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おばあ様は心配性 - 冒険者になった孫が心配だから、現役復帰して一緒にパーティを組む事にしました -  作者: ぷぷ太郎
【第四章】北国境のダンジョンでのあれこれと大貴族の悩み
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第93話

【更新について】


書き上がり次第随時更新となります。


よろしくお願いします(o_ _)oペコリ

【前回まで】


食堂の店主ログリッチは、以前ヴァンガーデレン家で雇われ、アンリのお茶の師匠でもあるポガチャルの孫でした。兄弟子であるアンリに更なる精進を約束したログリッチと別れ、一行は王都へ向かいます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


一行は、予定通り鐘2つ程でヴァンガーデレン家の屋敷に到着した。


キース以外の3人は、衛兵から来訪者用のプレートを受け取り、再度馬車に乗り込み敷地内を進む。


馬車寄せに着くと、門からの連絡を受けて待機していた担当者が、それぞれの馬車の脇に付き、扉と地面の間に踏み台を設置する。


彼らが扉を開ける事はない。乗っている人間の降りる準備が整っていない可能性もある。中に客がいるのがわかっている部屋の扉を、ノックもせずいきなり開ける様なものだ。


扉が開いてベルナルが降りてくると、担当者の若い男性から挨拶の声が飛ぶ。先日、アンリとキースが乗った馬車に付いた若者だ。


「ベルナル様、おかえりなさいませ!」


「ご苦労様ウッズ。久々だね。変わりないか?」


「はい!元気に勤めさせていただいています!」


「ふふ、それは何よりだ。後ろの馬車は大事なお客様の馬車だ。くれぐれもよろしく頼む」


「はい!お任せください!」


ウッズは、後ろの馬車から降りてきている一団に目を向けた。


(あの小さい少年が例の・・・冒険者で魔術師だという話だけど・・・一緒に降りてきたのはお仲間かな?)


前回キースが来訪した後、リーゼロッテとエヴァンゼリンが、初対面の一般市民である少年に認識のプレートを渡したという話は、あっという間に屋敷の中に広まった。


エヴァンゼリンの側仕え逹の責任者であるエレナ(勤続45年・屋敷で一番の古株)も「間違いなく初めて」と言い切る珍事だった。


(大奥様も魔術師だし、何か通じるものがあったのだろうな・・・)


ウッズは自分の中でそうまとめたが、実際のところは「とても可愛くて素直な良い子だから気に入った」だけである。


馬車寄せから屋敷に入り、奥棟の受付に向かう。キースは2回目だが、アリステア達は初めてだ。


これだけの大貴族の屋敷に入る事などそう無い。みっともなく無い程度に、廊下の壁面の凝った模様や置かれた調度品を眺めながら歩いた。


奥棟の受付に入る扉を開けると、受付担当のエリーが机の前に立ち待っていた。


「皆様いらっしゃいませ。ベルナル様、お帰りなさいませ。お役目お疲れ様でした」


エリーは深々と頭を下げる。


「エリー、ご苦労様です。お久しぶりですね。体調などいかがですか?」


「はい、最近腰が少々・・・ですが、ベルナル様が戻られると聞きましたら治りました!」


「それは良かった!エリーに何かあっては私も皆も困りますからね」


「またその様な・・・」


と言いつつ、エリーは嬉しそうだ。


(馬車寄せでもそうだったけど、挨拶だけではなく、必ず相手のことを気遣うような声をかけるんだよな。懐が深いというか、何事にも余裕があるというか)


生まれながらに社会的地位が高く、一般市民にも名前が通っているような、本当の意味で「偉い」人物は、一々相手に大きな態度など取らない。ちょっと偉い人間が一番偉そうにするものだ。


「今日の部屋は楡の間ですか?」


「はい、左様でございます。お二方ともお部屋でお待ちです」


「・・・もうお部屋にいらっしゃるのですか?」


「はい、いらっしゃいます」


「分りました。皆さんお待たせしました。行きましょう」


「楡の間」は、受付から5番目の部屋だった。小規模のパーティーや会食で使われる、いわゆる「バンケットルーム」という種類の部屋だ。


アンリが扉をノックすると中から「どうぞ」という声がかかる。アンリが扉を開けベルナルを先頭に部屋に入る。


ベルナルが母と祖母の方に視線を向けると、2人は椅子の前に立ち、自然と手を前で合わせるようにしてベルナル達をを待っている。


ベルナルは心の底から驚いたが、何とか表情には出さずに済んだ。小さい頃からの貴族教育の賜物だ。


(2人が先に部屋に入り、立って出迎えられた来客なんて、一体何人いるのだろうか・・・)


部屋の扉の脇からその様子を見ていたアンリは、驚きつつも納得していた。それだけでは無く、主人たちの胸の内を正確に分析していた。


(漏洩事件解決の決め手となった彼らに感謝を示す、というのも間違いないのでしょうが、先に部屋に来たのも立って出迎えたのも、『推し』が来るということで気が急いてしまい、落ち着かなかったというところでしょう)


「母上、おばあ様、ただいま帰参いたしました」


「よく戻りましたベルナル。役目を無事果たしたこと、お見事でした」


「とんでもございません。時間ばかり過ぎてしまい、その間お二人を始め、多くの方に手数と心配をかけてしまいました。お恥ずかしい限りです」


「絶対秘匿が条件の対応です。時間がかかるのは織り込み済みですよ。無事解決したことが何よりです」


「はい、ありがとうございます」


「さぁ、お客様を紹介してちょうだい」


ベルナルは、アリステア、フラン、クライブを紹介し、リーゼロッテとエヴァンゼリンは、3人それぞれに、魔物暴走の鎮圧と漏洩事件解決の協力に礼を言った。


そして2人がキースの前に来る。


その瞬間大人3人組は気がついた。


この2人のキースを見る目と表情が、自分逹と同じであることに。そして招待の本当の理由に。


(この2人!キースに会いたかっただけじゃないか!)

(まさかフランの言った通りだったとは・・・)

(やはり!そうだと思ったのです!)


3人で視線を交わし、小さく頷く事で意思の疎通を図る。


「キース、報告書を拝見しました。あの時のあなたの策が見事にうまくいきましたね。献策感謝に堪えません」


「助かりましたよ。ありがとうキース」


2人はこれ以上ないような満面の笑みだ。


(私たちの時の笑顔とは質からして違うな!)


アリステア逹はもちろん表情には出さないが、苦々しい気持ちでそれを眺めている。


「とんでもございません。ベルナル様を始め、皆さんのお力添えがあってこそでございます」


キースも自然な笑顔で応える。


「旅の途中なのに王都まで来させてしまって・・・予定は大丈夫かしら?」


「はい、特に急ぎの用事もありませんので問題ございません」


「あら!そうなのですね!あなたさえ良ければ、1ヵ月ぐらい滞在しても良いのですよ?それとも、郊外の別荘に致しましょうか?湖のほとりで、静かですごしやすいのです」


(私らは問題あるけどな!)


3人は笑顔でピクピクし始める。


「お誘いありがたいのですが、この後両親に卒業と就職の報告にと考えています。会うのは4年ぶりになりますので、楽しみではあるのです」


「そうですか・・・もちろん冗談ですよ。気にしないでください」


(嘘だ!絶対あわよくばワンチャンとか思っていただろ!)


「は、母上、おばあ様、いつまでも立ち話ではなんですから・・・皆さんを席にご案内を」


アリステア達から発せられる妙な気配を感じたのか、ベルナルが側仕え達に促し動き出した。

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