第98話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
魔物暴走での対応を評価され、銅級冒険者に認定されたアリステア一行。遠征先への差し入れを購入したり、『コーンズフレーバー』でお昼を食べて挨拶をしたり。出発に備え、ゆっくり身体を休めます。
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(まぁ、準備といっても、身の回り品ぐらいなんだけどな)
出発は明日の朝なのに、あっという間に準備が整ってしまい、手持ち無沙汰だ。
どうしようか考えているところに扉をノックする音が響いた。
「アーティ、私です」
フランである。
「どうぞ~」
「準備終わりました?荷物少ないからすぐ終わっちゃいますよね」
「そうなんだ。する事無くて暇でな」
「向こうに着く前に、決めておいた方が良い事を思いついたのですが・・・」
「おお?何だ?」
「私達の事は誰にどこまで話します?」
「あ~そうだな・・・」
アリステアは腕を組み目を閉じる。
「まず、ライアルパーティの4人は確定だな。デヘント達はどうするか・・・キースも顔見知りだし、突っ込んだ話になる可能性もあるしな・・・」
「デヘントだけには伝えておいても良いと思います。デヘントのパーティメンバーが怪しんだりしたら、デヘントから説明してもらいましょう。後、アリステアの話をキースに振るな、というのも言っておいた方が良いですね」
「そうだな。いや・・・それにしても・・・」
「どうしました?」
「先日も実感したが、本当に色々な設定が酷いな・・・いくら家出されて慌てていたとはいえ、これはいずれ破綻するな。「白銀級冒険者アリステアは私」というのも含めて、キースに全部正直に言う日もそう遠くない気がするぞ」
「確かにそうですね・・・心の準備だけはしておきましょう」
「あぁ、クライブにも伝えておいてくれ」
「承知しました」
(アーティなら、面倒になったら全部自分から言ってしまいそうよね。でも、それはそれでスッキリして良いかも)
その日の夕食も、昨日と同じ「楡の間」でのブッフェと鉄板焼き形式だが、メニューはまたがらりと変わっている。その辺のレパートリーの多さは、さすがは大貴族の屋敷の料理人である。
昨日と同じなのは席順と、キースと両隣との間隔ぐらいだ。
(今日で終わりだから我慢するか・・・)
「キース、その青いプレートは・・・銅級の冒険者証ですね?」
席について直ぐに、エヴァンゼリンが気が付いた。
「はい、魔物暴走の件での対応を評価するという事で、いただきました」
「それは素晴らしいですね。確かに今回の活躍は認定に値するでしょう。おめでとう」
元国務長官のエヴァンゼリンは、当然認定の基準を知っている。その彼女の目から見ても、要件は十分満たしていると感じた様だ。
「はい、ありがとうございます」
「あなた方なら、銀級はもちろん、金級だって夢では無いでしょうね。活躍を楽しみにしていますよ」
「金級ですか・・・」
金級冒険者はエストリア王国650年の歴史上、3人しかいない。
自らの命と引き換えに多くの人々を救った魔術師アイザックと薬師のクーンツ、(アイザックは死んではいないが、生きていただけだ)と、ダンジョンを発見・確保し、今も莫大な金を国庫にもたらし続けている白銀級冒険者アリステア。
(それに匹敵する成果・・・何をすれば良いのだろう・・・?)
別に手柄が欲しくて冒険者として活動する訳では無いが、他人の役に立って喜んでもらえたら素直に嬉しいし、それを第三者から評価してもらえたら、当然やり甲斐や達成感を覚えるだろう。
しかし、人を助ける=それが原因で苦境に陥っている人がいる、という事だ。それを解消するまでその人は苦しみ続ける。それなら手柄を立てる機会なんて無い方が良い。
(まぁ、全てはその時の巡り合わせだからな・・・この世の全ての事なんて知り得ないし、苦しんでいる人全てを救う事なんて、神様でも無理なんだから。余りあれこれ考えても仕方がない)
エヴァンゼリンとリーゼロッテに対し、交互に「あーん」をされながらそんな事を考えるキースだった。
翌日朝、馬車に荷物を積み終わったと同時に、リーゼロッテ、エヴァンゼリン、ベルナル、アンリがやってきた。リーゼロッテとエヴァンゼリンは、備え付けのテーブル席に座る。貴族の一定以上の年齢の夫人は、立ったまま挨拶はしない。
お互いに朝の挨拶を交わし、馬車に乗り込む前に、代表してキースがお別れの挨拶をする。
「お館様、大奥様、ベルナル様、過分なおもてなしをいただきましてありがとうございました。名残惜しくはございますが、しばしのお別れでございます。またお目にかかる日まで、心身ともにお健やかにお過ごし下さいます様、お祈り致します」
「ありがとう、キース。こちらこそ、家の窮地を救ってくれた事、感謝してもし切れません」
「そうですよキース。もし公になってしまっていたら、どの様な事態になっていた事か・・・助かりました」
「清掃要員だけでなく、他の使用人も漏らしていたのではないか?皆罰するべきだ」と言われてしまったら・・・
「やっていない証拠」というものは存在しないのだ。しかし、ヴァンガーデレン家側がいくら否定しても誰も納得しない。
