表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

第8話

静夜『夏川様喜んでくれるといいなぁ…』



指定された時刻になり、剣都のいる部屋へと夕食を運んでいる静夜と空珀



空珀『そうだね、喜んでくれるといいね』



うんうん、と静夜の話に空珀は頷きながら剣都がいる部屋へと向かう




静夜『夏川様ー、お夕飯の準備が出来ましたので参りました』



こんこん、とドアをノックし来たことを知らせるが何の反応もない




静夜『……?夏川様?夏川様〜』




聞こえなかったのかな、と静夜はもう一度ドアをノックするが先程と同じで反応がない




静夜『空珀、夏川様留守かな?』


空珀『まさか、フロントには瑛良がいた、その間に瑛良は夏川様が外に出た様子は見てないし外の庭に行こうにもやっぱりフロントを通らなきゃ行けないからないでしょ?もし行ってたら瑛良から連絡が来るはず』


静夜『じゃあお風呂に行っちゃったとか?』


空珀『だとしても絶対エレベーター使うだろうし…』


静夜『階段使ったかもしれないよ?』


空珀『……ちょっと見てくるから、そこで待ってて』



そう言い残し、空珀は走って大浴場の方へと駆けていく







静夜『夏川様、夏川様〜!いるなら返事してください…!』



空珀が戻ってくるまでの間、静夜は何度も呼びかけ瑛良は内線で部屋へと電話もしていたがそれも出る気配が一切ない




空珀『静夜……!』



ゼーゼーと荒い息をしながらも空珀が走って戻ってきたのだ



静夜『夏川様は…!?』


空珀『はぁ…はぁ……っ、それが…それが……っ』



静夜は焦った表情で空珀を見つめ、走ってきた空珀は膝に手をつき肩を上下させ呼吸を何とか整え姿勢を立て直すと静夜の事を真っ直ぐに見つめた




空珀『…それが、それが………いないんだよ、夏川様が…ッ』


静夜『…え……?』


空珀『浴場も見た、一応庭の方も万が一庭で迷ったかもしれないでスタッフしか入れない方も見た、けど、いないんだよ……』


静夜『どう……いうこと……?』




外に行く為に通るフロント前も通ってない、仮にスタッフの部屋がある方も1階のフロント前を通らなければ行けない為仮に行ったとしたら瑛良が声をかけるはずだ



空珀『それに防犯カメラの映像も見た、けど夏川様は外に出たという記録がない、ここに入ってきたきりって事』


静夜『てことは……』



ヒュッと静夜は息を飲み顔を真っ青にさせた




空珀『とりあえず、中に入ろう』



空珀はスペアの鍵を取り出した、もし万が一、客が中で何かあった時の為、又は貸与した鍵を持ち先に部屋に帰った客が中から鍵をかけ寝てしまいまだ外にいる連れの客が中に入れない等々色々なシチュエーションが想定できる


