第十話 月下の死闘 SIDEブレイド
十話です。
魔獣が低い唸り声をあげて爪を振り下ろす。僕は剣の腹でそれを受け止めるが力の差で少し後ずさる。続けざまに反対の爪が横殴りに襲う。後ろに跳び躱す。着地と同時に牙で食らいつかんと魔獣の顔が迫る、その顔を剣で横殴りにする。その勢いで魔獣の顔がそれ僕のすぐ横の空間を食らう。冷たい汗が頬をつたう。どれほどの時が経ったんだろう......僕にはジンが走り去ってから途方もない時間が経ったように感じた。ジンは皆に伝えてくれたのだろうか。孤児院は静まり返っている。
顔を殴られた魔獣は怒りのような咆哮を上げ、その紅い瞳で僕を睨みつける。やつの後ろ脚に力が入る。跳びかかってくるつもりだ。僕は剣をまっすぐに構える。魔獣が跳びかかってくる。それに合わせて体を右斜め前に進めて跳びかかってくる魔獣に剣を合わせる。牙と剣がぶつかり合う激しい音が響く。カウンターがうまく入った。しかし魔獣はそれでもひるまずに爪を振るう。僕はそれを時には剣でうけ、時には躱す。先ほどから何度も繰り返していることだ。
だが、僕の剣では魔獣の体は傷つけられず、体力は消耗していくばかりで時が経つにつれてどんどん体の動きが鈍くなりつつあるのを感じる。魔獣もそれに気が付いているんだろう。より僕を消耗させるためにタイミングにずれを出し始めている。こっちは集中を切らすわけにはいかないから上手い戦略だと思う。
再び爪が襲ってくる、それを剣で今までのように受け止めたが、そこで魔獣は今までにない行動をしてくる。爪を剣で受け止められた魔獣は体を回転させ、その長い尻尾を鞭のようにしならせ僕に叩きつける。それを予想できなかったの僕は脇腹にそれを食らってしまい地面に体をぶつける。一瞬呼吸ができなくなる。剣も手から離れ、まずいと思ったのもつかの間、魔獣の爪が僕に振り下ろされる。
......ジン、ごめん。死なないっていったのに、守れそうにないや。
祈るように僕は目を閉じる......僕の命を一瞬で奪う一撃は訪れなかった、代わりに聞こえるのは音だった。さっきまで僕と魔獣が奏でていた剣と爪がぶつかり合う音だった。そして、声だった。
「何、あきらめてんだよ。馬鹿かお前は......これから反撃のはじまりだってのに。」
その声に目を開けた僕の前にあったのは右手で持つ銀色の片刃の剣で魔獣の爪を受け止めたジンの姿だった。




