第五話 月夜の語らい SIDEジン
五話目です。
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あいつはこんな時間にだれか来るともっていなかったんだろう。俺が声をかけたら初めは俺を見つめたまま言葉を発さなかった。
おれがふざけて無視かよといったらようやく口を開きやがった。
「ご、ごめん。こんな時間に僕以外に起きてて、裏庭に来るとおもってなくて......」
そんなやつの反応がついつい面白くてさらにからかっちまった。
「そりゃ、そーか。確かにこんな時間にこんなとこに来るのはよっぽどの変わり者しかこねーわな。」
そしたら少しすねた口調になったのは最高に面白かった。
俺とあいつを満月が静かに照らす。
俺は月明かりに照らされ、剣を振るうあいつの姿が頭から離れないからあいつのもとに歩き出しながらつい聞いてしまった。
「なあ、この前言ってた騎士になりたいってのは本気なのか」
その言葉にあいつは少し呆けたかと思うと俺の目をまっすぐにみつけ言葉を紡ぐ。
「もちろん本気だよ。」
やつの言葉に迷いはなかった。
だが、俺にはあいつの憧れる騎士というものが理解出来なかった。
俺の知っている騎士は理想を常々口にし、俺と共にその理想を守るのを求めていた......
だけどその騎士は俺と共に理想を守ることなく呆気なく命を落として、俺の前から消えやがった。
だからつい意地悪な質問をしてしまった。
「そうか......本当の騎士は物語の中とはちがうんだぞ。あんなにすごくないんだぞ。」
その問いにあいつはすこし考え、答えを返す。
「騎士のお父さんがいた君が言うならそうかもしれない。でも僕はなりたいんだ。」
気が付けば俺はそいつの目の前に立っていた。
そいつの表情は真剣だった.......。
その表情を見て俺は自分が情けなくなったように思う。やっていることは単なる八つ当たりだ。
今はそいつに夢を追いかけさせればいい。まだまだ騎士になるには時間がかかるのだから、俺が口出しする理由なんてないんだから......
だから俺はそいつに応援の言葉を返すことにした。
それからそいつ......ブレイドとはしばらく裏庭で話をしていた。なんでもない話を月に照らされながらひたすらに話をしていた。
俺も同年代のやつと話すのは滅多になかったからつい気がゆるんでしまっていた。
だからだろう......本来なら気づけたはずの脅威に気付けなかったのだから。