールだ。


 この手の店で酒を飲む時は瓶ビールが一番だ。衛生なんて観念がない店で生ビールなんて正気じゃない。頼む奴がいたら全力で説教する。瓶ビール一択なのだ。


 さあ、瓶ビールの栓が抜かれて手酌でグラスにビールを注いだ後に注文するのは餃子とおつまみチャーシューだ。おつまみチャーシューはすぐに出てくる。ビールとチャーシュー、いいじゃないですか? 誰もが喜ぶセットですよ? 肉厚なチャーシューに辛子をつけて召し上がれ。


 しかしここで満足してはいけない。本命は餃子。餃子なのです! 餃子担当のお爺さんがタバコを吸い終わると、やっと餃子の調理が始まります。えっ? 電子タバコ? んなわけない。厨房で堂々と紙タバコを吸ってから焼きに入ります。


 何事にも準備は必要。高く飛ぶにはしゃがむように。美味い餃子にはタバコなのよ。これは私が最近知った真理の一つです。アカシックレコードにも刻まれている。餃子の前にはタバコ。みんなメモって! 老若男女、魂に刻んでください。


 そうしてやっと出てきた餃子はもっちり系なのよ。一見ドライに見える咥えタバコのお爺さんが焼き上げるのは、人生の澱が詰まったかのように具沢山の餃子なのです。


 もうやめて! これ以上は頬張れない! でも、箸は進み次の餃子が入ってくる。これは自分の意志のようで、違う。美味さによる暴力よ。私は蹂躙されて上野御徒町の路上に捨てられた。


 翌日、唇をさすりながら思い出す。さて、あれは何だったのか? 餃子? 否、何か熱くて美味くてお爺さんの何かが詰まった小麦粉に包まれたもの。うむ。やはり餃子だな。餃子に決まっている。


 でもね、思い出して欲しい。一皿でここまで語りたくなる餃子がありますかと!? それはつまり、珍満の餃子なのです。

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