第84話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
地上げ問題のその後や、魔術学院に通い始めたリリアの様子も確認でき、北国境のダンジョンに帰ってきました。
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アンリは宿屋の裏に馬車を回し止めた。
「アンリさんお疲れ様でした。今日は一日馭者を務めていただき、ありがとうございました。慣れない馬車で大変だったのではありませんか?」
キースは、頭を下げながら尋ねる。
「確かに最初は面食らいましたが、帰りはだいぶ慣れましたね。家用に欲しいぐらいです」
「さすがですね!僕も、クライブさんに横についてもらって練習中なのですが、まだまだで・・・」
えへへと頭をかく。
「それでですね、ベルナル様のご都合次第ですが、この後の対応の流れを決めてしまいたいと思うのですが・・・」
「分かりました。確認して宿に人を遣りますね」
「はい、よろしくお願いします」
キースはアンリと別れ、宿の従業員に馬の世話を頼むと部屋に戻った。
「ただいま戻りました!」
「おう、お疲れさん!」
「おかえりなさいキース」
「うむ!おかえり」
「手筈通り荷物は出せましたが、荷馬車は着いていましたか?」
「あぁ、4の鐘辺りに来ていたな」
「どうします?先程届いた荷物の中にあったはずですが、位置の特定しますか?」
「・・・」
皆顔を見合わせる。
「この後、今後の対応手順を決めようと思いまして、ベルナル様の都合を確認中です。集まった時にしましょうか」
「そうだな・・・何か・・・な」
「ええ・・・」
対象物の位置を特定するという事は、情報漏洩に関わっていた人の所属が判明するという事だ。位置によっては、誰であるかも判ってしまうかもしれない。
気にはなるが知りたくはない、という微妙な気持ちだ。
キースは、例の食堂にアンリが興味津々だった事、ヴァンガーデレンの当主と大奥様に気に入られ、屋敷に入る為の認識プレートをもらった事、『コーンズフレーバー』に寄り、地上げ問題や、ダルクの店に関わっていた商会や店舗の様子を尋ねてみた事を話す。
「確かにアンリさんのお茶も相当だものな・・・あの店で飲んでいなければ、ここであの衝撃を受けていたと思うぞ」
「キース、その認識プレートというのはどういう物なの?」
「はい、こちらです」
首にかけていたプレートをフランに渡す。
「個人認証用に魔石が埋め込まれていて、家紋が刻まれているのね・・・仕組みは冒険者証と同じね」
「はい、いつでも会いに来てよい、研究書を読みに来なさい、との事でした。まぁ、さすがに社交辞令的なものだとは思いますが・・・」
「・・・それ、本気なんじゃないの?普通、初対面の貴族でもない一般市民に、そんなプレート渡さないでしょう」
「そ、そうなんですかね?でも、真に受けて行ってみたら『あ、本当に来たんだ』みたいな事になっても・・・ただでさえ一人で行くのはちょっと厳しいですし」
(どういうつもりだ・・・?キースの事を気に入って取り込むつもりか?いくらあの人でも許さんぞ!)
(キースったら、ほんと、無自覚ババたらしなんだから・・・)
「『コーンズフレーバー』の皆さんもお元気でした。リリアの代わりに新しく男性のウェイターを雇っていましたね。例の件に関わっていた店舗や商会についても、問題が起きたとかそういう話は特に入ってきてはいない、という事でした」
「そうか・・・それは良かった」
あの店に特に思い入れのあるアリステアは嬉しそうに笑った。
「キース、もう一つあるでしょう・・・リリアはどうだったの?」
(フランぐいぐいいくな・・・)
「今日は学院が午前中だけだったそうで、2の鐘から少し指導をしてきました。集中する時間が少し短くなっていましたね」
「ふーん、そう・・・良かったわね」
(荷物を出してランチ、昼営業は2の鐘までだから、その後3の鐘辺りまで指導して、さっき到着という事ね)
その時部屋の扉が叩かれた。
返事をして扉を開けると、ベルナルの側仕えが立っている。
「主から手紙を預かって参りました。この後の事については、こちらをご確認いただきたいとのことでございます」
「承知しました。ありがとうございます」
キースが封を切り手紙を取り出し確認する。
「8の鐘に事務所に集まってほしいとのことです。打ち合わせて即決行ということでしょうか」
「まぁ、いつまでも引っ張っても落ち着かんし、その方が良いだろうな」
「あまり気分の良い話でもありませんからね・・・それで、位置を特定してからの流れなのですが・・・」
キースが説明する。
「多人数で一気に、だな」
「はい、騒ぎにしたくありませんから・・・それでは、時間までは食事を取ったり各自ゆっくり休みましょう」
「「「了解!」」」
アリステア達は、8の鐘に合わせて管理事務所に行き、ベルナルの部屋に通された。
「キースさん、昼間はお疲れ様でした。母と祖母が色々とアレだったようで・・・申し訳ありません」
「いいえ、こちらこそ貴重な経験をさせていただきました。間違いなくこれからの糧になると思います」
(キースさんが言ったのでなければ嫌味かと思ってしまいますね)
「そういっていただけると助かります。では皆さんお掛けください」
ベルナルは皆に席を勧め切り出した。
「まずは、キースさんとアンリが送ってくれた荷物ですが、こちらにきちんと届いています。未使用の紙束と納品書です。用意してもらった偽書類は確認できませんでした」
「ここまではこれまでと同じですね」
「はい、ですが、皆さんご承知の通り、今回はその書類にキースさんの魔力が含まれています」
魔物暴走の時に得た小さい魔石を割り、それを紙の隅に固定し魔力を流してある。
それを<探 査 >で探せば、書類の位置が判明するという寸法だ。
(とてもシンプルで簡単そうですが、これがどれだけ難しいか、魔術師以外には伝わらないでしょうね・・・)
<探 査 >で見つけやすい様に、魔石を大きくしたり、魔力を多く流してしまうと魔石自体が目立つし、魔力を含み過ぎて紙全体が青みが強くなる。
だからといって、魔石を小さく、流しておく魔力を少なくすると、今度は感知できずに見つけられない。
<探 査 >は、広げれば広げる程魔力が薄まる為、感知しても反応が弱くなる。せっかく範囲内にいても、それを見逃す可能性があるという事だ。
元々弱い反応を鈍い探知装置で探さなくてはならないのだ。魔力量と魔力操作の技術が求められる。
「ではキースさん、位置の特定をお願いします」
「承知しました。<探 査 >・・・ありました!近くに人が一人、姿勢からしてテーブルの椅子に座っている様です。書類はそのテーブルの上ですが、筒に入ったままですね」
(姿勢まで判るのか・・・私とは精度が違う)
「よし、それでは身柄を拘束に行きます。できるだけ静かに済ませましょう」
「ベルナル様、<隠 蔽>の魔法を掛け、そのまま部屋に入って取り囲むのはいかがでしょう?」
「それは良いですね!では、私は部屋に入ったら< 静 音>の魔法を使います。
「了解しました。それでは< 隠 蔽 >」
キースが魔法を発動させると、皆は静かに管理事務所を出て行った。
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