第91話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
ヴァンガーデレン家にお呼ばれして王都に向かっているアリステア達とベルナル、アンリ一行は、休憩を兼ねてあのちょっと変わった食堂に立ち寄ります。お菓子が並んでお茶も入り食べる直前ですが、アンリの様子がちょっと気になるキースです。
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「それではいただきます」
(同じなのに違うんだ・・・僕でも判るかな?)
そんなことを考えながら、まずはお茶を一口含む。
最初に感じられたのは柑橘系のフレッシュな香り、だがそれは余韻を残さず消え、すぐに質の良いお茶のしっかりとした旨味、香り、程よい渋みが追いかけてくる。
そしてケーキをフォークで切ってひと口、よく噛んで飲み込む。ドライフルーツ各種の濃縮された美味しさ、そこに含まれたお酒の芳醇な香りを、しっとりしたスポンジケーキが包み込んでいる。
(あれ?もしかして・・・)
続けてもひと口、そして一緒にお茶も一口。
(ああ!違う!確かに!へぇ~凄いな・・・)
顔を上げ、前回一緒に食べた3人を見る。やはり気づいたようで笑顔でうなずいている。
(ドライフルーツに含まれたお酒がより馴染んでいる。更にスポンジにも染み込んで、全体的にまろやかに優しい感じになってるな)
(お茶も最初にくる柑橘系の香りがすっと抜けて、角がなく丸っこい感じ)
(それに比べると前回のケーキは、アルコール分がまだ若いというか力強かった感じ。筋骨隆々とした若い男2人が、がっちり肩を組んだ、みたいな。お茶もそれに負けないぐらいしっかりしてた)
(でも今回はどちらも優しくて、暖かい陽射しの入るリビングで、長毛種のモフモフの猫を抱っこしている、みたいな感じ)
そんなことを考えていたら、またもやあっという間に食べてしまった。
お茶の最後の一口を飲み口の中をリセットする。
「ごちそうさまでした。今回も大変美味しくいただきました。今回は前回より優しく暖かい感じの衝撃でした」
「気づいていただけたようで何よりです」
ログリッチも笑顔で応える。
「ほんとクセになりそうだな・・・いや既になっているかも知れん」
「同感ですな!」
「ええ、うっとりしてしまいます」
クライブとフランも満足顔だ。
片やベルナルは難しい顔をしている。
(これでも満足していないのか・・・やはり良いものだけを食べて育ってきた方は、舌も肥えているのだろうな)
などと思っていたが、ベルナルの口から出たのは予想外の言葉だった。
「皆さんが前回食べたケーキの、時間が経過したものが今のケーキということですよね?という事は、皆さんが前回食べたケーキは今すぐには食べられないのですよね?私も違いを感じてみたいのに・・・残念すぎます」
(あ・・・そっちなんだ。アンリさんはどうかな?)
「アンリさん、いかがでしたか?」
「はい、ケーキは大変美味しくいただきました。お茶は、そうですね・・・65点ぐらいでしょうか」
!?