そのため客に貸与する鍵とは別にスペアの鍵は宿側が持っているのだ



空珀『…よし、開いたよ』



鍵を回しガチャッと扉が開いた音が聞こえる




静夜『失礼します夏川様…!!』


空珀『ちょっと静夜食事をせめて中に持って入って!!』



夕食を乗せたワゴンをすっぽかして静夜は直ぐに部屋の中へと入っていきそれに対して空珀は怒りながらも中へと入っていった




静夜『夏川様…が、いない……?』


空珀『……夏川様がいない?』



とりあえず玄関の中へと空珀はワゴンをいれると、部屋の中へ上がり辺りを見回しながら静夜のそばに寄った




静夜『……もしかして……っ!』



ハッと静夜は急いである場所へと走っていく




空珀『……静夜…ここはー……』




急いで静夜の後を追いかけた空珀だが、静夜が向かった場所を見てどう反応したら良いのかと迷ってる様な様子を見せた




静夜『でも、でも…!中でもし気を失って倒れていたら……!』



焦ったように静夜は空珀に早く開けなきゃと言っている


その場所はこの客室に付いている露天風呂、部屋にいないのならもうここしかないと静夜は思い今扉の前にいる



部屋の中でも一応風呂なので扉があり更にその中に脱衣場、そして風呂とある



静夜『夏川様は1人なんだよ…!もし倒れていても誰も気付かないんだよ…!!』



だから早く、と懇願の目で静夜は空珀を見つめる



空珀『…あーもう、それは分かってるよ…!』



半ばヤケクソ気味になった空珀は、ノックをししばらく経っても返事がないので「失礼します」と一声をかけて扉を開け中に入る



静夜『服はー……ある』


空珀『という事は…』



二人揃って風呂場へと続く扉を見つめる



静夜『夏川様……!夏川様…!!』



扉に向かって静夜は呼びかけるが先程と変わらず返事が全く返ってこない




静夜『空珀どうしよう夏川様が……!!』



更に静夜は顔面蒼白になり「救急車呼ぶ!!?」とあわあわしている



空珀『静夜落ち着いて!!』


静夜『は、はい…!!』



空珀の鋭い一喝で静夜は思わず背筋をピンッと伸ばしたまま静かになった




さて、どうするかと空珀は悩んだ



確かに夏川剣都はこの部屋の中にいるだろうとは思うが、本当に倒れているのか


倒れているのなら一刻も早く助けなければとは思うがもし万が一、聞こえないだけだったのなら


仕事で疲れたから癒されにきた、と言った

そのためひとりの世界に入る為に音をシャットダウンしてたのなら、それならいくら呼んでも聞こえないだろうと


それでこちらが万が一ドアを開ければ向こうとすれば驚いて烈火の如く怒ってくるかもしれない、当たり前だ


だがここまで呼んで、ドアを叩いても何も無いとなれば本当に倒れているのかもしれないとも考えられる



空珀『……いや良い、静夜、開けるよ』


静夜『……!う、うん!』




怒られたのなら仕方ない、当たり前だ自分だって絶対に怒るだろうから、事情を聞けばまた変わるのかもしれないがそれを聞いたところでどうなるかはその人次第の為分からない


それでも怒るかもしれない、もしかしたら理解はしてくれるかもしれない



倒れていたのなら急いで救わなければならない、これで倒れていたら「もしかしたら怒られるかも…」で確認しなかった事を酷く後悔するだろう


それだけは絶対に嫌なのだ




空珀『…失礼します!夏川様!!!』



覚悟を決めてガラッと扉を開ける




空珀『夏川様……!』


静夜『…ぁ、夏川様が…』



静夜が指を指す方に視線を向ければ黒髪を団子にし背を向けて湯船に浸かっている剣都がいた



静夜『ぁ、あ……な、夏川様も、申し訳ございませ…っ!!』



至って普通に湯に浸かっていたと分かり静夜は顔を真っ赤にさせながら慌てているが空珀だけは慌てもせず剣都をジッと見つめていた



空珀『…静夜、タオル持ってきて』


静夜『…へ……?』


空珀『早く!!!!』


静夜『はい…!』



また思わず背筋をピンッと伸ばしてしまったが直ぐに空珀に言われた通りバスタオルを取りに中へと入った



空珀『ああやっぱり見てよかった……!』



本当は良かったなんて言いたくはなかったが、と内心思ったが今はそんなこと考えてはいられない



剣都は相変わらず何も反応せず湯に浸かったままだ



どういう事か




空珀『夏川様ー!夏川様!!大丈夫ですかー!』



剣都の両脇に手をいれてそのまま力を一気にいれて湯船から引き上げる



静夜『空珀!タオル持ってきた!』


空珀『じゃあそれ夏川様にかけて、今すぐ冷たいタオルとか水とか持ってきて!夏川様のぼせてる…!!』


静夜『え、え!!!?え、あ、あ、うん!!!』



色々情報処理が追いつかないようだったが、とりあえず空珀の指示に従う為にまた部屋の外へと出ていく




のぼせて急に立ち上がった為、血流の問題でそのまま意識を失い、不幸中の幸いと言うべきかそのまま座る様に湯に浸かってる状態となったのだろう


頭を打ってないだけまだ良かったとは思う




空珀『夏川様ー!夏川様意識ありますか!!?あるなら返事とか、指動かすだけでも良いのでサインください!』



少し手を叩きながらどうにかして剣都の意識を戻そうと空珀は必死に呼びかける



剣都『………ッ…ぁ……れ…君は……?』



何度も呼びかけているうちに剣都は意識を取り戻しうっすらと目を開けながら空珀の方を見る



空珀『……!夏川様、分かりますか?すみません勝手に入ってきてしまい、事情は落ち着いたら必ずお話しますので…』



歩けますか?と空珀は聞くと剣都はこくりと頷いた



剣都『…ちゃんと、行くからごめん……君先に…部屋に戻ってて……すぐ…行くから……』


空珀『……分かりました、何かあれば直ぐにお呼び下さい』



流石に剣都の色々な思いを汲み、空珀は剣都に言われた通り部屋に戻り剣都が出てくるのを待つことにした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