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おばあ様は心配性 - 冒険者になった孫が心配だから、現役復帰して一緒にパーティを組む事にしました -  作者: ぷぷ太郎
【第四章】北国境のダンジョンでのあれこれと大貴族の悩み
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第96話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


アリステアのポロリにより、奥方様達に魔導具の事を含めて、全部説明する羽目になったアリステア逹。ですが、どうやらそれはついでで、本当の目的はキースについての昔話だった様です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


妙な話し合いの翌朝、ヴァンガーデレン家の人々への朝の挨拶と朝食を済ませ、アリステア達は馬車で冒険者ギルドへ向かう。


建物裏に馬車を止め、ギルドの建物内に入る。出発のピークは過ぎているが、まだまだ多くの冒険者が出発の準備を整えている。


「ちょっと空くまで待ちますか」


「そうだな。急いでいる訳でも無いしな」


4人でテーブルと椅子が新しくなった待合室へ移動する。



隅の席に座っていると、何やら視線を感じる。


ちらりとそちらを見ると、受付でやり取りをしている冒険者と職員も、出発の準備をしていた冒険者達も、皆がキース達を見ている。


(え、僕達?何・・・?)


キース達が固まっていると、サブマスターのサイモンが近寄ってきた。


「皆さんお帰りなさい。マスターが執務室にお越しいただきたいとの事なのですが、お時間は大丈夫ですか?」


「おはようございます。勿論大丈夫です」


「ではこちらへお願いします」


サイモンに案内されギルドマスターの執務室へ入る。


「おう、おはよう。お前さん達は王都にいなくても話題に事欠かんな」


挨拶もそこそこにディックが切り出す。


「おはようございます、ディックさん。魔物暴走の件ですよね?私達は応援対応をしただけですよ?」


「あぁ、勿論咎めている訳じゃないぞ。いい意味でお前さん達の話が広まっているんだよ」


4人は顔を見合わせる。


ディック曰く


・衛兵の詰所で応援を求められて、ものすごい速さで馬車ごと空を飛んで行った。


・魔術師の少年が、宙に浮きながら別の魔法を使い、魔物数百匹を一網打尽にした。


・外の魔物を退けた後、ダンジョンに入り魔物暴走の原因となったエンシェントドラゴンを倒し、人の頭ぐらいの魔石を持って帰ってきた。


・彼らの凄さに、貴族の我儘な坊ちゃんだった管理官がまともになった。


皆ポカーンとして言葉も無い。しかも、微妙に本当の事が混ざっていてタチが悪い。


「いやいやいや、いい意味で広まって無いですよ。全部が全部間違ってはいませんけど、ちょっと面白おかしくし過ぎでしょう。」


「そうなのか?お前さん達ならどれも有りうると思っていたのだが・・・」


ディックはニヤニヤしている。


「まぁ、誰もが閲覧できる様に、報告書の写しも置いてある。だがな、皆それを承知で先程の話をしているんだ。こちらではどうしようもない」


報告書の中から、公表しても良い部分だけを抜き出して作った写しが待合室に置いてあるそうだが、ほとんど見られておらず、見たとしても先程の話を皆で語り合っているという。


「確かに派手で面白いでしょうけど・・・」


「キース、私達はもうしばらく王都には戻らないだろうから、そっとしておこう。一々相手していられん」


「お、そうなのか?今度はどちら方面に行く予定なんだ?」


「はい、両親に卒業と就職の報告をしに行こうかと」


「アーレルジとの北西国境か・・・馬車で半月というところだな」


「ところでマスター、ライアルさん達の遠征の件は、一体どういう状況なんだ?もう4年だぞ?おかしいだろ?別パーティと交代して戻ってこれないのか?」


「あ~それがな・・・ライアル達を戻すには依頼者である国務省の許可が必要なのだが、何度調整に行ってものらりくらりとかわされて許可が出ない。俺は国務省は交代させるつもりが無いと考えている」


ディックがはっきり言い切った事に、4人が息を飲む。


「戦力として、冒険者たちの指揮官として絶対に戻せない、と考えているのだろう。それにな、これは3日程前に入ってきた情報なのだが・・・」


「アーレルジ国内の、魔石の管理や運用を担当している部署の責任者が替わったらしい。この人事で余計戻れなくなったと思う」


「・・・どんな人物なのか判っているのか?」


「現国王がまだ皇太子だった頃に付いていた、指導担当官の孫だそうだ。祖父の指導を受けて、腕も立つし頭も切れると評判の人物らしい。あそこは前任者が4年かけても稼働できていないダンジョンだからな、着任してすぐ解決すれば目立つし大きな実績になる。大規模な作戦を立てて、武力での制圧を仕掛けてきてもおかしくない」


「前の担当者は国王と姻戚関係にあったのだが、更迭されたのだろうな。さすがに国王もかばいきれなかったのだろう」


「なるほど・・・これは寄り道せずに、早く合流した方が良いかもしれませんね」


のんびり向かい、途中で興味深そうな遺跡や絶景ポイント等があれば寄っても良い、などと考えていたが、どうやらそういう状況でも無い様だ。


「そもそも、ここは何で4年も睨み合っているのでしょう?」


「そうか、公表されていないから知らないよな。一言で言うと、ダンジョンが生成した場所が微妙だったという事なんだ」


「北国境のダンジョンは、国境になっている川の中洲、という完全に中立な位置に生成された。だから早い者勝ちだった訳だが、ここは一目でアーレルジ側にあるというのが分かる」


(それなのに何で微妙で揉めるんだ?)


