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おばあ様は心配性 - 冒険者になった孫が心配だから、現役復帰して一緒にパーティを組む事にしました -  作者: ぷぷ太郎
【第四章】北国境のダンジョンでのあれこれと大貴族の悩み
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第94話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


無事ヴァンガーデレン家の屋敷に着いたアリステア一行は、リーゼロッテ、エヴァンゼリンとの会食に臨みます。しかし、2人が皆 (というかキース) を呼び出した本当の理由を察しピリピリムード。ベルナルが変な汗をかいています。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今日の会食のテーブルは「U」の形をしており、中に料理人が2名配置し客の対応にあたる。料理人の脇には温冷各種の前菜からメイン料理、サラダ、焼きたてのパン、スープの入った魔導具のケースが置かれている。


さらに大きな鉄板が設置され、脇には山盛りの海産物と肉、野菜も用意されている。ブッフェと鉄板焼きが合わさった様なスタイルだ。


「今日のように、年寄りと若い方が一緒に食事をするとなると、メニューや味付けに困ることが多いのです。そういう時にこの形は非常に便利なのですよ」


エヴァンゼリンが説明する。


今日の参加者は、10代後半のキースから20代後半のアリステア逹、60手前のリーゼロッテ、80半ばのエヴァンゼリンだ。通常のコース料理では全員が満足するメニューは不可能である。


「貴族らしくない」と感じる者もいるかもしれないが、「食事で苦痛を感じて(与えて)どうする」というのがエヴァンゼリンの考えだ。


(合理的で無駄な事が嫌いなエヴァンゼリンらしい)


アリステアはちょっと懐かしくも感じた。


「エヴァンゼリン=コストカッター」というイメージもあるが、それは少々短絡的であり、彼女の一面しか見ていないと言える。


確かに彼女は削りに削ったが、それは不要な支出であるから削っただけだ。それにただ削った訳でも無く、その分足りいていない箇所にちゃんと充てた。その見極めが天才的に上手だったのだ。


多くの敵を作る程に。


そんな事を思い返していたアリステアだったが、皆が席に着いたのを見て、またも顔を引きつらせた。


「U」の一番底の部分にキースの席があるのはまだ解る。


漏洩事件は、最終的にキースの策で解決したのだ。ベルナルとアンリは身内である為、一番に評す訳にはいかない。


よって一番の功労者はキースと言って良いだろう。


だが、なぜその両隣がリーゼロッテとエヴァンゼリンなのか。


キースを中心に右手前からリーゼロッテ、クライブ、ベルナル、左手前からエヴァンゼリン、アリステア、フランという並びなのだ。


ホストとして一番手柄のキースをもてなすという事なのか。だが、例えそうだとしても、この席順は無いだろう。


しかも、両隣の2人が妙にキースに近い。普通に顔に手が届くぐらい近い。「貴族の会食」という状況でこの近さは、密着と言っても良いぐらいだ。


(この2人いい加減にしろよ!露骨過ぎるだろ!)


アリステア逹のイライラは加速する。


「キース、この牛肉の煮込みは料理長の得意料理なのです。ぜひ試してちょうだい」


「はい、ありがとうございます・・・お、お肉が口の中でホロホロに・・・噛んでもいませんのに!」


「そうでしょう。三日三晩煮込むそうです。筋の硬い部分もプルプルした食感になり美味しいですよ」


「キース、お肉ばかりではいけませんよ。バランスよく食べなければ。サラダも専用の畑から昼過ぎに摘んできた物です。鮮度が違います」


「はい・・・これは・・・シャキッとした歯ごたえ・・・エグ味も無くほんのり甘くて!このドレッシングも酸味が爽やかで美味しいですね!」


「気に入ってくれた様で何よりです。そのドレッシングは私もお気に入りなのです。私達は気が合いますね」


「あら、先程のお肉のソースが口の横に・・・拭いてあげましょう」


「あらあらまあまあ」


キャッキャウフフと楽しそうな2人を尻目に、大人3人組は全く面白くない。


幸い(?)料理と酒は極上である。腹立ち紛れに食べまくり飲みまくる。


そしてベルナルは、そんな様子を虚ろな目で見ながら、一人で黙々と普通に食事をしていた。


(アンリからキースさんが非常に気に入られたという話は聞いていましたが、まさかここまでとは・・・)


