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おばあ様は心配性 - 冒険者になった孫が心配だから、現役復帰して一緒にパーティを組む事にしました -  作者: ぷぷ太郎
【第四章】北国境のダンジョンでのあれこれと大貴族の悩み
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第95話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


キースとヴァンガーデレン家のご夫人逹のやりとりに気を取られすぎ、つい自分たちの正体についてこぼしてしまったアリステア。後で詳しく説明するはめになりました。会食の最後にお礼の品をいただきます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「先日キースには渡しましたが、ヴァンガーデレン家の認識プレートです」


「・・・ですが奥様、私達は・・・」


アリステアが言いづらそうに切り出す。


「別にヴァンガーデレン家で囲い込もうという事ではありませんよ?あなた方が冒険者として十分な力量の持ち主である事は理解しています。魔物や他の冒険者に早々遅れをとる事は無いでしょう」


「ですが、旅をする上で、ある意味一番注意を払わなければならないのは、貴族です」


「あなた方はこれから国内を回られるわけでしょう?王都に住む役職持ちの貴族は、国王陛下を始め他の貴族の目もありますから、外聞を気にして行儀も良いのです」


「ですが、地方領主などは、周囲に他の貴族がいないせいか、自分こそが国王か何かのように振る舞う愚か者がいるのですよ」


「対貴族の場合、力押しだけでは解決できなかったり、周囲の人々を巻き込んだりする可能性があります。収めようとしたのに、逆に事が大きくなってしまう様な状況に陥るかもしれません」


「少し揉めただけででも、犯罪者として捕まる可能性もあります。領主が捕らえろと指示を出したら、その配下逹はそれを拒む事はできません」


「自分達に非が無いにも関わらずその様な事になってしまった時は、ヴァンガーデレン家の名前を出して、こちらに話を回してください。貴族相手の面倒事なら私逹の方が向いています」


「よほど小さな町や村でない限り、ヴァンガーデレン家に連なる者が、代官の役所や商業ギルド、冒険者ギルドで仕事をしています。その者に接触すれば、こちらまで話が届くようになっていますから」


「あなた方には本当に感謝しています。このようなものでお礼になるか分かりませんが、旅が少しでも快適に進めばと思います」


「承知しました。お気遣いありがとうございます」


3人はそれぞれプレートを受け取り、魔石に魔力を流した。


「あとキース、あなたに同じ魔術師として贈り物があります」


エヴァンゼリンがそう言うと、側仕えの女性が本のような、綴じられ表紙の付いた紙束をキースに渡す。


「先日話しました、エレジーアの研究書の写本です。時間がある時にでも目を通してください」


「大奥様・・・ありがとうございます!」


キースは目をキラキラと輝かせ頬をピンクに染める。


「喜んでもらえた様で何よりですよ」


(この顔を見られただけで、大急ぎで作らせた甲斐があるというものです)


「出発はどうするのかしら?明日すぐ出るのですか?私たちはいつまでも居ていただいても構いませんが」


「友人や知人への挨拶などもあるのではなくて?」


4人は顔を見合わせる。


先日、北国境のダンジョンに向かう際にきちんと挨拶はしている。


それからまだ半月も経っていないのに、また出発の挨拶というのも・・・という気もする。


「それは確かにそうですね。ですが、冒険者ギルドにだけは寄っておいた方が良いでしょう」


「皆さんが魔物暴走の鎮圧に協力したという話は、管理事務所から国務省に報告されています。当然、冒険者ギルドにも伝わっているでしょう。何かしらの話があると思います」


ベルナルも母の言葉に同意する。


(今度こそ王都に戻るのがいつになるか分からないものな・・・)


「承知しました。では明日の午前中にギルドへ行ってまいります。出発は・・・お言葉に甘えて、特別な事が無ければ明後日の朝という事でよろしいでしょうか?」


「あなた方が良ければその様に。ベルナル、アンリもよろしいですね?」


「承知しました」

「かしこまりました」


「では、名残惜しいですが、本日はこれにて解散と致しましょう。また明日の朝に」


リーゼロッテの解散の言葉を合図に、部屋の片付けと、アリステア逹の案内の為、側仕え逹が動き出す。


アリステアは、キースが先に案内され部屋を出て行ったのを見ると、フランとクライブを呼び止めた。


「2人とも、部屋に入ったらすぐそっちに行く」


「・・・?はい、分かりました」


真剣な、というか険しい表情のアリステアの様子を訝しく思いながら、2人は側仕えに案内されていった。


「どうしました、アーティ?」

「ご夫人方の対応の件ですかな?」


「まぁ、それも勿論あるのだが・・・」


2人の部屋に来たアリステアは「キースあーん事件」の時のエヴァンゼリンとのやり取りを説明する。


「あの瞬間にそんな事が・・・どうやらご夫人逹には初めから怪しまれていましたかな・・・」


「ベルナル様やアンリさんから、私達の普段の様子についても聞いていたのでしょうね」


「正直、王都で何日も過ごしたり、昔の知人達と接するハズでは無かったからな・・・人物設定の作り込みの甘さも出てしまった。勿論、一番の理由は『あーん』に気を取られた事だが・・・」