「あ、あれで65点ですか・・・」
(話振ったの僕だしちょっと気まずい・・・けど)
「もしよろしければ、後学の為に、どの辺にご満足いただけなかったのか、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
キースがアンリに尋ねようとした事を、ログリッチがアンリに直接尋ねた。人それぞれ好みがあるとはいえ、80点位ならまだしも65点ではさすがに納得いかなかったのだろう。
「・・・先程のケーキはまだ残っていますか?」
「はい、サイズは少し小さくなりますが皆さんの分はございます」
「言葉で説明するより、飲んでもらった方が早いでしょう。お茶は私が淹れますので、ケーキの用意をお願いします。ログリッチさんもお試しください」
「承知しました」
2人は連れ立って厨房の中に消えていった。残された5人はお互いに顔を見合わせる。
「なんか、僕が話を振ったせいで思わぬ展開になってしまいました・・・」
「いや、あそこでアンリさんに話を振らないのもおかしいし、それは仕方がないだろう」
「そうですよ、キースさん。答えたのはアンリ本人です。あそこまではっきりと、点数まで言うのは聞いた事が無いですが・・・」
「今日はお客さんという立場だからなのかしら?」
「うーん・・・」
(あ、そういえば)
「先程、ログリッチさんがお茶を淹れている時なのですが・・・」
キースは、アンリがお茶を淹れる様子より、ログリッチの顔を見ていた事を伝える。
「知り合い・・・ではないよな?」
「年齢も20歳は離れていそうですし・・・そんな知り合いがこんな場所に店を出していたら、絶対知ってますよね」
「お茶関係の知り合いの息子さん、とか」
その時、アンリとログリッチがワゴンを押しながら戻ってきた。
ログリッチが、ケーキを載せた皿を並べ始める。ケーキの大きさは先程の半分ほどだ。
皆にケーキがいき渡ったのを確認し、アンリがお茶を入れ始める。
キースはすぐにある点に気が付いた。
(ワゴン上の茶器の配置、手順、手つき、全てログリッチさんと同じだ・・・)
皆の方に視線を向けると、皆も気がついている様で目が合う。
(これはやはり、二人は無関係では無いのだな)
ログリッチも真剣な眼差しで、一瞬足りとも見逃さぬという様子で見つめている。
アンリがお茶を淹れ終わり、カップを皆の前に並べてゆく。
「お待たせしました。どうぞお召し上がりください」
「いただきます」
カップを手に口元へ運ぶ。
「え・・・?」
思わず声に出た。
ログリッチが淹れたお茶と香りが違う。
正確には、基本の香りは同じだ。
だが、最初にくる柑橘系の香りとそれが抜けた後にくるお茶本来の香り、それぞれの主張が強い。でも調和はきちんと取れている。
(茶葉は同じだろうに・・・なぜこんなにも違うんだ・・・?)
一口含む。
もちろん香りと同様に味も違う。
(問題はケーキと一緒になった時だ)
ケーキを切って一口食べる。そしてお茶を飲む。
静かな衝撃がテーブルの上を走り回った。皆も驚きに目を剥いている。明らかにアンリが淹れたお茶と合わせた方が美味しいと感じる。
ログリッチに至っては完全に無表情になってしまった。
ケーキを作ったログリッチがそれに合わせて考えたお茶より、先程初めてケーキを食べたアンリの淹れたお茶の方がより合っているという事だ。
「これは・・・なんと言ったら良いのでしょうね・・・」
キースが腕を組んで唸る。
「キースさん、美味しいですか?」
アンリがいつもと同じ表情で尋ねる。
「はい、とても美味しいです」
「それならば、『美味しい』とだけ言えば良いんですよ。変に難しく考える必要など無いのです。食べ物も飲み物も、美味しく感じたか口に合わなかったか、そのどちらかしかないのですから」
キースはハッとした後に恥ずかしさで顔を赤くした。所詮素人の子供でしかない自分が、専門の分野の事でもないのに何を偉そうに評価しているのか。
「はい、ありがとうございます。非常に美味しいです」
改めて美味しさを伝えたキースに、アンリは笑顔で礼をした。
しかし、食べる側はそれで良いが作り手側はそうはいかない。ログリッチは自分とアンリの違いを必死に考えていた。
(すぐに気が付いたのは茶葉の量だ。私より僅かに多く入れていた。後は、お湯をポットに入れてからカップに注ぐ迄の時間が少し長かった。確かに濃く出るだろうが、それだけでここまで変わるものなのか? )
そんなログリッチを見ながら、アンリが声を掛ける。
「いかがでしたかログリッチさん?何か掴めましたか?」
「ますます分からなくなってしまいました・・・正直混乱しています。ですが、先程のお茶が65点という評価には納得です」
「ふふ・・・色々手を尽くして研究してください。99点を取れる様に」
この言葉にログリッチだけでは無くベルナルもハッとした顔になる。
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