「キースさん、皆さん、魔物暴走の時、皆さんが来てくれたからこそ、私達の正体もバレずに済み、その後の解決に繋がったのです。本当にありがとうございました」
「ありがとうございます。うふふ、あの時のベルナル様をまた見てみたいですね」
「いやいやあれは・・・勘弁してください」
(冒険者ギルドで聞いた噂は黙っておこう)
「キースさん、皆さん、我が主達をお助けいただきありがとうございました。私も、先生の孫と会う事ができましたし・・・感謝しております」
「いつも美味しいお茶をありがとうございました。戻った時はまたぜひお願いします」
「かしこまりました。より腕を磨いてお待ちしております」
アリステアとフランが馬車に乗り込み、キースとクライブも馭者台に座る。
「クライブさん、ベルナル様に一つお伝えする事を忘れました。ちょっと行ってきます」
「おう、分かった」
キースは降りて馬車の後ろへ回る。
クライブには「ベルナルに」と言ったが、キースはリーゼロッテとエヴァンゼリン座る席に向かってゆく。
笑顔だが、内心は不安でいっぱいだった。
(本当に大丈夫なのかな・・・不敬罪とかで捕まったりしないだろうな・・・)
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時は少し戻り、朝食が済み、部屋で荷物の最終確認をしていた時だった。
部屋の扉がノックされ、仲間の誰かかと思いながら出てみると、そこには意外な人物がいた。
奧棟の受付を担当しているエリーである。
(そういえば、この人とは話をする機会が無かったな)
「キースさん、お忙しいところ恐れ入りますが、少々お時間いただけますか?」
その表情は少し思い詰めた風にも見える。
「はい、大丈夫ですよ。準備はもう済んでいますし」
「ありがとうございます。お邪魔します」
部屋のソファーに向かい合って座る。
「お話というのは、大奥様の事についてなのです」
「大奥様は、少し前まではお食事を召し上がる量も減り、笑顔も少なくなってしまい、ご気分と体調が優れない様に見えました」
「例の件も有りましたのでそのせいかとも思っていたのですが、どうもそれだけでは無く、やはりお歳からくる様々な事もあった様で・・・」
「あと数年の後に、ベルナル様が当主を引き継ぐ事が決まっておりまして、大奥様も楽しみにされています。しかし、口にするのも恐ろしい事ですが、このままではそれまでに万が一の事態もあるのでは無いかと、皆で心配しておりました」
「ですがここ数日、奧を任されている者達の間で、大奥様の表情、肌ツヤ、食欲、ご気分がとても良いと話題になっているのです」
「お家の一大事の案件が無事解決となったから、というのも間違いないのでしょうが、一つ気が付いた者がおりまして」
「その者が言うには、キースさん、あなたが屋敷に来て面会してからだと言うのです」
(!?)
「そ、そうでしょうか・・・?あの日、受け取り相手を特定する手順をご説明しましたから、解決にメドが立ったということで、それでお喜びになられていたのでは?」
「それは私達も考えました。先ほども言いましたが、もちろんそれも影響しているとは思います。ですが、あなたの影響だと裏付ける事実もあるのです。キースさんはご存知無いと思いますが、あの日あなたが退出した後、お館様と大奥様はあなたの事を話題に、少女の様に目を輝かせ頬を染め、それはもう大変な盛り上りだったのですよ」
(!? ) ※2回目
「学院首席卒業の魔術師の少年の話は、王都の貴族の間で噂になっており、お二人共関心をお持ちでした。伝手を頼って、あなたが作った魔法陣も手に入れました。その少年をアンリが連れてきたという事で、お二人とも面会の前から大喜びだったのです」
キースはあの時の二人の様子を思い出す。
二人の姿は、国家の重鎮たる大貴族の当主と、元国務長官としての威厳と迫力に満ちていた。音楽が流れる魔法陣を起動させても、ちらりとも笑顔を見せなかったし、心の内がそんな事になっているとは全く感じられなかった。
「キースさんが退出してすぐに、大奥様が研究書の写本を作りあなたに渡すのだと仰られ、自ら人を手配し、最終的な校正まで行われました。自ら率先し、嬉々として作業に取り組まれたのです。あの様な朗らかで曇りのない笑顔を見せた大奥様は、いつ以来か分からないぐらい、本当に久々でした」
「皆さんは、僕の存在が大奥様の心を満たし、気力と体力をみなぎらせている、とお考えなのですね?」
「はい、間違いありません」
「ふむ・・・そういう事だと、僕が出発してしまうと、また大奥様の体調とご気分は下がってしまうのでしょうか?」
「この2日間、あなたと過ごす事ができましたので、ある程度の期間は大丈夫だと思いますが、こればかりは何とも・・・」
正直、キースがそこまで気に掛ける義理があるのか疑問だが、自分にできる事ならしてあげたい、と考えるのがキースである。
「最後に何か、長く心に残る様な事でもできれば良いのですが、どんな事が良いでしょうね?エリーさん、何か思いつきませんか?」
「あぁ、ありがとうございます、キースさん!そうですね、先日お出かけした際に・・・」
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