「で、この後説明すると・・・全部話すのですよね?」


「ああ。あの二人相手に隠し事は、私ではとても無理だ。なんか、そういう話術系の特性とかでも持っているのではないかな・・・」


王国屈指の大貴族の当主と「あの」エヴァンゼリンだ。戦う前から降参である。そもそも、そう思ってしまう時点でもう勝負になっていない。


「最悪キースにだけバレなければ良いのですから、それ程気に病まなくても大丈夫ですよ、アーティ」


「まぁそうなんだが・・・弱みとまではいかないが、外野に余計な事を知られるのが気に食わん」


「「それは確かに・・・」」


「ポカをしたのは私だから誰に文句を言えるわけでも無いが・・・よし、とりあえず風呂にでも入って、備えるか。あ、2人もその場に居てもらえるか?基本ありのままを言うだけだが、もし私が何か迂闊な事を言ったらフォローしてくれ」


「ええ、分かりました」



泳いで遊べるぐらいの大きさの風呂での入浴を終え、側仕えが都合を確認してきた数分後、リーゼロッテとエヴァンゼリンがアリステアの部屋にやってきた。


先程の「全部話す」という言葉通りに、アリステアは魔導具の出処も含めて、今回の経緯を全部話した。


その間、リーゼロッテとエヴァンゼリンは質問も挟まず静かに聞いていた。


「と、いう訳で今に至ります」


アリステアが話を終える。


「そんな魔導具があるとは・・・特に、特性が反映するというのが凄いですね。仕組みが全く思いつきません。今の世には、それだけの魔導具を作れる魔術師はいないでしょうね」


エヴァンゼリンがため息をつく。


基本、古代王国の魔術師達は、現在の魔術師よりも知識が深く、技術力も上だし魔力も多い。本当に同じ人間なのかと思うぐらいだ。



「アリステア、以前からあなたのお孫さんは、貴族達だけで無く国からも注目されていたのです。もちろんオリジナルの魔法陣の件もありますが、魔術学院は国営なのですから」


運営が国なのだから、成績も国に筒抜けである。


キース程ぶっ飛んでいなくても、学院の成績上位者は、どこでも引く手あまたである。


国務省内の魔法陣や魔導具関連の部署と、国王直轄の部隊である近衛騎士団が優先的に勧誘する、という暗黙のルールはあるが、残った学生も十分有望株なのだ。


その二部署が優先なのは、魔法陣や魔導具の開発・改良は、社会インフラや国内外の経済にも影響を与える可能性がある為、近衛騎士団の戦力増強=国王の身の安全に直結するからだ。


「先日、アンリが彼を連れて来た時・・・噂以上の利発さと可愛さの余り、年甲斐も無く二人で興奮してしまいました」


「勝手に認識プレートをあげたりしてごめんなさいね。嫌な気分になったでしょう」


「あ、はぁ、いえ、それは・・・」


「確かに、彼を一人で送り出すのは心配ですね。実際に妙な輩も寄ってきた訳でしょう?近くで見守りたいと思う気持ちはよく解ります」


「見た目良し、中身良し、魔法良しと三拍子揃いましたものね・・・ベルナルだってどこに出しても恥ずかしくありませんが、そのまま比較はできません」


「いろいろな噂が流れていましたが、どれも彼を褒める噂ばかりで悪く言う話は全くありませんでした。こんな事は今までありません」


「どうすればあの様な子に育つのでしょう。息子さん夫婦がいない時は、あなた達で世話していたのですよね?」


(そんな事急に訊かれてもな・・・)


「そ、そうですね。私達は、本人が興味を持ってやりたがった事をやらせていただけで・・・こちら程の大家になると、色々と難しいかとは思いますが・・・」


「やはりそうですか・・・好きな事程飲み込みも良く、熱心に取り組むものですもの」


(この流れ知ってるわ!カルージュでアーティとお茶している時と同じ展開よ!)


アリステアとフランでお茶をしながらキースの話をしていると、いつも最後には、キースを褒めちぎるだけの会話になってしまうのだ。可愛いから仕方がない。


結局、部屋には改めてお茶が運ばれ、大人3人組が知る、産まれてから魔術学院入学前迄のエピソードを話す事になった。


リーゼロッテとエヴァンゼリンは、身内しか知らない秘蔵のキース話を堪能し、夜遅くに帰っていった。


「結局・・・なんだったんだ・・・?」


3人は顔を見合わせた。


「やはりキースが目当てだったのですよ・・・」


「何やら変に疲れましたな・・・」


「そうだな。ありがとうな二人とも。思っていた展開とはだいぶ違ったが」


「確かに・・・ですが、あの様子ならヴァンガーデレン家がキースの敵に回ることはありませんな」


「そうだな。それは間違いない」


3人にとって最優先なのは、キースが余計な事に煩わされる事無く旅をする事だ。ヴァンガーデレン家がその力添えをしてくれるというのなら、いざという時には頼りにさせてもらおうと思う。


「じゃあ・・・寝るか」


「はい、おやすみなさい」


(やはり可愛いは正義なのよね。さすがキース)

ブックマークやご評価いただけると嬉しいですね!


お手数おかけしますがよろしくお願いします(*´∀`*)

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