「ダンジョンが生成される時に出現する光の柱が立ち、それを見た両国の部隊が集まった。しかし、場所は川向うのアーレルジ側。エストリアの部隊は残念無念と引き上げようとしていた」


「その時、指揮所の近くにある村の村長と年配者達が面会を求めてきたそうだ。話を聞いてみると『あの辺りの土地はエストリアの土地だ 』と言うんだ」


(川が国境になっているのに川向うがエストリア?)


「75歳の村長と同世代の年配者達が10歳前後だった頃だから、65年前ぐらいの話なのだが、ダンジョンができた辺りは川が酷く蛇行していてな、大雨などで水量が増えるとすぐに水が溢れていたらしい」


「当然、エストリア側だけで無く、アーレルジ側でも被害が出ていた。そのため、両国で金と人を出し合って、できるだけ真っ直ぐになる様に川の流れを整備したそうだ」


「流れを変えた結果、その土地は川向うのアーレルジ側になった。しかしそれは、計画の段階から分かっていた事だからな。両国の間で『川向うだけど、ここからここまではエストリア王国の土地であり国民である』旨の覚書が交わされた」


「しかし、それから10年ほど経った頃、あの辺りで流行病が流行って、死者が多数出た。その結果、例の土地付近に住んでいた両国の人々は亡くなったり引っ越したりで、周辺は無人となった」


「よりによって、そこにダンジョンができてしまったのですね・・・」


「そういう事だ」


「だけど、それだけの大規模な工事をして覚書まで交わしたのでしょう?アーレルジ側にだってその記録は残っていますよね?それに則って決めれば良いのではありませんか?」


「アーレルジ側には、そんな工事をした記録は無いそうだ。周辺の住民に聞き取り調査をしたが、皆そんな工事は知らない、行われていない、という返答らしい」


「嘘ですね」

「嘘だろ」

「嘘ですな」


「ああ、嘘なのだろうが、それを否定できる材料が無い。覚書はあるが、『そんな物後から出してこられても本物という証拠はどこにある。信用できん』と言われて終わりだった」


「まぁ、そうなるよな・・・」


「だが、あちらさんも、こちらが見てる前でダンジョン周辺の整備を進める程、厚顔無恥では無いらしくてな。結果、お互いに引く事もできずに睨み合っている訳だ」


「護衛に来ているのが、エストリア屈指と言われるライアル達と、それに次ぐという評判のデヘント達のパーティという事は、向こうも調べがついている筈だ。これを他のパーティに替えたら、一気に制圧に動き出してもおかしくない」


「交渉の使節団と冒険者達が4年間駐屯する費用だけでも、大変な金額になりそうですな・・・」


「滞在の費用もだが、護衛の報酬は時間単位で計算だからな。しかも、ライアルさんとデヘントさんのパーティだ。エストリアで一番高額だろう」


「それに、トップクラスが下手に単価を下げると、他のパーティに迷惑が掛かります。『ライアル達だってこんなに取らんぞ』って言われてしまいますからね」


「ちなみに・・・幾らで契約しているんだ?」


「アーティ・・・」


「い、いや、単純に気になるだろ?国内最高峰がどれだけ貰っているのかがわからないと、自分たちの交渉の時に困るだろうし・・・」


「その理由はちょっと強引な気もしますが、確かに気にはなりますね。リーダーとして知っておきたいです」


「そうだろう?そう思うのが普通だ!」


キースが味方についた事で強気だ。


「他言無用だぞ。一人1時間2000リアルだ。戦闘になったら別手当が出るが、その金額までは分からん」


「2000×24時間×4人×4年間(1460日)=2億8032万リアルですね。デヘントさん達の分もありますから、単純に倍近くといったところでしょうか」


「もう簡単に損切りできませんな」


「ああ、これは確かにお互いに引けないわ・・・」


一般市民の平均年収が100万リアル程だ。


「しかし、ダンジョンさえ確保して稼働すればすぐに取り戻せる金額でもある。年間6トン産出、それをkg/400,000で売れば24億リアルの売上だ。人件費や各種設備投資の費用を含んでも、赤字にはならんだろうし、以降半永久的に黒字だ」


「うーん、やはり今のうちに向かうべきですね。両親やデヘントさん達に何かあっても困りますし・・・よし、それでは翌朝に北西国境に向けて出発しましょう。それに合わせて準備を進めます」


「「「了解!」」」


(この4人が加われば、戦力的にはこちらが有利にはなるだろう。それにキースは規格外だ。戦わなくても解決できる様な、突拍子も無い事を思いつくかもしれん。上手くいけばこの手詰まりの状況が解決するかもな)

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お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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