第十六話 君の為に...... ジンStory
月の光さえ届かない暗い路地裏を必死に走る男がいた。彼は悪態をつきながらどこまでも走る。時折後ろを見ながら路地を右へ、左へ走る。男の体が悲鳴を上げたところで一息をつく。そして後ろを振り返り誰もいないことを確認し、己の不満を喚き散らす。
「くそっ!!この儂が何をしたというのだ。少しばかりこの国の腑抜けに気合をいれてやろうとしただけではないか。」
「その考えはご立派だが、手段がいけなかったな。」
男のすぐ後ろからその声は現れた。男が振り向くとそこには黒い服を身に纏い、その右手には白銀の輝きをもつ片刃の刃が握った1人の青年がいた。
「それ以上口を開いて、この国の空気をよごすんじゃねえ」
青年がそういうと男の喉元に刃をすべらし、それはもう二度と口を開くことは無かった。
今日も仕事を終え、とある部屋へと向かう。いつもと変わらぬ無駄に豪華な装飾をされている部屋の扉を開け中に入る。それと同時に中からあいつの声がかけられる。
「ジン!!お帰りなさい。」
その声の主に片膝をつき右手を胸元にあて、言葉を返す。
「ただいま戻りました。ティア姫」
そこにいたのは金色の髪に翡翠の瞳をもつ帝国の、この世界の誰よりも美しいとされる姫。
アイギス帝国第三王女ティア・アイギスだった。
俺が引き取られたのはアイギス帝国宰相、ゼロ・イクシードという男のもとだった。俺がそこで与えられた役割は、ティアの友人兼護衛というものだった。ティアは帝国の誰にも愛されている姫だが、その立場上友人を気軽に作ることができず父親に相談したところ、宰相のゼロが孤児を引き取り、その孤児を友人にすることになったらしい。孤児にした理由は孤児なら何かあった時に処理しやすいからだと俺は思っている。
仕事としては午前から夕方まではティアと過ごし、夜は自由時間というなのティアに害する存在の駆除だった。
最初のうちは帝国をさっさと出て行ってブレイドのもとに行くことを考えてばかりいた。
しかしティアと出逢い、そしてこの3年間ティアの護衛として、友として過ごしていくうちに俺は、ティアを守りたいと思った。
楽しげに話をしてくれるティアの姿を見ながら俺は物思いにふける。
もし君の為に俺は人を殺しているとしったらどう思うんだろうか。
君が素敵と言ってくれてこの父の形見を血で汚しているとしたら......
そして君が最も大切に思う友人という存在を俺は裏切っていると知ったら......
ブレイド、もう俺は君の隣に立つことは出来ない......
十六話です。感想、ブックマークよければお願いします。




