プロローグ
とある温泉旅館から賑やかな声がワイワイガヤガヤと聞こえてくる。子供のはしゃぐ声、愉快な笑い声、この声を聞いてるだけで不思議と皆楽しく幸せな気分になってくる。
『ちょっと静夜!早く働けよ、馬鹿!今日はいつもより人数が多くて手が回らないの!』
『はいはい、これでも僕は急いでるつもりなんですけどねぇ…でも、あの二人ぼっちの頃よりかはマシだろ?』
『…まーね、今ならこんなに人がいる』
従業員がパタパタと忙しく廊下を往復してる中、二人の若い青年達の話し声
『ぁ、ほら空珀、お客様だよ』
『ほんとだ、今日は本当に忙しくなりそうだ』
二人のうち空珀と呼ばれた一人の青年がやれやれ、という感じの雰囲気を出しているがその表情は笑顔に満ちていた
『『いっらっしゃいませ、ようこそ月宮温泉旅館へ』』
ニッコリと二人の青年は優しい笑みを浮かべながらまた新たにやってきたお客様のおもてなしの準備をする
こんなに賑わってる温泉旅館の前は、幽霊が出るんじゃないかと噂されていたどんより温泉旅館の事なんて知っている者は地元民くらいだろう。
これは、二人の青年が月宮温泉旅館を繁盛させるまでの話である。