第83話
【更新について】
書き上がり次第随時更新となります。
よろしくお願いします(o_ _)oペコリ
【前回まで】
キースは、ヴァンガーデレン家の当主リーゼロッテと大奥様であるエヴァンゼリンのお気に入りになってしまいました。偽報告書を送る手順で荷物を送る手筈を整え、『コーンズフレーバー』に学院に通い始めたリリアの様子を聞きに行きます。
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店の裏に馬車を回し入口から店内に入る。
12の鐘より少し前という事もあり、6割ぐらいの客の入りだ。
キースとアンリに気がついた店員が席に案内してくれる。
見た事の無い若い男性店員だ。リリアの代わりにこの数日の間に働き始めたのだろう。まだちょっとたどたどしい。
普段南方系の料理を食べつけていないアンリに向いた、辛さなどもマイルドなメニューのセットを勧め注文する。
「お、おおっ!?これは・・・中々・・・」「うん・・・うんうん・・・」
上々の反応にキースも嬉しくなる。
(最初に来た時のことを思い出すな)
微笑ましく思っていると、後ろから声が掛かった。
「キース!?何で!?北国境のダンジョンに行ったんじゃないの?」
エプロン姿のリリアだった。その声が聞こえたのか、厨房の方からフィーナも顔を覗かせた。アドルもカウンターの隙間から、こちらをチラチラ見ている。
「ちょっと王都に一度戻る用事ができまして。お昼を食べて、リリアの様子を聞いてみようとお邪魔しました。リリアは今日はなんでお店に?学院は休みでは無いですよね?」
「今日は午後から先生達の会議があるから午前中で終わりだったんだ。新人さんもまだ慣れていないから、混んでる時間だけでも手伝おうと思って。食べたらすぐ戻っちゃうの?」
少し不安気に首を傾げる。
「アンリさん、2の鐘過ぎぐらいまで大丈夫でしょうか?」
「そこまで急いで戻る必要はありませんし、ダンジョンには暗くなるまでに着いていれば問題ありませんよ」
アンリも空気を読んだ返答をする。
(ふむ、特定の、とまではいきませんがかなり仲の良い間柄の様ですね・・・これはお二人が喜びそうです)
食事を終えてゆっくりお茶を飲みながら、キースは先日までの地上げ問題についてざっくりと説明した。
(キースさんはこういう事に巻き込まれやすい性質なのでしょうか?王都の中で人が拐われそうになっている場面に遭遇するなんて、まずありませんよね)
2の鐘が鳴りお昼の営業が終わると、リリアを始め、アドル、フィーナ、イネスと皆がテーブルにやってきた。
「皆さんお疲れ様です。見送ってもらって数日でお会いすると、何だか照れくさいというか妙な感じがしますね」
「何言ってんだい!あんただったらいつだって歓迎だし、何回だって見送ってやるよ!」
イネスの言葉に皆頷く。
(言葉は違いますが、先ほどお屋敷で言われた事とほぼ一緒ですね)
「お話の前にご紹介します。こちらは、今、北国境のダンジョンで一緒に仕事をしている、アンリさんです」
「ヴァンガーデレン家で執事を務めておりますアンリと申します。キースさんにはお世話になっています」
アンリが笑顔で挨拶する。
一般市民でも知っている貴族の大家であるヴァンガーデレン家と聞いて、家族皆がギョッとした。
「あぁ、私は別に貴族ではありません。ただの使用人ですからお気を楽にどうぞ」
「あぁ、いや、こちらこそ失礼しました・・・キース、今度は何をしているんだ?危ない事に首を突っ込んでいるのではないだろうね?」
アドルが心配そうに眉を下げる。ダンジョン、貴族と絡めばそう思うのも無理はない。
「今はちょっとした調査のお手伝いをしているだけですよ。危ない事はありません」
笑顔で返す。危ない事はもう終わったのだ。間違ってはいない。
「リリア、学院の方はいかがですか?何か困った事はありませんか?」
「うん、今のところ大丈夫だよ。何とか付いていけていると思う」
「帰ってくるといつも『キースの教え方の方が分かりやすい。キースが先生なら良いのに』って。そればかりなんだよ」
「ちょ、ちょっとお母さん!何でバラすのよ!もう・・・」
リリアが顔を赤くしながら抗議する。
「な、なんにせよ問題無く通えている様で何よりです。安心しました。地上げに絡んでいた各問屋さんや元ダルクのお店とかはいかがでしょう?何かお話入ってきていますか?」
「う~ん、特には聞いてないな・・・」
「そうですか・・・なら特に問題無いという事でしょうかね。便りがないのは元気な証なんて言いますし」
(それは・・・この場合あっているのでしょうか?)
「気になっていた事は大丈夫そうですし、それではそろそろ行きますね。ごちそうさまでした」
「うん・・・気をつけてね・・・」
リリアの顔は沈んでいる。ちゃんとお別れしたのに、いきなりまた会ってしまった為、余計に寂しさを感じている様だ。
(ふむ・・・ちょっとお節介の様な気もしますが・・・)
「キースさん、ちょっと一箇所寄りたい所があったのを思い出しました。そこに行ってきたいのですが・・・皆さん、戻ってくるまでキースさんにこちらで待っていてもらいたいのですが、よろしいですか?」
「勿論だよ!明日でも来年でも、好きなだけいれば良いよ!」
フィーナが豪快に笑う。
「さすがにそれは・・・」
キースも苦笑いだ。
「では、ちょっと行ってまいります」
「はい、アンリさん。お気を付けて」
アンリは鐘1つ程適当に時間を潰して店に戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさいアンリさん」
どうやら、そのままリリアに対して魔法の指導が行われていた様だ。
「一度発動できてしまえば、次回からはぐっと楽に発動できると思いますよ。小さく短時間でも良いので、発動できる種類を増やすのも、モチベーションを上げる手です」
「あ、それは確かにそうだね。新しい事できる様になると嬉しいものね。わかった、やってみる」
「ええ。また成果をみせてもらうのを楽しみにしていますね」
「うん・・・頑張るよ!」
先ほどは寂しそうな顔だったが、今度は真剣な顔だ。
(少しは足しになった様ですね)
「では、皆さんお邪魔しました!改めて行ってきます!」
「身体に気を付けるんだよ!」
「ご飯はちゃんと食べるんだよ!」
「無理しない様に」
「・・・じゃあね」
店の裏に回り馬車に乗り込む。定番になった、軽量化の魔法陣の起動と空気の壁を作成し、走り始める。
「良い方達ですね」
「ええ、本当に。毎日一生懸命頑張っている人達です。あの人達を見ていると、僕も頑張ろう、という気になってきます。なんか偉そうですが・・・」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。キースさんだってまだ18歳なのに大したものです。ですが・・・」
「?」
「もう少し力を抜いても良いかなとも感じますね。念願の冒険者になり、リーダーを任されて、頑張るぞ!となっていらっしゃるのも解りますが・・・」
「自分では特にそういうつもりは無いのですが、そういう風に見える方もいらっしゃるのですね・・・ちょっとよく考えてみます」
「あくまでも、私が感じただけなのですけどね」
「こういうのは見る人によって様々な意見、印象があると思いますから、そういった話をしていただけるのはとても有り難い事です。これからもよろしくお願いします」
その後、馬車は止まる事無く走り続け、日が落ちる寸前に北国境のダンジョンに到着した。
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