4人組の来客のうち、一人だけこの対応というのは非常によろしく無いのは解っているが、正直自分ではもう手に負えない。


(皆さん申し訳ありません。僕は無力です・・・)



皆の食事の手がほぼ止まった頃合を見計らい、アンリがお茶の用意を載せたワゴンを押してくる。


「皆様、そろそろお茶をと思いますが、いかがでしょうか?」


「皆さん、お食事は満足いただいたかしら?」


「はい、十分いただきました。アンリさんのお茶の分を空けておきませんと」


キースが他の3人を見ながら答え、3人も頷く。


「ありがとうございます。それでは少々お待ち下さい」


このやりとりを合図に食事類の什器が下げられ、テーブルの内側にはアンリと補佐の女性が入り、お菓子類の入ったケースが設置される。


「母上、おばあ様、一件新しいご報告がございまして」


「あら、なんでしょう」


ベルナルはログリッチについて説明した。


「そうですか・・・あのポガチャルの孫が・・・」


「はい、その節は大変お世話になりました、お心遣いありがとうございました、と」


「ポガチャルは、美味しいお茶でいつも身も心も満たしてくれましたし、アンリを育ててくれました。それを考えればあれぐらいは当然です」


「その、引き抜こうとしていた貴族というのは、どこの誰なのでしょうね?家名は分かっているのですか?」


「いえ、ログリッチさんもそこまではご存知無い様でした」


「数年前に終わっているのでしょうが、話だけは把握しておきましょう」


「将来、彼をうちに迎える事もあるかもしれません。その時にちょっかいを出してこられても面倒です。備えだけは必要ですね」


「かしこまりました」



「キース、この細かくしたお茶の葉を混ぜた焼き菓子は、その日のお茶に合わせて混ぜる茶葉が変わるのです。今日だけの味をぜひ食べてみてちょうだい」


「それは貴重ですね!いただきます」


「はい、お一つどうぞ」


リーゼロッテが手に取りキースの口元に持ってゆく。


どう見ても「あーん」である。


(私だって学院に入ってからはやっていないのに!)


大人3人組はあまりの光景に目を剥いた。


(こ、ここまでされるとさすがに恥ずかしいな・・・)


と思いつつもキースは口を開けた。素直な良い子である。


「あ、あーん」


アリステアは、椅子にかけたまま地団駄を踏みそうになるのを懸命に堪えていた。


完全にキースとリーゼロッテの「あーん」に気を取られていたその瞬間。


「ところで・・・その身体はどうなっているの?アリステア」


不意に小声で話しかけられ、慌てて返事をする。


「え、あ、はい。これは昔遺跡で見つけた魔導具でして」


そこまで喋って気が付いた。


(今何と呼ばれ、誰に返事をしてるのだ?)


クライブはテーブルの向こう側、フランは左隣にいる。そもそも、2人が「アリステア」と呼ぶ事は無いし、魔導具について尋ねてくるはずも無い。


呆然としつつ、目線だけで右隣を見る。


そこでは、エヴァンゼリンが嬉しそうに微笑んでいた。


「色々あるのですねぇ・・・おやすみ前にでもお話聞かせてちょうだいね」


「・・・わかりました」


(やられた・・・リーゼロッテとキースに気を取られ過ぎた・・・)


(この席順、やたらとキースに構いつけ、挙句の果ての「あーん」・・・全て気をそらせる為の作戦だったか)


だが、アリステアの反省は若干ズレていた。


3人の正体>キースとの食事


ではなく


3人の正体<キースとの食事


である。


3人の事はあくまでもついでだ。解るに越したことはないが、キースとの食事は外せない。


アリステアが反省している横で、エヴァンゼリンとリーゼロッテは、目を合わせて小さく頷いた。


2人にとっては、キースと楽しく食事ができただけでも十分であるのに、アリステア逹の秘密まで手に入るのだ。万々歳である。


「では、そろそろお開きといたしましょう。最後に、皆さんに助力いただいた事に対するお礼の品をお渡し致します」


アンリが布の敷かれたトレーを手に捧げ持ち、リーゼロッテの横に付く。

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